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7話:落とし前とけじめ

お読みいただいている読者さま有難う御座います。

評価やブックマークを付けて頂いた方に感謝を

 窓花が情報を持ち帰ると直ぐに状況確認が始まった。


「窓花、お疲れ様、何時もたすかるよ、情報は揃ったね?」


「はい、涼太様、賊の居場所から他の集落の状況に避難状況、平行して分析も済んでおります」


 経緯は長からも確認している、比較的人間に近い姿の者が都市に向かい「口利き屋」又は「手配師」と呼ばれる者に傭兵を斡旋してもらう、賊だった傭兵は何回か真面目に仕事をこなし、集落の警戒を解かせたようだ。


 その仕事の際に攫う目標や襲撃手順を見定めていたのだろう、ミックスの集落は人間の長期滞在を好まない、目処が立った時点で気遣いを装い同額で大人数短期間を提案した様だ。


「他の集落の被害状況はどうだった?」


「はい、被害は攫われた者と金品、焼かれた住居、殺傷はごく一部、抵抗を嫌いわざと逃がしたのでしょう、ただ、避難民の会話情報から都市へ依頼に行った者は亡くなっております」


 都市には手配業者が沢山いるらしい、依頼に来た者が居ないと斡旋者の特定は困難、誤魔化すのも容易(たやす)い、団の名前を変えてしばらく別の場所で稼げば問題ない。


 だが、1回目は交渉を有利にするため妖魔駆除師のシモン親子が付いて行った、潰走中でも態々(わざわざ)シモンやミディアを狙った事も説明がつく。


 おそらく示唆、又は共謀している奴隷商に釘を刺されている、ミディアが生きている以上(すき)が出来るのを待つだろう。


「窓花、たしかメールなら揺らぎが無くとも出来たな? 調査でも無い、弾薬も消費するし利益も無いが先払いで役立つ物を譲り受けた、個人的に仕事の落とし前を付けたい、女神達に賊討伐の許可を求めるメールを頼む」


「涼太様、申し訳ありません、僭越ながら既に申請して許可を得ております、「補給は増えないが好きにやっていい、今後も自己判断で進めてくれ」との事です」


 阿吽ってやつだな、窓花とは流石に付き合いが長いからな、PC時代に意思は無いが……。


「いや、手間が省けた、追加で初回補給の内容を変更したい、重症者を治療できる物を頼んどいて、余裕が有るなら残りはDDNP雷管薬で」


「はい、既にそのように伝えております、明後日の昼にビーコンを設置すれば軌道上より投下されます」


「……え~と、流石だね! でも報連相(ほうれんそう)って大事だと思うんだ、一応今後は確認してくれる?」


 うん、とってもかなり優秀だね、でも確認とか無いとね、おじさんはちょっと不安になるんだ、間違ってないし時間も省けた、不満なんて全然ないよ、ホントだよ?


「賊だが、想定外の状況に混乱している筈だ、時間を与えず今晩中に叩こうと思う、アジトの情報を投影しながら説明してくれ」


 賊のアジトは岩場が侵食されて出来た洞窟に手を加えた物、昆虫型の小型機械で偵察したらしく、かなり詳しく把握されていた。


 多少の湾曲や小部屋は有るが一本道、一番奥が牢屋で捉えた女たちと金品、リーダー格も奥だろう。


「明かりや飯にも火も使うと思うが換気はどうしている?」


「分かり難いですが天井が薄く、小さな穴が幾つか自然に有ります」


 小さいのか、だが薄いなら簡単に爆破できそうだ、牢屋の手前に有る部屋の天井をうまく爆破できれば指揮系統は混乱、敵勢力と救助対象との間に入れる、ロープを固定できる場所もあるから懸垂下降で行くか。


 しかし、突入前に恐らく射撃が必要だ、だが救助対象への跳弾が怖い、フラッシュバンも要求しとくんだったな。


「救助対象の居る牢屋の手前の部屋、これの上部を爆破して潜入、救助対象と敵勢力の分断を図りたい、道の曲がりや距離的に問題ないと思うが、一応崩落や跳弾などで救助対象が心配だ、最適な爆破方法を計算できるか?」


「はい、恐らくその作戦かと思い、後少しで代用ダイナマイトが完成します、削孔も既存の工具とモグの協力で可能です、崩落も制御できると申しております、適所にマーキングしておりますので其処に設置してください」


「お、おう、準備万端で素晴らしい、窓花が優秀で助かるよ」


 窓花さん優秀すぐる、別に俺が作戦考える必要なかったな……。


「有難う御座います、こんな事もあろうかと出発前に数個ですがフラッシュバンを女神様より頂いております、突入前にお使い頂ければ降下後でも救助対象を傷つける事なく制圧可能ですのでご安心ください、又、洞窟出口600m先に装甲車が潜伏可能な場所があり、作戦開始時には油気圧サスペンションで射撃可能に出来ます、逃亡者の心配もございません」


 ……俺、要らなくないかな? あ! 一応肉体労働者はいるね!


 窓花の方が優秀だし、リーダーは交代した方がいいと思うんだ……


「涼太様 ……バイタルに異常が ……人を殺めるのはお辛いと思いますが相手は卑劣な賊、法の庇護も無い無法の地、称えられても恥ずべき事ではございません、どうかご自分に自信をお持ちください」


 そこは間違えるのね、劣等感なんですけど!


 ……出来の悪いリーダー何て惨めや、なのに変わってくれ無さそう。


 情けなくてもう持たない、俺は武装のチェックと言って外に出た。


 俺、久しぶりに煙草を吸うんだ。


 ボディーアーマーの装着とFA-MASG2の動作確認が済んだ。


 煙草を取り出しジッポで火を点ける、上を向いて煙草を吸う、涙が零れ無いように。


 一服しているとミディアが近づいてくるのが見えた。


 寝てなかったの! タイミングめっちゃ悪いよ! 止まれ涙! ハリィ! ハリィ!


「涼太、寝るんじゃなかったの? 他の集落から難民が来たから? でも鎧や兜は過剰じゃない?」


「あ、いやー、賊が怖くて寝付けなくてね! 気晴らし! 星でも見て落ち付こうかと思って!」


 む、無理過ぎる! 言葉も声もおかしい、今は一人になりたいの! 空気よんで!


「涼太は父さんだけじゃないね…… ミックスでも、亡くなった人や攫われた子達の為に泣くんだね」


 もう知っちゃったか、でもちゃうねん! 劣等感やねん! そんな誤解は余計に辛い!


「あたしも連れてって、行くんでしょ? 助けに、あたしも父さんの敵討つ権利、あるよね?」


 ……感のいい子は嫌いだよ、ちっ、誤魔化しは無理そう、そしてこの子は退いてくれない。


「願い事は叶えてあげる、代わりに僕と契約してくれないかな?」


「涼太が僕って、ぷっ! 変なの! でも連れてってくれるなら…… あたし何でもする!」


 ? 今何でもするって ……ダメだ、ネタに逃げてる場合じゃない、真剣に向き合わないと。


「ごめん、ちょっとふざけすぎたね ……攫われた子はハーフだけじゃなくミックスもいる、見目(みめ)がいい娘ばかり、ハーフは売るらしいけど、ミックスの子は多分酷い目に遭ってる、意味はわかるね? 目にするのは辛いよ? 俺は見せたくないし行く必要もないと思う」


「涼太は分かってないね、あたしは妖魔駆除師の娘で弟子、ゴブリンやオークに攫われた子も何度か見た、人間の比じゃ無いと思うよ、どんな目に合うかせつめ「だまれ!」」


「あ、いや…… 怒鳴ってごめんね…… でも女の子がする話じゃない」


 やだもー この異世界、何でおっさんが子供にセクハラされんだよ!


 もうお家に帰りたいです。


「あたしも不謹慎でした、御免なさい、でも知ってるから、この薬草、避妊薬、後でも先でもちゃんと効くやつ、父さんの弟子になった時に持つように言われた、覚悟はとっくに出来てるよ」


 あの糞親父! 殴りてー! 先に逝って殴れねーだろ!


 これはメモして墓に埋めて奥さんにばらす!


 此処まで言われて、いや、言わせて断れる精神力は無かった……。


 しかし、連れてく以上安全は最大限確保だ、あれは禁則事項だけのはず。


 隷属や従属とか付けたら女神に反逆してやる。


「わかった、だが指示に絶対従う事、それと日本の神様と契約してもらう、それが条件だ」


「なんでもって言ったしね、父さんの仇討ちと攫われた子を助けれるなら問題ないよ」


「ちょっと禁止事項があるだけだよ、何か言われても俺が絶対強制させない」


 運よく直ぐに通信出来る状態だったので映像付きで回線がつながった。 

 

「涼太、久しいの、早くも契約とは思わなんだ、契約はただ秘密を守るだけじゃ、決して隷属とか無いからの、涼太は我らと縁が出来ておる、強い思いはメールや通信で無くても何となく届くのじゃ…… だからの、この件を事件化しようとか! 帰ったら社を打ち壊そうとか! 物騒な思いは止めてくれぬか? マジで! ……障りで辛いのじゃ! 頼む!」


「……ん……契約はとてもホワイト、真っ白、……無実で瘴気の籠った思いは酷い……神にはとても有害……」


 有害なんや、ホントすみません、深く謝罪の念を送る事にする。


 契約は技術の拡散や秘密を守る事だけ、調査協力のお願いは有ったが支障なく完了した。


「指弾じゃなかったんだ…… 使徒様だったなんて、あたし失礼な態度で」


「全然使徒とか上等なもんじゃないから! 絶対ちがうから! いつも通りでよろしく!」


 出発前に軽く練習、銃器の扱いは上手かった、クロスボウも直ぐだったし才能あるな。


 閉所での救出なので当初はMP5Fの予定だったが救助対象の心配は無くなった、岩の一本道なら逆にFA-MASG2の高速徹甲弾で跳弾を利用しよう。


 自家製手榴弾もある、ミディアはMP5Fで俺のフォローのみ許可、親の敵は例外、P229がサブ、後は防具とヘッドセットとゴーグル。


「作戦は理解できたよ、涼太の道具は便利ね、音が聞き取りにくいけど」


『これ通信、よく聞こえるだろ? 音が凄い道具が有るから』「作戦までは外してていいかね」


 さて、状況開始だ、アジトまで直ぐ着いた早いな、近づくと低速で接近して隠蔽地点で停止、見張りは疲れてるのか役に立ってない、岩場を登る、モグも居るしマーカーは分かり易かった。


「これが爆薬? こんな小さいので岩が崩せるの?」

「問題なく崩せるよ、音が凄いから火を点けたらヘッドセットね」


 モグのお蔭で音もなく楽に削孔が出来る、爆薬を仕掛け導火線を束ねて岩場に隠れる、既に降下用ロープも準備済み、火を点け轟音が響き崩落。


 素早くフラッシュバンも投げる、爆音と崩落で要らないかもしれないが念のため、素早く降下しP229で生き残りをグロ弾で始末した。


『うわー、涼太盗賊向いてるね、恐ろしく手早く簡単すぎて怖いぐらい』


『し・ま・せ・ん! 通路に手榴弾投げるから牢屋の方みてきて、まだ出しちゃだめだよ』


 本当に呆気なかった、2個程擦過式の導火線柄付き手榴弾(ポテトスマッシャー)を間をあけて投げただけ、思ったより破片が跳ね回り、酷い事になって下っ端はあっさり逃げ出した。


 FA-MASの出番も無く、身なりの良い商人と頭目らしき人物は急所を外しているので止血だけして拘束、ばい菌とかどうでもいい、集落まで生きてれば事足りる。


 シモンに槍投げた奴はミディアが山刀で腹に穴をあけ、かき回し額を貫いて止め。


 ……見なきゃよかった。


「ミディア、装甲車を近くに呼ぶ、窓花に教えさせるから仮設テントを用意してくれ、俺は攫われた子と奪われた金品を運び出す、かなり参っている子がいるから直ぐには集落に行けない、外に逃げた者も死んでるから安全だ、邪魔だから装甲車に紐で括り付けて遠くにポイして」


「天幕みたいなやつ? 了解だよ、窓花ちゃんも凄いね」


 敵討ちの後、何か踏ん切りがついたのかミディアの様子が変わった、悲しみは消えないが先に進めるなら連れてきた意味も有ったのだろう。


 賊への落とし前は付けたが被害者の遺族や攫われた子のケアを考えると、けじめとしてはまだ足りない。


 辱めを受けた子のケアとか全然想像もできません、しんどいなー ミディアなら分かるかな?


 他にも何人か捉えておきゃよかった……



補足******

榴弾や手榴弾の破片:鉄球等が含まれています


すぐる:すぎる、タイプミスから生まれたネット造語

 動揺や脅威等を含む場合があるので「すぎる」とやや違う


ハリィ → hurry として使いました


使徒:ギリシア語的な意味では派遣された者という意味、使者とか使節と解釈

最後まで読んでいただき有難う御座いました。

次回は少し長くなる予定です


すこし性的な描写が含まれます、不快な方には申し訳ありません

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