第12話〜湊side〜
「ほら、メニュー」
結局お金に乏しい貧乏学生の僕たちは
「ありがとうございます」
晴南第三高校に近いファミレスで、昼食をとることにした。
赤髪の学ランと、
金髪の濃い青のブレザーは
それはそれは目立つらしい。
角の席を用意しては貰ったけれど
「…悪いな。なんだか悪目立ちしてるよな」
日向先輩は辺りを見渡す。
この辺に住んでいるであろう人達の視線が刺さる。
「姉妹校とはいえ、このツーショットは珍しいですからね」
と言って、僕は自然とメニューに視線を落とす。
でも…相対的に心はバクバクである。
この度、僕が入学した晴南第三高等学校は、男子校の中でも超エリート校。
見た目は派手な子達が多いけど
成績が優秀ながらも部活にも力を入れている。
反対に、先輩の通う
青南第二高等学校は
共学であり、
一般的な高等学校。
そのため、
青南第二高等学校の男子生徒は
僕らを敵視していることが多いと言う。
学校行事を合同に行うことはあっても
プライベートで、この2種類の制服が交わることはない。
僕らを見ている人達もきっと、興味本位なのだろう。
「ねぇ先輩?」
僕はメニューから顔を上げ
一つ、
日向先輩に問うことにした。
「どうした?」
「なにがまかり間違って、学ランなんて着てるんです?」
「…ぅ…」
痛いところをついてしまったのだろう。
日向先輩の顔が引きつる。
でも、2年かかって追いかけた僕からしたら
「僕のこと…からかっていたんですか?」
口が自然と言葉を結んでいた。
「2年越しの冗談なんてあると思うか?」
本気だ。と、付け足して先輩は僕の瞳を見つめ返す。
「…っ…僕……」
不意打ちな、真剣な眼差しに僕は下を俯くけれど、
「必死で勉強してくれたんだろ?」
日向先輩は頬杖をついて、誇らしげに聞いてくる。
「それ、自分で言っちゃいます?」
と少しだけ意地悪を言うと
「…せめて自惚れさせてくれよ…」
ハァ…と溜息をついて僕を見つめる。
そして。
「俺だってまさか、間違えて教えるなんて思いもしなかったんだよ」
と言って、テーブルに突っ伏す。
赤い髪に、口にピアス。
中学一の問題児。
と言われた先輩。
怖くないわけじゃない。
でも…何故か、そんな先輩が気になってしまう。
「ぇ…じゃあ、本気で自分の高校名間違えたんですか?」
と僕は問う。
「…頼む。言わないでくれ」
もはや、イジケていると言っても間違いではないだろう姿に
「ふふっ」
と、自然と僕は顔が綻ぶ。
そんな、僕の様子に、テーブルから顔を上げ
「…っ…な、なんだよ」
少しだけ、頬を赤らめるから
「いえ?なんだか、やっぱり先輩だなぁって」
「それ、どういう意味だよ」
どう応えたらいいのか
何が、正解なのかわからない僕は
「…ぇーっと…」
苦笑いをして、髪をおろしながら視線を泳がす。
すると
「俺、湊にどんな風に映ってるか気になる」
テーブルに置かれた僕の左手を突然包む。
それは、強引とか
乱暴とかそんなものでなく
暖かく包まれるから僕は
「…っ…ぁの…ココ…では…」
まだ春だと言うのに、
僕の体温は手のひらを通じて体が熱くなる。
きっと、僕の顔は赤いのだろう。
先輩が気まずい顔をして
「…っ…ぁ、悪い…」
と呟いて僕の左手から、右手を離す。
少しだけ、気恥ずかしい沈黙が続いたけれど
僕の右手首を見ながら
先輩が突然口を開く。
「そのシュシュ…」
「ぁ、やっと気付いてくれました?」
手のひらに乗せ僕は日向先輩に見せる。
2年前に日向先輩からもらった
少しだけ趣味の悪いシュシュ。
高校生の僕が使うには、
キャラクターの布で作られていて少々不釣り合い。
でも、僕はコレが大のお気に入り。
「…それ使ってくれてたんだな」
ニカッと嬉しそうに笑う。
だから
「えぇ。僕の此処一番。って言う時のお守りなんですよ」
と、僕は告げる。
その時だった。
グギュルル…
と言う音が聞こえてきて
「…悪いんだけどよ…そろそろ飯頼まねぇ?」
顔を真っ赤にして日向先輩は聞いてくる。
僕は真っ先に彼に対し
(愛すべき馬鹿って、日向先輩のような人のことなんだろうな)
と思ったんだ。




