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3話:主人公の場合

まだこの話は異世界ではありません、面目ない



「では3度目、涼太の調査計画の前に過去の教訓を整理して話す」

「……ん……」

「はい」


 またこの会話パターンか……もう「……ん……」だけなら要らないのでは?


1、剣や魔法では向こうが上、多少の下駄ではどうにも成らない、逆に不利


2、2人目は内陸でヘタレたが、大砲や近代的な船は効果が高かった、魔導は現地人を雇う


3、1,2を踏まえ、現代兵器と機械を投入、現地人契約は2人まで、支給武器の使えない個人雇用は追加可能(給金は自腹)


4、現代装備は補給が必要だが難しい、よって初回のみリスクを覚悟で大規模投入


「意外と考えてたんですね、感動しました!」


「大した事言って無いじゃろ! どんだけ馬鹿にしとんねん! ……まあ、無茶はするな、補給は細いからの」


「……ん……調査だけで良い、無事に戻って……」


「失礼な事を言ってすみませんでした! 慈悲深い女神様、お許しください」


 ……ただの人間をそこまで心配してくれる何て ……泣いてまうやろ!


「て、照れるの…… 涼太には我らのプロデュースが有る、無事でないと困る」

「……ん……モテモテ計画の方が大事……」


「台無しですやん! ……照れ隠しですよね? ね?」


「ええ齢なんやから落ち着け! ……さて詳細を詰めようかの……」

「……ん……」


 流されてしまった…… 照れ隠しと切に思いたい。


 あと、齢は関係ないやろ! 齢いうな!


 今回はかなり気合を入れた好待遇で、初回だけだが換気扇の隙間なんてケチな事はせず身を挺して送り込んでくれる。


 なんと隣部屋の現地協力者の家にお泊りし、深夜協力者のベランダからアレス大陸室のベランダに侵入、未使用のスリーブの蓋を開けて大型の隙間を利用する。


 見つかれば下手すると通報だが、「風で下着が入り込んじゃって、恥ずかしいのでこっそり回収しようかと」で誤魔化せると言ってるが、パンツ持って言い訳するので誤魔化せてもかなり恥ずかしい。


「……天探女(あめのさぐめ)様無茶は止めてください、俺、頑張りますから、誤魔化せても失う物が……」


「だ、大丈夫だ、問題ない、隣接する部屋は全部協力者じゃ、それに今回の計画は換気扇の隙間では狭すぎて無理じゃ、神だから高みの見物とか儂は好かん、任せておけ」


「……天探女様、分かりました、全てお任せします、段ボール箱お供えしますね」


 やることも微妙で女神なのにすごく男前に感じる、惚れますわー


「段ボール箱の奉納? 最近は変わっとるの、まあ行い自体は有りがたい、今回は広いからすごいぞ!」


「……ん……装輪装甲車や火器もろもろ……」


 流石鍛冶神、8輪だが4WD乗用車とほぼ同じハンドル操作、窓が多く車に近い視界で、ウクライナのBTR-4に似ており、補給が少ない代わりに兵員部は殆どミニ工場に成っている。


 更に龍玉を利用した水流式タービンエンジンで二百年無補給、なお履帯は文化財保護条約で禁止。


「なるほど! 補給が少ないなら現地調達現地製造ですか! しかしよく収まりましたね」


「過信は出来んぞ、無理やり詰め込んだから製造能力は低い、あと材料確保も難しい」


「……ん…… 砂鉄や露天鉄鉱床が有るから基本軟鋼薬莢、硬鋼弾芯軟鋼強壮弾、9mmパラ中心で節約すれば多分大丈夫…… 弾が尽きたらコンパウンドクロスボウとサーベル」


「どこの貧乏国ですか! ジャムるじゃないですか! 最後はクロスボウとサーベル?」


「薬室・銃身はミスリル合金でジャムも対策しておる、ライフリングはアダマンタイトコードで命数(めいすう)も大丈夫じゃ」


「……ん…… 7.62mmNATO以上は真鍮薬莢だけど出来るだけ回収する事…… 重金属は規制が有る、手に入れても弾丸としては余り使えない、錆止めは蜜蝋で…… クロスボウ結構強い、サーベルは飾り、どうしても使う時はオプションで長巻(ながまき)にして……」


「装備は凄いのに不安になる説明ですね! なるべく逃げますよ、手榴弾とかは?」


「エマルション系含水爆薬を使った柄付手榴弾(ポテトスマッシャー)じゃ、TNTには劣るが現地生産可能じゃ、導火線式なので4秒から5秒と1秒ブレが有る、早めに投げるのじゃ」


「……ん……後06式小銃てき弾、備蓄と補給だけ……含水爆薬のライフルグレネードは作れる……アドオングレネードはバイポットの邪魔になる、弾薬製造も複雑……弾薬節約に向いてない……」


「……自家製導火線に硝安系爆薬…… テロリストみたいですが……」


 軽く落ち込んだので女神様達が色々励ましてくれた。


 装甲車の主砲は凄いらしい、35mmリボルバーカノン ミレニアムCIWSの劣化、本来艦載用、劣化しないと車載だとひっくり返るらしい。


 搭載35mm弾はAHEAD弾とAPDS弾合わせて250発、自衛使用制限、飛行種や巨獣のみ、凄いね、制限無ければな! あと専門用語多寡で難しいです。


「異世界素材や簡略化した分、ケーブル延長79式誘導弾×2(粘着榴弾と自己鍛造弾)とRWS7.62mm機関銃やマルチセンサー群付きじゃ、生物相手にレーダー搭載やステルスは不要じゃ」


「え、現代兵器なのに成形炸薬じゃないの? 79式って古いんでは?」


「……ん……未知の巨大生物に細いメタルジェットとかユゴニオ弾性限界とか疑問、実験したい……ケーブルと光学誘導の方が融通利く……射程は減ったけど軽量」


「実験て…… 俺も趣味装備欲しい! シモノフ! 狙撃仕様のシモノフPTRS1941近代化版!」


「あんな馬鹿デカいもん正しく無用の長物じゃぞ? 悪いことは言わんバレットかM200にしとけ、な?」


「……M200専用弾は現地生産が無理、14.5mmは可、多少の飴は必要……」


 ごねて良かった! 実用性も大事だけどロマンもいるんです!


 まあ続きを読もう、装甲は圧延ミスリル8mm、衝撃吸収断熱材2mm、CNF混合樹脂10mm(窓もこれ)の複合装甲計20mm、銃火器は基本銃身と薬室がミスリルでライフリングはアダマンタイトコート。


 RWS7.62mmと個人携帯武器は音とマズルフラシュを調整する魔道刻印が施されている、魔力源は使用者、ただし、発射された弾体には効果が無いので小銃敵弾や手榴弾は爆音が発生する。


「……向こうの神様が生きてれば暗殺…… ですか、経験無いんですが……」


「……可能なら……って、いやいや警察ざたは絶対だめ! 人数少ないのじゃ、避けられない戦闘は隠れて伏撃が安全じゃろ?」


「……ん……現地の邪魔な人間も消しやすい……」


 神様は物騒で戦術も(かじ)ってた、地球のテクノロジーと流用可能なファンタジーの融合、弾が少ないが調査にしては豪華、でも油気圧サスまで付けてるし、趣味で作ってません?


「……もうガス兵器でいいんじゃね? また異世界条約ですか?」


「そうじゃ、あの家厳しいからの、催涙系が限界じゃ、じゃがダムダム弾は有りじゃ」

「……ん……環境系に煩いだけ、向こうは死体が綺麗かどうかは気にしない……」


 ……さて、面倒になって来たので流し読み、SIG P229×3、MP5F×3、FA-MASG2×2、Tango 51、SCAR-H・long、SAIGA-12、近代化シモノフPTRS1941、カールグスタフM4+低圧砲化キッド、06式小銃てき弾、各種防弾防刃素材・衣類等。


 武装以外にも有るな、オフロードバイク2台現地バイオ燃料対応、可変ドローン、多目的情報ゴーグル、組立式リアカー、Ets


「資料分厚いし細かいよ! 何で日用品の説明まであんの? 読まないから! ……今更ですが自衛隊の方に依頼した方が良いのでは? 嫌とかじゃなくより適任って意味ですが」


「流石に日本の神として現役自衛官の引き抜きはの…… 除隊した人材は誘ったのじゃ」


「元レンジャー隊員なら俺より断然優秀でしょう、断られたとか?」


「うむ、我らと相性が悪かった、調査任務でフリーハンドと言うとるのに! 信用できる奴ほどやれ交戦規定の詳細だの、支援体制が不十分だの、作戦計画云々」


 あんまりヒートアップすると血圧あがりますよ? 相当合わなかったみたいだ。


「更に交戦許可は毎回必要、警告無しに戦闘は出来ない、必ず命令書を作成保管、民間人の保護が優先、現地政府への申し送り等々 ……イラっとした、面倒すぎてやっとれん」


「……ん……可哀そうだけど、でもそれが今の優秀な自衛官の条件……」


 ストレス凄そう、聞けば納得してしまった、例え元でも信用できる自衛官なら別世界でも叩き込まれた枷は簡単には外れないわな。


 外国と違って自衛官は特殊だ、さんざんマスコミにいじめられて来たし、うん、真面目な自衛官程フリーハンドは無理だな。


「人選、苦労してたんですね、オタクならファンタジー適応高いですからね」


「アウトドア派で海外射撃場の成績も優秀、ミリ寄りオタでサバゲーマー、他にも条件は有ったがクリアしとるし、向いてると思うぞ」


「……ん……無職貧乏、スカウトも楽そうだった……ごめん……」


「まあ職は有りがたいです、しかし、外国語は苦手ですよ? サポートの方は?」


 一応この二柱は女神様、長年パーツ交換で延命してきたPCを付喪神に昇格、神と書いていますが妖怪か精霊みたいなもの、依り代は装甲車中枢コンピュータ。


 性能も格段に上がり、実は今回1番のチートらしい、納得できんが…… PCネームそのままに名前は窓花(まどか)


「この子がサポート要員の一人じゃ、翻訳、機械制御、分析等かなり多才じゃ」


「すみません、姿が擬人化艦艇ダメ男製造機です、アカン奴なので見た目変えてください」


「……ん……電子精霊に見た目を変更……よく秘書にしてたから……」


「……窓花(まどか)です……涼太(りょうた)様、今後ともよろしくお願いします……」


 本来付喪神は百年単位でなる物、無理に付喪神にしたので感情が育ってないらしい、だんだん成長するのだとか。


 しかし能力は破格、記憶媒体に詰め込まれた情報と機械制御に戦術支援、センサーによる資源探査、索敵等色々多才、……あとプライバシーは守れ。


「電撃とかは無理じゃが、頼りになるぞ、協力者から土精霊も貰った、名をつけよ」


「窓花は長年の相棒ですから安心ですね、土の精霊ですか、モグラに似てるからモグで」


「……ん……登録、涼太は魔力少ないから格は低い、資源回収と防衛補助……」


「ん? 土の精霊なら土壁とかですか?」


 地味と言われる土系、だが、実はかなり応用が利く、だけど土木用とか言われ人気がなく可哀そうな分野、役に立つのに人気の無い学科は日本でもあるな。


「いや、精々土系の魔導攻撃を妨害する程度じゃ、装甲車じゃから火や風や水は余裕なんじゃが実体化高質量魔導が不安じゃ、あと落とし穴や車底部攻撃等も怖での」


「光系は煙幕で十分ですしね、現地協力者は決まってますか?」


「現地でスカウトじゃが、オタには難易度高かろう、都市部で奴隷購入かの」


「……元社畜として奴隷は心情的に避けたいです ……ぼっち続いたら検討します」


「……ん……努力は大事……ただ、機密を守る契約は必要……」


 この後、遺伝子改良や肉体改造で魔力と10代の体力を確保、でも見た目年齢(・・・・・)に変化なし、帰ってきたら困るからだと、困っていいよ! で、一ヵ月だがキツイ訓練と勉強が待っていた。


 まあ、ミリオタでも素人ですし、窓花に頼り切ると非常時に困る、甘くないね。


 余談だが皮膚は魔力を消す魔導的ステルス仕様、神様銃器のグリップは魔力が通る。


 いよいよ短期訓練も終わり、ついに作戦が実行され異世界に放り込まれた。




-------------------

「……あの子は異世界になじめるの?……」


金屋子(かなやこ)が珍しいの、流石にそれは分からん、じゃが涼太の精神は変わっておる、ゆえに自分と他の違いには慣れておる、環境もまた同じ、そういう物と(とら)える」


「……でも弱い、一度壊れてる……沢山の仕事や責任で……」


「確かに壊れた、じゃが適応した、結局壊れたがの、トラブル対応の電話をしつつコードを組み次のシステム設計を行っていた、後天的に並列思考を身に着けたのじゃ、その適応力に期待した、精神は弱いがの」


「……豆腐の様に脆い、追い詰めると凍って硬くなる……だから割れた……」


「じゃの、だが割れた後、暫くしてくっ付いた、歪んでじゃが…… 意外としぶとい、ま、見守るしかないの」




補足*********

スリーブ:家の外壁などに有るエアコン配管やアンテナ配線等を通す穴


ミリ系作品に付き、兵器の詳しい解説は省きます、機会が有れば解説します


装甲車のミニ工場:車内工場と表現する場合もある、電気溶鉱炉や多目的自動旋盤、成型やローディング等多目的プレス機、アシッドスライムやスカベンジャースライムを利用した燃料・薬品製造バイオプラント、セルロース抽出槽等、現地で出来るだけ兵器を自給させる為の装備


CNF:セルロースナノファイバー、鉄より丈夫な最新樹脂、実用利用研究中


ジャムる:排莢不良で弾薬装填が上手く行かない、例外は有るが軟鋼薬莢には多い

そろそろ異世界いきます、お待たせしてすみません。

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