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死の惑星に安らぎを  作者: 京衛武百十
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認識の差

「アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士…? メルシュ博士がここに来ているのですか?」


コゼット2CV(ドゥセボー)デイジーは、現在、情動を再現することができなくなっている。にも拘らずその時に発した言葉には、明らかな驚きが込められていた。


コゼット2CVデイジー、いやこの場合はデイジーFS505と言った方がいいか。彼女はメルシュ博士のことをよく知っていたのだった。狂気の天才科学者という悪い意味での有名人としてではなく、あくまで学問の徒としての博士のことをだ。なにしろ彼女の以前の主人がメルシュ博士の知人だったからである。彼女も、直接は面会したことはないものの、何度も話を聞かされてもきた。


『メルシュ博士は、確かに人としては褒められた人物ではないが、紛れもなく天賦の才に恵まれた文字通りの天才だよ』


主人はよくそういうことを言っていた。科学者としてのメルシュ博士のことを認めていたのである。だから彼女にとっては、狂気の天才科学者ではなく、主人が敬愛している知人の一人という認識なのだった。


ちなみに、現在フィーナQ3-Ver.2002が担当している拠点をかつて受け持っていたフローリアCS-MD9を破壊したのは、フィーナQ3-Ver.2002である。それは、メルシュ博士の名前を出した時、フローリアCS-MD9が攻撃的な素振りを見せたことが原因だった。博士の悪評の方をよく知っていたフローリアCS-MD9はメルシュ博士が総合政府から正式な許可を受けて研究を行っているのかと問い詰めて、そうでないと分かった途端に銃を向けた為、フィーナQ3-Ver.2002がその圧倒的な戦闘力の差を見せ付けて一瞬で解体してしまったという経緯があった。


しかしデイジーFS505はそうではなかった。彼女はあくまでメルシュ博士を専門家として認識しており、しかも以前の主人が舌を巻くほどの才能あふれる人物だったということで、サーシャについて相談できるかもしれないと判断したのだ。


そう。彼女はあくまで、サーシャの為に、サーシャを何とか人間社会に戻してやりたい、その為に何かできることがあるかも知れないと考えていたのである。


そしてデイジーFS505は、いや、コゼット2CVデイジーは、サーシャを連れてアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士の研究施設を訪ねるということになった。


これにより、サーシャのような不顕性感染者を保護することを目的とした<町>を建設する計画が始まったという訳であった。



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