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死の惑星に安らぎを  作者: 京衛武百十
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星歴2017年4月。アレクシオーネPJ9S5、起動

惑星リヴィアターネの衛星は、二つあることを除けば、それぞれの大きさもその態様も地球の月によく似た天体だった。しかしその衛星軌道上より内側は完全封鎖された絶対に立ち入りが許可されることない区域であり、一度立ち入れば決して外に出ることは出来ず、そこを超えることは文字通り<死>を意味していた。


ここに立ち入ることが出来るのはロボットだけだ。ただし、そのロボットも二度と外には出ることが出来ないので、<廃棄>という名目で立ち入ることになる。そして今日も、惑星リヴィアターネにロボットが廃棄された。


廃棄用のコンテナに詰められたそれは、十二体の生活支援ロボット、メイトギアであった。いわゆるメイドをモチーフとした意匠を施された女性型ロボットであり、人間の生活には欠かせない存在として社会に浸透していた。


が、あくまで家電や自動車などと同じく耐久消費財であり工業製品に過ぎないメイトギアには、どうしても<商品としての寿命>がある。耐久性は優に百年を超えるもののその間にも次々と新しいメイトギアは開発製造され、運用によって蓄積されたデータはもちろん引き継がれるものの旧式化したボディについては無料でさえ引き取ってもらえないお荷物となるのも残念なことだが現実であった。


それら民間では引き取り手すらないメイトギア達の多くは解体処分され再資源化されるのだが、そのうちの一部が、廃品利用として辺境の軍に無償提供されたり、二度と回収されることのない仕事を与えられて事実上の廃棄処分となるのである。


今回、惑星リヴィアターネに向けて射出された廃棄用コンテナ内のメイトギアも、そういうものの一つだった。


はっきり言って廃棄なので、投入方法も非常に雑であり、壊れずに稼働出来れば御の字程度の扱いだった。パラシュートによる申し訳程度の減速の後にリヴィアターネの地表に落着したコンテナは大きく破損し、中のメイトギア達も全て壊れてしまったかのように見えた。だが、折り重なるように倒れた彼女らの中から、一人が、いや、一体のメイトギアが立ち上がった。他のメイトギアがクッションとなり、辛うじて破壊を免れたようだった。


彼女は、アレクシオーネPJ9S5と呼ばれる、要人警護用にも使われる為に戦闘力も付与されたモデルだった。一般仕様に比べると堅牢で耐久性も格段に優れていた為、無事だったという一面もあるだろう。と言うよりはむしろ、彼女を無事に落着させる為のクッション材として他のメイトギアは同梱されていたと言ってもいいかも知れない。


こうして彼女、アレクシオーネPJ9S5は、死の惑星(ほし)リヴィアターネの地に降り立ったのであった。



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