初戦闘
ここ数日で食料事情が改善した俺は、本題の出口の捜索に乗り出すことにした。
今回の探索は神殿の入り口から真っ直ぐ進んだコースにした。理由は簡単で、今は道が無くなっていても、昔は有ったのではないか、有ったならば入り口から真っ直ぐに延びていたのではないかと考えたからである。
探索を開始して暫らくは目新しい物も何も無く、いつもの森が続いているのみであった。体感で十五分程度歩き続けていると、右前方の茂みが音を立てた。
「敵か?」
俺がそう思い身構えると、茂みの奥から見た目が木で出来た人型の人形が出て来た
俺は一瞬焦ったが相手の移動速度が遅かったため、落ち着いて鑑定することにした。
ゴーレム(H)
核の魔力で体を動かす
魔力によって活動している
材質と魔力ランクによって強さが変わる
材質・木
魔力ランク・E
この魔力ランクがどの程度の物かは分からないが、動きから大した強さでは無いと判断しこいつと戦うことにした。
さあ、記念すべき初戦闘だ。
◆ ◆ ◆
俺は、ゴーレムと一定の距離を保ちつつ攻撃のスキを伺った。
こちらは武器を持っていないが、それは相手も同じこと。相手の関節が生物のそれと変わらないなら、逆に曲げることで折れるのではないか、そう考え少しずつ相手の後ろに回り込んでいった。
十分に相手の左側に回り込み、意を決っして飛び込んだ瞬間ゴーレムは無造作に木で出来た腕を振りぬいてきた。
相手のこれまでの移動速度からは、予想もつかない早い一撃に俺は咄嗟に左腕でガードしてしまった。
コンという乾いた木と骨がぶつかる音を耳が拾うのとほぼ同時、俺は腕から感じる激痛に悲鳴を上げ地面を転げ回った。
「いってぇぇぇーーーーーーーーーーーー!」
腕から痛みがジンジンと来る。痛い、涙が出る。
俺が目元に涙を貯めながら仰向けになり目を開けると、そこには俺に止めを刺そうと足を上げるゴーレムの姿を捉えた。
ゴーレムを見た瞬間腕からの痛みは感じなくなり、俺は地面を回転しながらその攻撃を躱し、急いで体制を立て直すと神殿の方向に全速力で駈け出した。
「はー、はー。」
神殿に駆け込み、壁に寄り掛って呼吸を整えていると安堵からかまた腕の痛みを感じるようになってきた。
「くそっ!」
俺は悪態付きつつ、昨日までに採集した物を貯めた一画によろよろと近づいた。
今回の探索は様子見だった為、無限収納には何にも入っていなかった。
「これじゃない、どこやった。」
痛みと焦りから、お目当ての品を見付けるのに苦労しながらようやく探し当てた。
薬草
葉の成分は傷の回復に効果がある
「役に立つと思って採ってきた物が、こうも早く使うとはな。」
そんな独り言を零しながら、その葉を口に含みある程度噛むと青く変色しだした腕に塗っていった。
薬草は傷口には沁みたものの、腕からの鈍い痛みは引いていった。
「ふー。」
腕の痛みが和らぎ、俺はようやく安堵の声を漏らした。
少し冷静になると今回の反省を始めることにした。
今回、最大の失敗は俺の油断から来た準備不足である。
今冷静に考えると、武器も持たずに探索を開始したのは無謀すぎる。今までが上手く行き過ぎて、こちらの世界に来た時に持っていた緊張感が、知らない内に消えていたことが原因だと思う。
そして、モンスターについて何の調査もせずに挑んだことである。
鑑定で見たゴーレムのステータスにあった魔力ランクが所謂モンスターのランクのことなんだろう。ロリ神の話だと、この森のモンスターは低ランクらしいのでEランクはこの世界では雑魚だろう。その雑魚にも何の準備なしでは死に掛けたのだから、これからは油断などしない様に行動しよう。そして、これから生物のモンスターが出て来たとしても、躊躇せず殺せるようにならねばと感じた。
今回の反省が終わり、これからの探索に必要な物は何か考えてみることにした。
まずは武器だろう。今回は動きも遅く打撃のみの相手だったから生き残れたものの、もしこれが獣の様な素早い相手だったならもう俺はこの世に居ないだろう。
今回の武器は、スキルの木工細工で作るとしよう。材料はそこらにある木を使えば問題あるまい。
それで武器が出来たら、薬品を少し調合するか。
これからの流れが決まったところで丁度日が沈む時間帯になってしまった。今日は先頭をしたり、考え事が多かったせいか一日が早く感じた。
◆ ◆ ◆
翌朝目が覚め、昨日の負傷した腕を診てみると、まだ腫れも残っており触ると鈍い痛みが走った。
果物で朝食を済ませると、早速武器作りを始めることにした。
木工細工だが、鑑定眼を使ったときのようにスキルを意識して木に触れてみることにした。
結果は何も無し。スキルを使った時、何かが俺の中から抜けた感覚はあったものの木に変化は見られなかった。
今度は棒状になるようイメージし、木に触れてみた。すると先程とは比べ物になら無い程の虚脱感と共に、手に木の棒が握られていた。
成功だ、やり方さえ分かれば後は応用だ。今回作るのは、木刀にすることにした。お土産で見る様な物をイメージし、再度木に触れてみた。
木刀を作ることには成功したものの、今まで感じたことの無い虚脱感が体を襲い思わず膝を着いてしまった。
「はぁはぁ、成功だ・・・・。」
刀
材質・木
俺は、手の中に納まっている木刀を満足気に見つめると、虚脱感から仰向けに寝転がりそのまま眠ってしまった。
俺が目を覚ますと、日が沈みかけ辺りは薄暗くなり始めていた。
「寝ちまったか。この神殿内じゃなかったら死んでたかもな。」
俺は昨日のあの無機質なゴーレムの顔を思い出し、背筋に寒気を感じた。
「まだ日本に居た頃の感覚が抜けきってないな。
昨日あんなになったてのに。」
自分の甘さに嫌気を感じたが、思考を切り替えて明日からの予定について考えることにした。
武器が完成したし、次は薬か。薬草はまだ有るし、葉の成分のみにすれば素早く回復するための手段になるかもしれない。
あと壊れるかも知れないから、木刀の予備も何本か作っておくか。
◆ ◆ ◆
翌日、早速薬の試作に取り掛かった。
まず、薬草を磨り潰すために擦り鉢と擦り棒を作った。木刀を作った時の様な酷い物には襲われなかったものの、軽い虚脱感には襲われた。どうやらこの虚脱感は、材料の量とイメージの明確度が上がる程増すようだった。
道具を作り終わると、擦り鉢に薬草を入れ潰し井戸水を最後に加えて完成だ。完成した物を鑑定してみると、
傷薬
回復量・小
と鑑定できた。
それからは薬を作っては無限収納に放り込んでいった。因みに入れ物も木工細工で作った。
それから数日が経ち、武器と薬のストックが十分になったことを確認しいよいよ今日ゴーレムにリベンジすることにした。