一之瀬 竜二
「殺せ!」
ラキウスの号令で魔人達が一斉に攻撃を始める。
三百を超える魔人から一斉に魔法が放たれ、隼人達を襲おうとする。退路をたたれた隼人達だが、諦めているものなどいない。逆にこの状況を覆してやろうと燃えていた。
「ひとりあたり百人ぐらいだな」
「このチームのリーダーとして命令する。もてる力をすべて使い、目の前の敵をすべて抹殺しろ」
「この世界のことなど何も考えなくていい」
「「了解」」
全員が身体強化系の魔法を発動する。もちろん隼人はレベル6を発動していた。
「「来い!」」
それぞれの手元に刀が召喚される。
「さあ、戦争だ」
「消し飛べ!」
マルクの魔法と同時に、それぞれが分かれて攻撃を行う。
マルクが発動した魔法はラキウスにかき消され魔人に届くことはなかった。
「さすがといったところか」
マルクの称賛にラキウスはふっと笑みを浮かべ、マルクの前から姿を消した。と同時に魔王城の中の壁が変化し、四人を分断する。
「ほんとに用意周到だな」
「だが分断された方が本気が出せるってもんだ!」
それはマルクに限ったことではない。
四人とも全力を出すなら仲間を傷つける可能性がある。それだけ危険な能力を持っている。
「力を解放しろ火花!」
能力を解放して、魔人達を斬っていく竜二。少しでも刀にかすった魔人は数秒後、爆散する。爆散した肉体の破片に当たった魔人も爆散する。火花の能力とは触れた者を爆発させるというものだった。
身体強化を使った竜二の刀に当たった瞬間、死亡が確定する。魔人達にとってこれほど凶悪な敵がいただろうか。
一体一体確実に魔人の数を減らす竜二の目の前に、剣を振りながら魔王が一瞬で現れる。
とっさのところで火花を構え、攻撃をそらすことに成功する。
「あれ? 今ので仕留めれる予定だったのに」
「舐めんなよ」
「強がるね。死ぬのが遅くなっただけだって」
竜二の顔に焦りが出ていた。それは魔王の持っている剣が爆発しないことだ。生命体でなく無機物であっても爆発させる火花の能力が発動しないのだ。
「君が一番弱そうだと思ったんだけどな」
「黙れ!」
竜二はその言葉を聞きたくはなかった。一応、隼人の兄貴として育ててきたのだ。いつかは抜かれると知っていても、それを第三者から言われるのは耐えられなかった。
竜二がラキウスに斬りかかろうとする。だが、魔人達の魔法で距離が詰められない。
「クソが!」
「私は思ったんだよ。勇者とかってなぜか一対一で戦うことが多くてね」
「なんでみんな助けてくれないんだって。有利になるように全員で一気に殺せばいいのにね」
「だから手は抜かない。使えるものすべてを使う」
「魔王らしいだろ?」
ラキウスと魔人の絶え間ない攻撃に、竜二は少しづつだが疲弊していく。
何分も極限状態におかれた竜二の体に、赤い紋章が浮かび上がる。
「君もか!」
ラキウスが竜二を見て、あきれた声を漏らす。それは、竜二が身体強化の最高峰にたどり着いたからだった。
「戦いはここからだ!」
竜二がラキウスとの距離を一気に詰める。
一瞬、ほんの一瞬だったが速さの上がった竜二に、ラキウスの回避が遅れる。そのすきを竜二は見逃さなかった。
「死ね!」
刀を振ると見せかけ、全力で刀を投擲する。
今までと違う行動に、ラキウスは対応することができなかった。竜二の刀、火花は確実にラキウスの心臓を貫いていた。
「勝負ありだな」
膝をついたラキウスの体が膨らみ、爆散する。
刀をとり、残りの魔人を倒すべく構える。ラキウスが倒れたことにより、竜二の心には少し余裕ができていた。
それを奴は待っていた。正確には、そうなるように思考を誘導していた。
「じゃあね」
竜二の背後で声がする。振り返ろうとするがもう遅い。
剣で斬りつけられ両腕を失い、地面に倒れこむ。
「ヒール」
回復の魔法をとっさに使う。
「無駄ですよ。君はここで終わりです」
声の方に顔を向ける。そこにはさっき殺したはずのラキウスが立っていた。
「なんで?」
「さっき殺したのは魔人ですよ。途中で私と入れ替わっていたんです」
「気づいていなくてよかったですよ。他の人にも使えそうです。実験ありがとう」
そう言うと、ラキウスはゆっくり剣を構える。
「今度こそ、本当にさようなら」
シュパッ
竜二の頭が宙を舞い、地面に転がる。
「あと三人だ。早く片付けて次に行くぞ」
「「はい! さすが魔王様です」」




