ロータス
R5である ロータス も第三支部に向けて進行を開始しようとしていた。
「異世界に来れてよかったー」
「僕のいた世界とも、今の世界ともずいぶん違うな」
独り言を呟きながら、ゆっくりと目的地に進んでいく。
一度も休むことなく歩きつづけ、その日の夜には目的地についていた。
ロータスは隠れたりせず、どうどうと正面から歩いていく。
「何者だ! 止まれ!」
全身黒いローブの者が現れたのだ。
警備の魔人が不思議で声をかけるのは当たり前だろう。
ロータスは言葉を無視してさらに門に近づいてゆく。
「緊急事態です!」
「正体不明の者が門の前まで来ています!」
門を破壊し、さらに進んでいく。
門をくぐった先には、百を超える魔物と魔人が待ち構えていた。
第三支部は魔王城に最も近い。
よって、魔物や魔人が多いのは必然である。
第三支部のリーダーがロータスの前に出てくる。
「貴様は異世界人だろう?」
「私たちが侵攻している世界の」
「その通りだ」
「この人数に対して一人で来たことは称賛します」
「ですが、これは勇敢でなく無謀というやつですよ」
「一つ言いたいことがあるんだ」
「なんですか? 遺言なら聞いてあげますよ」
「これから僕は君たちを皆殺しにするつもりだ」
「降伏するなら命はとらない」
「冗談を言ってるんですか?」
「これは君たちの引き起こしたことだ」
「だから、恨んでくれるなよ!」
「この舐めたやつを殺せ!」
魔人達によって一斉に魔法が発動する。
「吹き飛べ」
ロータスは魔法をよけず、直撃を受ける。
「やったか?」
煙がはれると、そこには片腕片足のなくなった血だらけのロータスが倒れていた。
「口先だけか……よい度胸だったと思うぞ」
リーダーが背を向けた瞬間。
「なんだあれ!」
「気持ち悪いぞ」
リーダーが振り向くと、腕と足の生え始めた生物が立とうとしていた。
「貴様本当に人間か?」
「人間じゃないですよ。そもそも僕は君たちの襲った世界で生まれてないですから」
みるみるうちに傷が消え、腕と足が元通りに生える。
「化け物め!」
「そうです。私は化け物です」
「よくわかったでしょう。降参してください」
「殺せ!」
「交渉は終わりですね」
「アギトのいる世界に手を出したことを後悔するんだな!」
再び魔法が放たれる。今度は絶え間なく。
再生のすきは与えないと言わんばかりに。
しかし、今度は腕が飛んだ瞬間に次の腕が生える。
「なんて再生能力だよ!」
「私も一応R5なんでね」
「この程度では負けてられないんですよ」
ロータスはゆっくり進んでいく。
そして魔物に手を触れ、取り込んでいく。
「「なんだあれ!」」
恐怖した魔人や魔物が支部から逃げ出そうとする。
しかし、巨大な壁によって支部は囲まれていた。
壁を飛び越えようとした魔物が、壁に徐々に飲み込まれていく。
「なんだこれは!」
「それは僕の細胞でできた壁ですよ」
「細胞?」
「人間のそれとは違います」
「僕の細胞は本当にヤバイですから」
「どうせ死ぬから教えといてあげますね」
「僕の細胞は特別なんですよ」
「細胞一つ一つが強力な再生能力を持ち、武器だって生み出せる」
「硬くして攻撃を防ぐこともできる。姿、形だって変えられる」
「命だって生み出すことができる!」
「ちなみに、私を殺すにはすべての細胞を同時に消す必要がありますよ」
「化け物が!」
「よく言われます」
支部を囲んでいた壁が中心によっていき重なる。
その頃には、生きている魔物や魔人は一体もいなかった。
壁を体に取り込んで、ロータスはまた移動を開始する。
人が去って行ったのを確認して支部に人影がはいる。
「魔王様!」
「なんだ?」
「第三支部が………」
「どうした? どうかしたのか!」
通信はそこで終わり、通信をした者は獣のような怪物に食べられていた。
それは念のために、ロータスから生み出された獣であった。




