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カラフル  作者:
CAMPARI
1/21

1.

ウエディングドレスは白がいいかな。それとも、カンパリみたいに真っ赤がいいかな。

ーーその声に、心は見事にほだされる。


セックスフレンドの由希から電話があったのは、仕事が終わってすぐの午前0時を過ぎた、歌舞伎町一番街のアーケードをくぐった時だった。


「今から飲まない?」


由希が退院して間もないことを考えると、セックスですら一歩身を引く、ましてや子宮……。


「からだはもう大丈夫。それに妹も一緒にいるからそんなんじゃないわよ」


その言葉で気が少し楽になった。由希が住んでるのは確か明大前、行ったことはないけれど居酒屋の1件くらいあるだろうと予想は、23区に住んでいれば大概は正解する。


「うちの部屋にカンパリがあるの。本物のバーテンさんに作ってもらいたいんだ」


頭の中は家路の埼京線から京王線へと切り替わり、新宿駅に向かう足は相変わらずの人いきれの中で自然と早足になる。

コンビニに寄ってソーダ水とレモンを買って、由希の妹の好みまでは知らないけど適当にツマミを選んだ。ポテトチップにチョコレート、それにカシューナッツ、多分それで十分だろう。


由希には確か彼氏がいたはず、駅のホームの人だかりの中でコンビニ袋を片手に考えてみたことーー妹にはおれのことをなんて紹介するんだろう。そんなに悩んだところで友達……確かにトモダチには違いない。

ホームとホームの間から見える夜の空は、雲かスモッグか分からないけどいつもと変わらない。月も見えない。


今日は水曜日になったんだ、なんて考えてたらホームに電車が入ってきた。人と人とに押されて後はそれに任せるまま、波が止まったところで立ち止まる。すると二十歳くらいの女の子が角度を間違えたんだろう、満員の車内でおれと正面を向き合う姿勢になってしまった。


冗談……そのまま扉は閉まり電車はゆっくりと加速していく。正面の女の子は気まずそうに左を向く、鼻息が当たりそう、そう思ったからおれは右を向いた。胸元からは白いブラのヒモがのぞいてる。

今日はセックスはなし、自分で自分に言い聞かせようとしても、心臓は勝手に鼓動を早めてしまう。服越しに、ブラ越しに伝わらないかなんて考えすぎだろうけど肩は、女の子の肩は小さくて手のひらですっぽりと包めそうだ。

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