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死の惑星に安らぎを  作者: 京衛武百十
100/120

成長

ケインとエレクシアYM10の生活は、非常に奇妙なものだった。エレクシアYM10に教えてもらったとおりに、ケインは自分でテントを張り、食事の用意をし、自分で自分の身を守れるように銃の使い方を覚えた。


たまたま落着した廃棄用コンテナを発見した時には、近くに落ちていた小型の拳銃を見付けてそれを自分用にした。コンバットルージュと呼ばれる、女性にも扱いやすいようにと作られた拳銃だった。何丁も同じコンバットルージュが入っていたが、何故か殆ど弾倉が抜き取られていた。しかし、落着した際の衝撃でコンテナが破損したのだろう、その際に放り出されたらしい一丁だけが完全な状態で残されていて、それを拾ったのだ。銃弾はエレクシアYM10がかつて回収し保管していたものの中に適合するものがあったのですぐに使えるようになった。


「躊躇うな。確実に頭を狙え。体を撃ってもすぐには仕留められん。それからその銃は威力が小さいからな。撃つ時には最低二回、引き金を引け」


CLS患者と遭遇した時に、エレクシアYM10からそうアドバイスをもらいながら、ケインはCLS患者を仕留めた。幸か不幸か、そのCLS患者は外見上も酷く傷んでいてただの怪物にしか見えなかったこともあり、ケインでもそれほど躊躇うことなく撃つことが出来た。


それでも、自分が撃ったのは、姉と同じ病気に罹った人間だということは頭では理解していた。だからか、その夜は何故か涙が勝手に溢れてきてなかなか寝付けなかった。


しかしそれも、何度かCLS患者を仕留めるうちに慣れていき、やがてそうすることがCLS患者の為なんだと思えるようになっていった。そして姉のことも、あれで安らかに眠れるようになったんだと思えるようになり、彼の精神はさらに安定するようになっていったのだった。


そんな中、ケインは、牧歌的でのどかにも見える開けた場所に倒れていたメイトギアの傍で、彼にとってはいささか大きすぎるかもしれない、全長四十センチ以上あるレトロなリボルバー型の拳銃を拾った。


「でっけぇ……でもすごく強そうだ。なあ、これなら一発で倒せるよな?」


銃のことをよく知らない彼でもそう感じる程の独特の力感を放つ銃を手にして、試しにと空に向かって引き金を引こうとしたケインに対し、「やめろ!!」とエレクシアYM10が激しく叱責した。


「な、なんだよ。びっくりするじゃないか」


戸惑うケインに向かって足を引きずりながら歩み寄り、残された左腕で銃身を掴んでからエレクシアYM10が言う。


「これでいい。引き金を引いてみろ」


「…?」


意味も分からないまま、ケインは言われた通りに引き金を引いたのだった。



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