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死の惑星に安らぎを  作者: 京衛武百十
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素人

明らかにCLSに感染したと思しきバイソンの群れとの距離は三百メートルほど住宅街を覆うように残された林の陰で向こうからも見えなかったのだろうが、獲物を求めて移動していてアリョーナB10を発見。歩み寄ってきたのを彼女も察したという形だった。


不穏な気配を感じ、彼女はすぐさま屋根から降りる。


武器は持ってきていない。手元にあるのはハンマーやバール、釘打ち機や電動のこぎり程度だ。それでこの数を相手にするのは心許ない。


彼女がもし、要人警護仕様のような戦闘力も持つモデルなら、自らの体だけで十分に対抗できるが、一般仕様の彼女は人間よりは多少頑丈で、体重百二十キロほどの人間までなら抱き上げられる程度の力しかなかった。


それに対して、良質な赤身肉が取れるように品種改良され大型になった家畜用バイソンは、大きな個体になれば体重一トンを軽く超え、野生のものに比べれば大人しいと言えど興奮すれば自動車にさえ立ち向かい破壊することもある。


CLSに感染したバイソンはそれこそ死を恐れず痛みも感じず、ただ肉を食らい続けるだけの凶暴な怪物だった。大きすぎる体の為、動きは人間のCLS患者よりさらに鈍重だが、なぜか群れる生態は引き継がれているらしく、百頭単位の群れでゆっくりと迫る様は、まるで山が動いているかのように不気味な圧力を感じさせた。


アリョーナB10は拠点に戻り武器を手に入れて駆除を行うことを決めた。逃げてもどうせ追ってくるし、逃げた先のロボットに処置を押し付けたのでは任務を放棄したことになってしまう。


戦闘能力を持つタイプに比べれば劣るが、それでも時速四十キロ程度で走れる彼女にすれば人間が普通に歩く速度よりも遅いCLSバイソンの群れを振り切るくらいは訳がなかった。


拠点に戻り武器を準備する。


ウルトK7ボクサー散弾銃、マーカスMMKミキサーバング携帯ロケット砲、トレッドホルヘ九ミリマシンピストル、バリドHR-Mk.V突撃銃、シンTSIアサルトライフル。手榴弾と指向性爆弾も数個あった。


だが、一般仕様であり、武器についての知識も民間人と大差ない彼女にはその使い方がいまいち分からなかった。銃はさすがに見れば分かるものの、ロケット砲と爆弾についてはどう使えばいいのかもさっぱりだった。


ネットワークがある場所ならアクセスして情報も得ることが出来るが、今のリヴィアターネそんなものはない。軍用の作戦指揮車にいくらかはデータは残っているかも知れなくても、一般仕様の彼女はその情報にアクセス出来ない。


そう、一般仕様のメイトギアをここに廃棄するというのは、素人の女性を何の訓練もせず戦場に放り込むのと大差ないのである。


それでも彼女はやるしかなかったのだった。そのように命令されたロボットであるがゆえに。



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