第9話〜湊side〜
校門から見えるブロック塀から、男の人が現れる。
「ぁ、来たよ!」
僕より少し背の低い、幸人君は振り返り僕を見上げる。
「ぁ…」
僕は思わず声が漏れる
「ここーっ!」
ブンブンと大きく手を振り、幸人君は場所を知らせる。
現れたのは、学ランに、青い髪の青南第二高校の男の人。
僕も、何度か見かけたことのある人物だった。
その人は
「待たせたね。幸人」
と言って、幸人君の柔らかな黒い髪をクシャクシャと撫でる。
「だいっじょーぶですっ!蒼弥さんのためならなんなりとっ」
撫でられた幸人君は嬉しそうに笑う。
そして、大きく振っていた右手でVサインを顔の横に作る。
微笑ましく、その様子を見ていると、
「そうか…君が…」
そう、一言呟いて蒼弥と呼ばれた人物は、僕の頭の先から足の先まで見てくる。
「ぇ…っと…は、はじめまして」
緊張してしまった僕は少し上ずった声で挨拶する。
蒼弥さんは、僕よりも背が高い。
185センチ前後…て所かな…
なんて思いながら蒼弥さんを僕は見る。
「うん。初めまして湊君」
ニコッと爽やかな笑みを向けられ、僕はドキッとしてしまう。
そして何より
「どうして…僕の名前…」
「あぁ…、君の王子様から聞いた」
「王子…様?」
僕の問いに頷いて蒼弥さんは後ろを振り返る。
そして…
一つため息をついた後、先ほど自分が歩んできた道を引き返す。
「おい、いい加減出てこいよ」
と、ブロック塀の奥に人がいるのだろうか。
僕や幸人君に話す言葉遣いより少々乱暴に声をかけている。
「ぁっ!引っ張んなよっ!」
「すんなり出てきたら引っ張らねぇよ!」
蒼弥さんは、奥にいるであろう人物の袖を引っ張る。
そして
「ぅわぁぁっ⁉︎」
「げっ…」
蒼弥さんの絶望的な声と共に
ズシャアッ!と覆いかぶさるように赤髪の男が出てくる。
「ぃっ……痛くない…なんで?」
「…だろうよ。どけ…」
蒼弥さんを下敷きに倒れこんだ人物は
「ぁっ!悪い」
「ったく…」
ため息をついて蒼弥さんは立ち上がる。
「蒼弥が引っ張るからだろっ⁉︎」
「あぁ、はいはい。そうだね」
そう適当に返事をして蒼弥さんはパンパンっと、学ランについた砂埃を落とす。
「2人とも、もっと格好良く現れると思ってたんですけどーっ」
隣で、青南第二高校の人たちに幸人君は笑いを堪えながら声かける。
「ぁっ!幸人!笑ってんじゃねぇよっ!」
そう言って、近づいてくる人物に僕は目を奪われる。
当時金髪だったから、まさか赤髪になっているなんて思いもしなかった。
でも何故か今、僕の中にある人物の名前が脳裏をかすめる。
「日向…先輩…?」
僕は2年間追いかけてきた人物の名前を呟いていて
「ぁ?…っ‼︎湊っ?」
僕を見た彼は、僕の名前を小さく叫んだ。
そんな僕らのやりとりに
「だからーっ、さっき俺、言ったでしょーっ!湊くん?」
幸人君が僕の肩に手を置く。
「え?」
「蒼弥さんが、俺の趣味仲間。そして、この赤い髪の方が…」
幸人君が言いかけた所に、
「君の王子様…西條 日向だ」
と、言い先輩の背中を軽く僕の方へと押し出した。
ご拝読いただきありがとうございます(*´∀`*)
職場の昼休みに更新です(*´∀`*)笑
やっと、二人が出会いました。
ようやく物語が進み始めます。笑
日向、湊の恋、応援してやってください。