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死の惑星に安らぎを  作者: 京衛武百十
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リヴィアターネの住人

現在、惑星リヴィアターネには、<CLS患者特例法>に基づき一日平均数十体のロボットが投棄されていた。その多くは古くなりすぎて引き取り手さえなくなったメイトギアだったが、投棄が始まって既に数年。数千あった拠点には十分な数のロボットが行き渡り、もはや新しく投棄されたロボットは持ち場がなくあぶれている状態にさえなってしまった為に、住人がいなくなった住宅などに勝手に住み着き、そこを拠点としてCLS患者の処置を行う者もいた。


それだけではない。そもそもCLS患者の少ない地域にいたロボットに至っては、<CLS患者の処置という任務>自体を諦め、人間のように日常生活を送る者まで出始めてさえいたのだった。しかし、それを咎める人間達もここにはいない。それ故、自分達こそがこのリヴィアターネの住人であると言わんばかりに振る舞い始めたものと思われた。


かと言ってそれが人間に対する反乱かと言えばそういう訳でもない。彼女らは人間を憎んでも恨んでもいない。むしろ、人間と共に暮らした頃の思い出に浸っていると言った方が近いのかも知れなかった。


肩の辺りで切り揃えられた赤味の強いブラウンのストレートヘアをさらりと揺らし、どことなく『近所のお姉さん』という印象のあるアンナTSLフラウヴェアも、そんなメイトギアの一体だった。彼女の元の主人は非常に穏やかな気性の人物で、彼女も主人に似て穏やかな気性のロボットだった。


それ故、そもそもCLS患者の処置という任務そのものに乗り気ではなく、幸いにもCLS患者が殆どいない地域に落着したこともあって、彼女は早々に任務を諦めていた。拠点を探していた途中で見付けた集落の家の一つに居を構え、主人と一緒にいた頃の生活を再現し始めたという訳だ。


「アンナ、調子はどう?」


庭先で花の手入れをしていた彼女に声を掛けてきたのは、同じように隣の家に住みついたプリムラEL808であった。ゆるくウェーブした亜麻色の髪を胸まで垂らした、『優しいお母さん』風のプリムラEL808も彼女と同じく穏やかな気性のロボットだったので、アンナTSLフラウヴェアの判断に共感し、日常生活を始めたのだった。


しかもそれだけではない。彼女の背後には、十歳には届かないと思われる幼い男児の姿があった。外見こそ損傷も少なくきれいだが、意思を感じさせない、焦点の合わない視線を虚空に向けたうつろな表情と、緩慢な動きで目的もなく動き回るその様子は、まぎれもないCLS患者のものであった。プリムラEL808は、CLS患者の子供と一緒に暮らしていたのである。


しかも、アンナTSLフラウヴェアもそれを見て何も言わなかった。彼女も受け入れていたのだ。昆虫や魚を与えておけば大人しくしているので、彼女達にとっては人間の子供と大差なかったのであった。



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