テウスと模擬戦
テウスと隼人は夕飯の後、ユニゾンの戦士が使う闘技場に移動していた。
「ほんとに久しぶりだな。隼人と模擬戦するのは」
「そうだね。兄さんが旅立つ前に二回しただけだから」
「あの時はバトルになってなかったな」
「今までの僕とは違うよ」
「もう泣いてばかりの僕じゃないから」
「強くなったところ見せてくれ!」
「もちろん!」
隼人とテウスは一定の距離をとる。
「じゃあ、始めるか」
決闘場にピリピリとした空気が漂う。
「全力で来いよ」
「「始め!」」
合図とともに両者が魔法を発動する。
「「身体強化レベル5」」
「来い新月!」
「サモン」
両者の手に刀が召喚される。
「身体強化系のレベル5まで!」
「しかも新月を召喚できるなんて!」
「行きますよ!」
両者の姿が消え、激しい打ち合いが始まる。
「ほんとに強くなったな」
「そうでしょ!」
「だが、まだ甘いぞ!」
一進一退のように見えた攻防も、テウスが一歩先を行く。
徐々に徐々に隼人がおされ始める。
そしてテウスの刀が隼人をとらえる。
ズパッ
隼人がほんの少しだが出血する。
「同じ身体強化魔法では一生勝てないぞ!」
「俺の方が元の身体能力が高いんだからな」
「そんなこと分かってます」
隼人は、なおも攻撃を続ける。
だが結果は同じ、一歩テウスが先を行く。
「これで終わりか?」
「ここまでよく強くなったな」
「まだ終わりじゃないですよ」
「やっぱりこれを使わないと勝てないですね」
「身体強化レベル6」
隼人の体に赤い紋章が現れ、テウスが驚愕する。
「まじかよ! そんなところまでいってたのか!」
隼人が一瞬で距離を詰めて刀を振るう。
しかし、テウスもギリギリのところで反応する。
「速すぎだろ! 本当に強くなったな」
「だが、なおさら負けてられない!」
「力を解放しろ紅」
刀が赤く発光し、テウス自身も飲み込んでいく。
「すまんが、本気で行くぞ!」
隼人の視界からテウスが姿を消す。
一瞬、反応が遅れたがしかっりと刀を受け止める。
ズパッ
受け止めたと思っていたテウスの刀が、隼人の刀をすり抜ける。
それは致命傷とまではいかないが、動きを低下させるには十分な一撃だった。
隼人は何が起こったか理解できていないようだった。
「くそっ!」
隼人は一気に距離をとるがテウスも同時に距離を詰める。
身体能力では、ほぼ互角となっていた。
「紅を使うのは久々だからまだ難しいな」
「反則なんて言うなよ。それだけの力があると判断したんだからな」
再びテウスの刀が振るわれる。
前回と同じように受け止めようとするが同じように刀をすり抜ける。
今回は体に当たるギリギリのところで回避する。
「いい反応だな!」
その後もテウスの攻撃を直前で回避し続ける。
時間がたつにつれてテウスの攻撃が激しくなっていく。
まるで、何かを気にしているように。
「ファイアボール」
隼人は魔法を発動する。
だが、当たったところで力を使うテウスには意味がなかった。
その代わりに小さな煙がテウスを包む。
隼人は今だ!と言わんばかりの勢いで煙に斬りかかる。
だが、そこにテウスはいなかった。
背後にテウスが現れ、隼人は反応が遅れてしまった。
刀を隼人の首めがけて振りかざす。
「終わりだな」
「これを待っていたんだ」
ガキンッ
鈍い金属音のようなものが響きわたる。
隼人の首めがけて振るわれたテウスの刀がはじかれた音だった。
首にだけ集中する黒いオーラによって。
テウスがとっさに体勢を整えようするがもう遅い。
準備したものとそうでない者との差だろう。
隼人はもうすでに刀を構えていた。
「これで終わりだ!」
テウスに確実な致命傷を与える。
隼人の勝利で久々の模擬戦は終了した。
「まさか負けてしまうとわな」
「思ってもなかったな。ハッハッハ」
「これはテウス兄さんのくせを知っていたからできたことです」
「とどめの一撃は首を狙うって知ってましたから」
「ほとんど博打でしたね」
「それにしても新月まで使いこなせるとは流石だな」
「いえ、まだまだです」
「もっともっと力を上手く使えるように頑張ります」
「そうだな」
模擬戦は隼人の勝ちだった。
しかし、相手がテウスでなかったら負けていたかもしれない。
隼人はそう思い、さらなる鍛錬に励むようになった。




