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日本にスギ好き過ぎが多過ぎな件について

 ようやく寒さも和らいできたこの季節。

 風が暖かくなり、花が咲き始める、古代から日本人が尤も愛でてきた季節、春。

 日本が一番美しいこの季節に、やつらはやはり今年もやってきた。

 

 そう。

 スギ花粉である。


 今や、国民的アレルギーで日本人の7割が罹っていると言われるこのスギ花粉に、私は20年以上悩まされている。

 発症したのは高校生の時だったから、当時はまだ時代の先端的レアな存在であった。

 だが、いい薬ができるどころか、年々患者は増加の一途を辿り、国民的アレルギー症状と言われるようになった現在まで、これと言った特効薬は見つかっていない。

 癌もエイズも薬で抑えられるこの時代に、花粉症がどうして未だに何の特効薬も開発されないのか、逆に不思議なくらいである。

 まあ、癌と違って命に関わる訳でもないし、花粉が終われば症状も治まるという一過性のものなので、さほど重要視されていないのかもしれない。

 しかも、この辛さは症状の出ない人には分からないので、一部の人間がたった二ヶ月間くらい鼻水で苦しんだって、国家予算を使ってまで対処する必要はないと思われているのかもしれない。

 本人は死にそうなんだけどね。


 お上に頼っていても埒が明かない以上、自力でなんとかするしかない。

 そういう訳で、この20年間、私は花粉症に効くというあらゆる方法を試してきた。

 薬局で市販されている薬は勿論、耳鼻科で処方された薬、鼻腔に直接噴射する点鼻薬、ヨーグルト、グアバ茶、テンカ茶、鼻の中に塗って花粉を吸収させるクリーム、etc...

 成果のほどは、私の症状が高校時代から全く改善されていないことからも明白だ。

 

 毎年、この時期になると、耳鼻科は花粉症患者で満員御礼である。

 耳鼻科にとっては年に一度のかき入れ時だろう。

 もしかしたら、この時期の花粉症患者は大きな手術なんかが少ない耳鼻科にとって、大切な財源になっていて、それを減らさないようにわざと特効薬作らないんじゃないの!?

 治しちゃったら、お客が減っちゃうしね。

・・・なんて、私が思っちゃうのも無理はないくらい、この時期の耳鼻科は大繁盛だ。

 この経済的パワーバランスを考えると、耳鼻科が特効薬を開発するにはモチベーション低すぎて、期待できそうもない。


 では、何故、誰も、その病原となるスギを何とかしようと思わないのか!?

 どう見ても、日本の山にスギは多過ぎだ。

 そもそも、日本の山がスギ林に変わってしまったのは、戦後の国家政策のせいらしい。

 戦後、焼け果てた都市部の住宅建設の為に木材の需要が突発的に増加した為、成長の早いスギを植えまくったのだとか。

 ただ、そのスギが大きくなって花粉を撒き散らす頃には、戦後の焼け跡は既に復興しており、山に住んでいた人間も皆仕事を求めて街に出た為に管理する事もできず、結果的には植えっ放しの状態で放置されているのが現状なのである。

 しかも、日本国内で植林されているスギを使うより、海外から入ってくる輸入木材の方が単価的にも安いということで、せっかく植えたスギも使われる事がないまま、天に向かって伸び放題だ。

 だったら、別の木を植えたらいいのに、って、どうして誰も言わないのか、私には不思議でならなかった。

 

もう一つの懸念事項は、自然破壊だ。

 山にスギなどの針葉樹が多過ぎると渇水を起こす。

 成長が早いという事は、それだけ水分・養分を吸収する力が強いということである。

 以前、私の家でコニファーを植えたことがあった。

 スギではないが、コニファーも針葉樹の一種で同属だ。

 このコニファーの成長が異常に早い。

 しかも、コニファーが伸びるに従って地面は常に乾燥し、周りに植えていた他の植物はどんどん枯れていった。

 2階建ての家の屋根まで伸びたコニファーは、誰も手がつけられなくなってしまって、結局、根本から伐採するに至ったのだが、その根の張り具合も恐ろしく頑丈で引き抜く事もできず、未だに切り株だけが残っている。

 今や、日本中のスギが我が家のコニファーと同じ状態になっているのではないか?

 ここまでスギが蔓延はびこるに至った原因も理由も明白なのに、どうして国家レベルのスギ対策プロジェクトを始動させないのか!?


 そんな事を毎年考えていたのだが、何年か前、とうとうある御方がスギ花粉対策についての声明を上げた。

 当時、日本の首都の知事をされていたその方は、その年、自分が花粉症に罹って、初めてコトの重大さを認識したとインタビューで答えていた。

「こんなに苦しいのに、どうして日本人は我慢してたんだ!?」と、彼らしくも尤もな事を仰られて、私も非常に頼もしく思ったのだ。

 某巨大テロ国家相手にはっきりモノを言えるこの人が、農林水産省とかに一声掛ければ、たかが国有林の中のスギ林くらい来年あたりは半分くらい伐採してくれるかもしれない。

 少なくとも、領海のあの島を買い取っちゃう事に比べたら、スギ切るくらい遥かに難易度は低いだろう。


・・・なんて、期待していたのだが、その具体的な政策を聞いて、私は呆れた。

『今後植えるスギは花粉が飛ばない種類のものにする』そうだ。

 どんだけスギ好きやねん!

 スギじゃなくても、モミジとかカエデとかサクラとか、他にも色々あるでしょーよ!?

「秋の夕日に照る山モミジ」って言うくらい、植えとくだけで付加価値のある樹木はまだまだある筈だ。

 

 国民の7割がアレルギー症状を患っている事実があるにも拘わらず、どうして、そこまでスギを植えとく必要があるのか?

 それでも、どうしてもスギを植えておきたいなら、その必要性と理由を、国家は責任を持って、花粉症患者に説明するべきだ。

 もしくは、この際、お金で解決してくれたっていい。

 花粉症の人には特別控除をつけるとか、花粉手当が市から支給されるとかね。

 

 その御方は既に知事を辞任されているので、その後、件のスギ対策がどのように引き継がれているのか検討もつかないが、今年も私の花粉症が全く改善されていないのを見る限り、彼の政策が功を奏しているようには思えない。

 うん、全然変わってないよ、毎年。

 

 こうなったら、某総理大臣が花粉症になってくれないかな~と、小市民の私は祈るばかりである。

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