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10 やっぱ俺はこれが一番だよな……って何が?

★★★

なんだろうこの気持ち……。

蓮雄は外に出て、玄関の前で立ち尽くして、ヘルの部屋を見た。別にのぞき見なんてするわけはない。え?何?してほしいの?

わけがわからない。なんか急に胸が苦しくなってくる。別に俺が悪いわけではないのに。

勘違いしている人もいるかもしれないから言っておくが、これは恋ではない。てかあんな年上に恋するわけないじゃん。って誰に言ってんだ俺。

これは恋とかいう感情ではない。罪悪感、というわけでもない。何かの感情を無くしているような……そう思った時、玄関の扉が開き、亜透あずきが出てきた。


「よかったーげんかんのまえでのぞきみしててー」

「いや、してねぇよ……」


いつものようなツッコミはなかった。いや、今そんな気分ではない。


「……っで、用はなんだ?」


いつもより少し暗いトーンで喋る。


「えーと……ヘルおねえちゃんのことなんだけどー」

「いいよそれは……そっとしといてやれ……」

「いや、そのことについてじゃなくてね、おっぱいについて――」

「今てめぇのおふざけに付き合ってる暇はねぇーんだよ……確かにおっぱいについては気になるが、今そんなことはどうでもいい……早くこの世界を攻略しねぇーといけねぇーんだよ……攻略の仕方もわからねぇクズは家に引っ込んでろ」


爆颶蓮雄ばぐれおんは嘘をつけない。つまり、本音をそのまま言ってしまう男なのだ。

言いすぎた、とは今回は思っていない。ただ、本当の事を言ったまでだ。そう……本当のことを……。

亜透はショックを受けたのか、固まってしまっている。

だが、そんなことは蓮雄にとってどうでもいいことだ。

本当のことを言って、それを受け止められないなんて下僕以下にしか思えない。本当のことを受け止めるべきだ、と蓮雄は思う。そう、理想なんて本当のことではないから、そんなの考えるのは時間の無駄なのだ。理想なんて……大事なものを失うだけだ……前みたいにもう失いたくはない……大切な人を俺の前から消すのはもう……。


「そう……だよね……おにいちゃんにとってわたしはじゃまだよね……うんわかった……おにいちゃんのいうとおりにするよ……」


そう言ってこちらに背を向けて玄関を向く。


「だけど……おにちゃんはいつものおにいちゃんのほうがかっこいいよ……いまのおにいちゃんは、なんかかなしくみえるよ……いつものおにいちゃんをわすれないで」


その言葉とともに亜透は家に入っていった。

蓮雄はそのまま振り返り、街を歩く。歩いている意味などない。ただ、家に引きこもっていても何も進まないからだ。あのメールが来たからには、すぐにこの異世界から出ないといけない。たが、蓮雄には攻略の仕方がわからない。それならば……

蓮雄はあるところで立ち止まる。路地裏だ。さっき通った時にこの奥から異様な雰囲気を感じた。ホモなんてものではない……。

そのまま路地裏に入り込んでいく。ゴミとか放ったらかしで、ほぼ地球の路地裏と変わらない。

しばらく歩き、奥から光が見える。蓮雄はそれに向かって歩く。

そして、その光の先の光景は――


「あん♡」

「はぁ♡」


――全力で見なかったことにしよう。

そして路地裏から速やかに出て、違う路地裏に入る。また光が見えたのでそれに向かって歩く。

そして、その光の先の光景は――


「あん♡」

「はぁ♡」


――全力で見なかったことにしよう。

そして路地裏から速やかに出て、違う路地裏に入る。また光が見えたのでそれに向かって歩く。

そして、その光の先の光景は――


「あん♡」

「はぁ♡」


――全力で見なかったことにしよう。

そして路地裏から速やかに出て、立ち止まる。うん。


「そろそろ我慢しきれんわ!何なのこれ!?どこの路地裏の先ホモ・サピエンスなんですけど!?光を見つけたというか、酷いもん見ましたけど!?てか何!?路地裏プレイとか流行ってんの!?」


思わず叫んでしまった。

ただなぜだろう。なぜか心がスッキリとした。

そうか……亜透の言う通りか……やっぱり俺はこれが一番だよな。

蓮雄は顔をパシン!と叩き、気持ちを切り替える。表情がさっきより明るくなった気がする。


「ありがとな亜透」


と、後ろでニコニコと笑ってる亜透に言う。襲っていいですか?コンピューターならいいよねっ……冗談です。決してロリコンではありません。てかほんと、俺誰に謝ってんだろ。


「よかったですっ!もとのおにいちゃんにもどってっ!」

「アハハ……」


ほんと、これからどうすればいいのだろう。

蓮雄と亜透は並んで街を歩く。なんか嫉妬みたいな視線しか感じられないのだけど、まぁいいか。


「……なんでまわりのひとたちはこちらをみてるんでしょう?」

「お前コンピューターウイルスじゃねぇのかよ……」

「そうなんですか?」

「おいてめぇが言ったんだろうが!」

「おいてめぇがいったんだろうが!」

「なんで同じこと言ったし!?」


てか言う人が変わるだけでこんなに変わるものなんだな。亜透が言うとちょーかわいい。ヤバイ。ほんと俺ロリコンに目覚めそう。タイトル、俺は幼女愛ロリコンに目覚めて異世界を夢創する、で。

まぁ皆も見ればわかるよ。この可愛さはチート。


「ところで、やっとこうりゃくほうほうがわかりましたよ!おにいちゃん!」

「マジか!?」

「はいっ!ようやくそのこうりゃくほうほうがわたしにまわってきたんですっ!」

「それで!?どうやるんだ!?」


強く亜透の肩をゆする。


「おにいちゃん、すこしおちついてください」

「ご、ごめん」


そう言って自分がやったことに気づいたのか、亜透の肩から手を離す。


「それで、そのこうりゃくほうほうなのですが」

「うんうん!」

「どこかにいるこくおう……じゃなくてじょうおうさんをおとこにひきもどしたらこうりゃくとなりますっ!」

「……」


国王と言ってもいいんじゃないかと思ったんだけど。それよりも……


「攻略むずすぎんだろォォォォォォォォォォォォォォ!?」


いやマジで!


「男に引き戻すイコール、ホモじゃなくさせることだろ!?どうやるんだよ!」

「そんなんしりません」

「いや待てぇぇぇぇぇぇぇぇ!どう考えても俺が掘られることしか思いつかないんですけど!?」

「じゃあほられてくださいっ!」

「掘られるかぁぁぁぁぁ!なめてんのかてめぇ!」

「となりのおじさんがじぶんのなめようとしてせぼねがおれてしんだのをみましたっ!」

「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


その声はよく響い――くわけねーだろ。

やっぱ俺は、これが一番だよな。

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