あなたの隣に首切り人形
少女はギロチンを愛していた。
ギロチンで首を切ることが、この国の処刑法だ。
少女は処刑がある日、学校があっても、旅行の予定があっても、友達に遊びに誘われても、処刑を見に行った。
誰もが少女を馬鹿にして、次第に周りには誰もいなくなった。
それでも、少女は処刑を見に行った。
少女は、首が切られる場面を見るのが好きなのではない。
いつからギロチンが好きになったのか、少女自身も忘れてしまった。
いつしか少女は、自分もギロチンにかかりたいと思うようになった。
しかし、一瞬で終わるのは嫌だ。
悩む少女に救いの手を差し伸べたのは、地獄の悪魔。
悪魔はこんなことを言ってきた。
「人間としての肉体と魂を差し出せば、
人形としての体と永遠の命をやろう」
少女は考える時間が欲しいと、悪魔に頼み、一日返事を待ってもらった。
そして、翌日。
少女は人間としても死と、人形としての生を受けた。
首切り人形の誕生だ。
ある死刑囚の男は、明日処刑される。
もちろんギロチンで。
男は大量殺人の犯人で、指名手配されていた。
うまく逃げていたが、へまをして捕まり、もうすぐ死を迎える。
多くの人を殺しても、やはり自分は死にたくない。男は何度も脱獄を試みたが、全て失敗に終わった。
最後の食事をしていると、粗末なパンを誰かにひょいと奪われた。
「誰だ!」
男は誰かに殴りかかる。
しかし、相手は軽くよけて、自己紹介を始めた。
「あなたの隣に首切り人形。
こんにちは、死にたくないアナタ。アナタの姿をワタシに頂戴。返事は『イエス』しか認めないわ。アナタ、死にたくないでしょう?」
男は激しく頷いて、死にたくないと訴えた。
首切り人形はにっこりと笑い、その姿を変え始めた。悪魔からもらった変身能力で、死刑囚に変身するのだ。
「ここから出ていきなさい。もうここはアナタの場所ではないわ」
不思議なことに牢屋のカギは開いていた。
男は逃げた。
そして、翌日。
大量殺人を行った男は処刑された。ギロチンによって、首を切られて。
男は死ぬまでずっと、死んでもなお笑顔だった。
遠い国で大量殺人が起こっている。
犯人はまだ捕まっていない。
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