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零の境界  作者: 北條槐
第一章
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第一話 転生

主人公───シェイル・ラスティアの新たな人生がここに始まる。


……駄文ですけどそこのところは寛大な心で許してください。


 死神の手によって転生してから約一週間。この世界にはマナ(超自然力とも呼ばれる、目では見えない空気みたいなもの)というエネルギーが満ち溢れていて、世界中の人々全員が使えるわけではないが魔法を使うことができ、人以外にも、魔物やドラゴン、悪魔や天使等々、さまざまな生き物が存在している。まさにRPGなどでよく見るような世界だった。


 あー、それと俺は『ラスティア領』という領の領主、ヴァン・ラスティアとその妻、シェリー・ラスティアの息子でシェイル・ラスティアという名前らしい。光を反射しているような銀髪に、燃えるような赤眼、そして左目の下に泣きぼくろがあるのがチャームポイントといったところか。

 前世の時は普通に黒髪に黒目だったためかなり違和感がある。

 そして年齢。現在はまさかの十歳、…………そう、十歳だ。心のどこかでは元の17歳からか、生まれたてホヤホヤの赤ちゃんから始まるのでは? などと思ったりもしていたから、いろいろと予想を裏切られた感じだった。

 っと、それはさて置き一応十歳になるまでの記憶は前世の記憶と共に脳内にインプットされているし、何故かこの世界の言葉は日本語になっているから、今のところ大した問題はない。あったとすれば新たな家族の前でギクシャクしてしまわないように精神をすり減らしたことだろうか。今はもう慣れたけどな。それにしても人間の適応能力ってすごいと実感したのはいつぶりだろう。

「つっても……十歳ともなると手足が小さいから変な感じがするな」

 手をグーパーしたり、その場ジャンプや足踏みをしてみたりする。

「ま、折角貰った二度目の人生だ。……楽しまなきゃ損だよな」

 そういって上質な木製のドアを開けて家を出る。

「こんなRPGみたいな世界にいるんだし、やっぱり何かしたくなるな」

 俺は鼻歌を歌いながら、家の裏庭にある武器庫へと軽い足取りで向かう。

 そこは週に二回俺と親父が掃除をしているためあまり目立った埃などはなく、武器も綺麗に並べられている。

「えっと……たしかここらへんに…………お、あった。」

 選んだ武器は日本刀と形状がほとんど同じの真剣。週に三回ほど親父から剣の訓練を受けているし、前世では剣道初段(とはいっても中学のとき、途中でやめてしまったが)だったため、十歳の子供にしてはそれなりには腕に自信があるはず…………断言は出来ないけど。


 この領の周辺にはさほど強い魔物や動物がいない。そのため領の裏山までなら狩りに出てもよいと親父からの許可も得てある。とはいっても許可されている場所よりも遠くに行くと恐ろしいお仕置きが……。転生してからは受けたことがないが、インプットされていた記憶を思い出すだけでも冷や汗が頬を伝う。それほど恐ろしいお仕置きなんだよな……。


 裏庭から表へ戻ると、長男のルイス兄さんが何やら作業をしていた。背は結構高い方で、髪は母さんのものを受け継いだのか、栗のような茶色い長髪で、腰辺りまで伸びているその髪を先端で結わえている。目は俺と同じく赤色で、年齢は俺より五つ上ってところだ。

「うおっ、ビックリした……って、シェイルか。驚かさないでくれよ。その武器は……って、狩りにでも行くのか?」

 言葉の割にはさほどビックリした様子もなく、ルイス兄さんは俺に話しかけてきた。

「うん、まあそんなところかな」

 ルイス兄さんが何をしているのか少し覗いて見ると、足元には今の俺からみるとそれなりに大きめの鉄製の箱が置いてあった。それを使って何かの作業をしていたみたいだったが、恐らく親父の手伝いだろう。まだこの世界のそういう知識はないため、よく分からない。

「そっか。まぁ、怪我だけはしないようにしろよ。もし怪我でもしたら父さんや母さんが心配するからな」

「分かってるよ。っと、ごめん、作業の邪魔しちゃって」

「はは。ちょうど今から休もうとしてたところだし気にすんなって。行ってらっしゃい」

「うん、行ってくる」

 そう一瞥してから俺は領の出口へと向かった。


     ◆

     ◆

     ◆


 領から出て少し行ったところ、俺はラスティアの裏山へ続く森に着いた。そこは領の貿易に使われる木の実が成った木々がたくさん立ち並ぶ森で、微力ではあるものの魔物の気配が漂っている気がする。

 とりあえず裏山の麓を目指そうと思い、足を進める。


 そして森の入口から十分くらい歩いた頃に、


 バキッ……パキボキッ……


 木の枝が踏みつぶされて折れたような、そんな音が辺りに鳴り響いた。

 音のした方を振り返ってみると、そこにはいかにも何かがいそうな大きな茂みがたたずんでいた。

「……………………」

 俺はその場所から数歩後ずさり、ある程度距離をとると手頃なサイズの石を拾う。

「何もいないのが一番だけど、っと」

 

 びゅんっ!


 風を切る音とともにその石は茂みへと吸い込まれていき、バゴッという手応えのある音が聞こえてきた。

「グオオ……ォォォォォォォォッ!!」

 苦痛の鳴き声とともに現れたのは小熊型の黒い生物、魔物だった。

「マジか……っ。ほんとに出てきた」

 呟きながら俺は腰に掛けてある剣の柄に手を添え、できるだけ肩の力を抜く。

 熊の攻撃っていうと腕を振り回すとか突進とか噛み付きとか破壊力はあってもスピードがないとかそんな感じだろう。ということは狙いは後の先。あの魔物が俺を攻撃しようとした瞬間だ。

「グルルルルルル…………、グルオオォォォォ!!」

 咆哮をあげながら魔物は腕を振り上げて俺のいる場所へ駆けこんできた。……なんとも想像通りの攻撃パターン。

「ふッ!」

 その攻撃を紙一重で躱しながら、魔物の左腕をザシュっと斬り落とす。俺の腕がいいのか剣の斬れ味がいいのか、包丁で豆腐を斬っているかのように滑らかに斬れ、血が辺りにビチャッと飛び散る。

「グォ……オォォォ……!?」 

 魔物は悲鳴をあげるのも忘れ、突然なくなってしまった左腕を呆然と眺めている。

「よそ見なんてしてていいのか?」

 振り返りざま、魔物の背中にもう一太刀。

「グルオァっ!? ……グオオオオ!!」

 痛みによってようやく我を取り戻したのか、魔物はこちらに振り返り、残った右腕をまたもや振り上げる。……学習能力のない奴め。

「よっと」

 魔物の腕を振り降ろす攻撃を魔物の背を取るように紙一重で前転回避し、

「これで……終わりだっ!」

 後ろから魔物の首に向かって刀を一振りする。すると刀は魔物の頭部と胴体を鮮やかに斬り離す。切断面からはまるで噴水のように血が噴き出て辺り一面を赤黒く染める。魔物は断末魔をあげる間も無なく膝から崩れ落ち、動かなくなって黒い粒子となり消えた。


 説明し忘れていたが、魔物は生き物のようでそれとはまた別な存在なのだそうだ。

 親父がいうには高濃度のマナが動植物に悪影響を与え、別の物質へと変換してしまったのがまものだそうだ。そのせいか、殺してしまうと今みたいに死体が粒子となって消滅してしまう(何故か血は消えない)。それと、遭遇した事はないが魔法を使う個体や人型の魔物もいるらしい。

「はあ、はぁッ……ふぅ。初めてにしては上出来な方……か?」

 激しく動いたためか息が上がっている。親父に鍛えられた訓練の成果が今ここで証明されたわけだが、十歳にしては上出来過ぎるくらいだろう。


 腰にとりつけてあるポーチから布切れと、竹で出来た水筒を取り出し少しだけ喉に通す。

「んっ……んん…………ぷはぁ」

 飲み終えると布切れで刀に付着した魔物の血を拭き取り、水筒と一緒にポーチに戻した。

「よし、休憩はこれくらいにしてそろそろ行こうかな」

 なるべく戦いは避けて、とっとと頂上を目指しますか!


     ◆

     ◆

     ◆


「ここが頂上かぁ」

 道中少数ではあるものの、野生の動物や魔物と交戦したり、少ししか舗装されていない道を歩いてきたりしたからけっこう疲れたな。

「って、これは…………っ。苦労した甲斐があったな」

 そこは色とりどりの花が咲き乱れていて、なんつーか、俺の語彙力では伝えきることができないほどの絶景だった。あまりにも予想を超えた絶景だったため俺は思わず感嘆する。

 もっといい場所がないかどうか見渡してみると、ちょうど崖になっているところから下を見渡せそうだったのでそこへと歩を進める。

 と、その途中どこからか冷たい視線を感じた気がして思い切り振り返る。

「…………何もいない? 気にし過ぎか?」

 怪訝に思いながらも気を取り直して崖から山の下を見下ろして見る。

「! うわ、……すっげぇ綺麗だな」

 ラスティア領はここらじゃそれなりの大きさを誇る領だけあって、ここから見下ろしても結構大きい。

 そして領から伸びている川が、湖や海につながっていて大自然っていうものを実感するな。こんな景色、前世では絶対に見られなかっただろうな。

この場所なら、夜に来れば星がよく見えそうだな……なんて思ってもみないことを心の中で呟く。

「どうせRPGみたいな世界にいるんだ。やっぱり冒険とかしてみたいな。……そのためには明日からも特訓だ!!」

 誰にいうでもなく水平線を眺めながら俺は自分の胸に拳を当て、そして新たに決心を抱くのであった。


展開が早すぎるかもしれませんね……

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