表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カラフル  作者:
それぞれ
15/21

5.

絵理と2人、新宿駅に向かって手をつないで歩く。一応念のため、周りを確認するけど高橋と大塚はどうやらいない。


「彩香、高橋さんと少し飲んでから帰るって」

「毒牙にかかったか」

「なにそれ、いい人そうだったよ」


駅の構内は金土ほどじゃないけれど雑踏はひどく、埼京線イコール痴漢っていうイメージがあるから山手線で帰ろうかと提案。


「雅也さんが守ってくれるから大丈夫」


想像通りの満員電車で離れないように絵理の手をしっかり握る。人の背中と背中の間で向かい合い、絵理の腰に軽く手を回す。


「大丈夫?」

「うん」


痴漢がいるかどうかは知らないけど、会話することで彼氏が一緒だぞってアピール。不安気にうつむく絵理と会話は続かないけど、伝わる体温はお酒のせいだろうあったかい。

池袋のホームに足を出すとちょっと一息、大丈夫って聞いたら大丈夫って、そう話す絵理の笑顔に安心した。


「守ってくれる人がいるっていいね」

「おれでよければ」


2人笑顔で西口へと歩を進める。マンションに着いたらまた明日って言って、ご飯はそれからコンビニででも買おうと思った。


「雅也さん」

「なあに?」

「今夜、部屋、泊まっていい?」


そこで踊ろうかと思う感情を抑えて、でもきっと変な笑顔してて……。化粧とか朝の用意とか考えて絵理の部屋に泊まることにした。とりあえず先にコンビニで、あんかけトロロ焼きそばってなんか微妙そうなの買って、自分の部屋でシャワーだけ浴びて絵理の部屋に向かう。


すっかり寝る準備も、着替えも終えた絵理、「すっぴん」なんて恥ずかしそうにしてたけど、正直あんまり変わらない。


「パジャマ、買わないとね」


今の空気にさすがに緊張はする。セックスーー期待しないわけでもないけど今日はしない、それだけは泊まるって決めたときから心に言い聞かせている。


「ご飯食べていいかな?」

「お茶飲む?」

「うん、ありがとう」


まるで付き合い始めのカップル、いや付き合い始まて4日目だからその通りだ。


「やっぱり微妙な味」

「なんでそれにしたの?」

「あやしいから」


クスリと笑う絵理、釣られて笑うおれ、同棲したらこんな感じなんだって想像しながら、でも悪くないなってほくそ笑む。


「同棲したらこんな感じ?」

「今おれも同じこと考えてた」


それから30分後、絵理はベッドの中でおれの腕の中にいる。「恥ずかしい」そう言いながら何度も何度もキスをした。

パジャマ越しに伝わる絵理のからだは今まで抱きしめた以上に、素直にその肌の線を教えてくれる。眠るときはブラをしないんだろう、その膨らみはおれを包んでくれるよう。包んでるのはおれ?包まれてるのはおれ?この感覚が気持ちいい。


きっと絵理の頭の中にもセックスって言葉はあったと思う。けれどゆっくり頭を撫でる手のひらに、安心したのかいつの間にか寝息を立てていた。

眠れないーーしょうがない。いつも寝るのは朝になってから。はだけるパジャマの胸元から覗く谷間に、視線が釘付けになるのは心情。考えてみたらなんだか学生みたいな恋愛をしている、なんなら高校生だってもっとオトナな恋愛をしているはず。なら中学生?まさか……小学生?


絵理の唇をそっとなぞってみた。愛おしくなってぎゅって絵理を抱きしめてみる。目を覚まさないことに安心して、絵理の体温を全身で受け止めた。ポカポカとあったまり始めるからだの、芯の隣りにあるまどろみがまばたを、少しだけほんの少しだけ重くしてくれる。


「おやすみ」


聞こえてないだろう、でもそう言って目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ