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第一話 鳥神への婿入り

本作は明治~大正期風の世界観をベースにした、完全なフィクションです。

登場する地名・制度・神様などはすべて創作となります。

神様と人間の婚姻や上位存在といった設定も現実の宗教や民俗とは関係ありません。

なお本作は登場人物同士の関係を穏やかに書くことを主軸としており、過度なすれ違いや裏切りを主題とした展開はありません。


また、作中の動物(特に鶏)の描写はファンタジー寄りとなっています。

大きな争いや過度なざまぁ展開はなく、鳥神と人間のゆるやかな暮らしを描いた話です。

のんびりと楽しんでいただけたら幸いです。

鳳京(ほうきょう)では神様、上位存在と人間の婚姻。神婚(じんこん)が流行っている。

 鳳京駅から鉄道に乗って、着いた駅で朝羽村(あさはむら)の場所を改めて確認し駅を出る。

 夏になりたてのこの時期にここから朝羽村へ歩いていくには少し、骨が折れるよ山間の村だからと駅員さんは俺のことを不思議そうに見ながらそんなことを言っていた。

(まぁ、ここの景色は落ち着く)

 鳳京で過ごすのは、すごく疲れる。

 人の、色んなものが見えて。

 かちゃ、とずれ落ちそうな眼鏡をあげて、俺はどう朝羽村へ向かおうかと考えていると、遠くからゆっくりとたくさんの荷物を背負った牛を引く人が現れた。

 これだ!、俺はそう思い、牛を引いている男性に声を掛けた。

 男性は、快く足を止めて俺の話に耳を傾けて「俺も朝羽村で生活しているからついでに、あんちゃんを送っていくよ」

 返事二つで、朝羽村まで一緒に行くことになった。

「モーモー、荷物が増えるぞ!ほら、あんちゃん気を付けてあがれよ、しかしアンタ牛車なんて乗ったことないだろ」

「モーモーさん、お願いします、牛車は……。興味があって」

「さんって、モーモーにさんなんていいぞ、それにしても若いのにこういうのに興味があるのか!」

 カーッ嬉しいよ、さぁモーモー行くぞ!と男性の掛け声にモーモーさんのモォーという声が上がって、牛車はゆっくりと駅を離れ朝羽村を目指し始めた。


 カッポ……。カッポ……。モーモーさんの蹄の音しか聞こえない

 モーモーさんの飼い主さんは、駅前やこの下にある町で野菜を売って帰ってくる途中だったらしい。

「そういや、あんちゃんは朝羽村のどこにいくんだい?」飼い主さんは俺にそう聞く。

「……天尾家(あまおけ)です」「天尾家?あぁ!月ちゃんの家かい?」

 俺が口に出した、天尾家というワードに男性は一瞬考える素振りを見せたが、あぁとすぐに答えが分かったみたいだ。

「ってことは、あんちゃんが今度の月ちゃんの婿さんかぁ」

「……?」「ありゃ、聞いてないのか、天尾家は何回か婚約破棄に会っているんだ」

 今度こそ、月ちゃんが幸せになってくれたらいいなぁ、なぁモーモーよぉ

 と、男性はモーモーの首の後ろを掻く。

「知ってここに、来たんです」俺がそう呟く。

 山道に入った、木洩れ日に当たりながらゆっくりと上がっていく。

「こういう道を後、三回上がったら朝羽村に着く、天尾家に着いたら起こすから、あんちゃんは寝ててもいいんだぞ」

「いいえ、寝ていてこんなきれいな風景を見逃すのはもったいないですし」

 俺は、服の袖から、小さなメモ紙を出して風景の様子をメモしていった。


 男性のいう通り、牛車はゆっくりだが山道を三回上った。

 このまま左に行くと朝羽村、右に行くと|朝羽山(あさはやま)という山に行くらしい。

「おじさん、朝羽山には野鳥は居ますか?」「んん?野鳥……?渡り鳥は来ないが大体の野鳥は朝羽山に行けば見れるぞ」

 野鳥が見れることも分かった。

「若いのに、野鳥が好きなんて変わってるなぁもしかしてあんちゃんは……。」「農業にも興味が」「ありますよ」「即答!?」

 おじさんのこういった、質問にも答えながら牛車は左に曲がり、朝羽村を目指す。


 朝羽村と書かれた、木の看板が見えた。

 村に入ってから、おじさんとモーモーさんは労いの言葉がかけられていた。

 そして、荷台の荷物と一体化した俺に気づいた子供たちが。

「おじさん、男誘拐してきたらダメだぞ」やら、捕まえた虫を渡そうとしてきて大変だったが。

 月ちゃんの婿だと聞いた途端、「うおお、月ちゃんのお嫁さんなのか?」「月ちゃん、俺らよりガキだよ」と月ちゃんの話題に切り替えてきた。

その中で、ある子供が呟いた。

「でも、最近月ちゃんを見かけないから心配なの」と。

 牛車と並走しながら子供たちは続ける。

「月ちゃんのこと、元気にしてね」「兄ちゃんクワガタとカブトだとどっち好き?」とか

 答えてあげたかったけれど、おじさんが少しずつモーモーさんの速度を上げている気がした。


 牛車はある大きな屋敷の前に止まった。

「あんちゃん着いたぞ」「ありがとうございました。助かりました」

 俺は、少ない荷物を掴んで荷台から降りる。

 片手にしかない風呂敷の荷物を見て、おじさんが口を開く。

「婿入りにしては、荷物が少なくないか?」

 あとから、来るのか?

 と続けるが、俺は首を振る。

 でも、前向きに続ける。

「荷物が、少ない方が動きやすいし好きなんですよ」と笑うと、おじさんはそうかとうなずくと

「まぁ、気張れよ!あっ俺は三軒向こうに住んでるからな、なんかあったらまたよろしくな!」

 モーモー帰るぞ!と陽気に彼らは去っていった。


 彼らの背中を見送って、俺は屋敷を見上げる。

 表札には【天尾家】と書かれているからあっているのだろう。


 冠木門は閂がされておらず、「ごめんください」と声を掛けて入る。

 屋敷の戸を叩く。

「鳳京から来た、|白鳥蒼一(しらとり そういち)です。」

 それでも、返事が返ってこず心配し、そわそわし思わず、庭に足を踏み入れてしまった。

 屋敷は大きな庭が真ん中にあり、桜だろうか大きな木もある、そして

(鶏が)

(二羽、歩いている。)

 立派な鶏が庭を歩いていた。

 それを、見ていたのか。屋敷の中から声が聞こえた

「すみません、蒼一様」

 妙齢の女性が慌てて出てきた、俺は咄嗟に「いえ、こちらこそ勝手にお庭を覗いてしまって」と頭を下げる。

 ささ、中へと彼女の案内で玄関へ歩みを進める。

 革靴を脱いで、並べる。

 女性はこちらに向き直り、改めてと。

「こちらに住んでおられる、天尾 尾羽月(あまお おはづき)様の世話係をしております、八重(やえ)と申します」と深くお辞儀をするのに釣られて自分もお辞儀をする。

 バッと顔を上げると、八重さんはふふっと笑っていた。

「まぁ、蒼一様まで頭を下げなくてもいいのですよ」と笑う。

 屋敷の案内を、と思ったがその前にと八重さんは動き出そうとして動きを止める。

「案内の前に、どうしてもと尾羽月様から言われておりまして、今ここにお呼びしてもよろしいでしょうか」

 「大丈夫ですよ」俺が答えると、八重さんは小柄な体から大きな声で

「尾羽月様!いらっしゃいましたよ」と玄関の向こうへ呼びかけると。

 廊下から、どたどたという足音が聞こえたと思った瞬間。

 大きな野鳥のようなものが

「そ」

「う」

「い」

「ち」

「!」

 と俺の胸に突進してきた。

 俺は、受け止める準備が出来ておらず、そのまま野鳥のようなものの下敷きになったまま玄関に倒れた。

 胸の辺りで、小さな女の子?が興奮気味でふすふすと呼吸をしている。

「待っていたぞ!蒼一!」

 彼女は、大きな瞳を目いっぱい細めてうれしいと笑う。

 さわさわと足辺りに何かこそばゆい感触があるが

(尾羽かな……。)

 そう思いながら、俺は体を起こして。

「初めまして、天尾 尾羽月さん」と声を掛けると。

 彼女はキャーッと顔を手で覆いこう言った。

「家に来てくれた、それだけで好きだ」

「?」

 俺は何が起こっているのか分からなくなって、八重さんに助けを求めると。

 八重さんは、尾羽月さんを俺から引きはがすと。

「尾羽月様」

「嬉しくても、飛びついたらいけないですよ」と注意した。

(いや、そこじゃなくて)

 引きはがされた彼女は、ぶすーっとした顔つきになってしまった。

「ばあやはいつもこれだ!私が今日をどれだけ楽しみにしていたか知っていたはずだぞ!」

「でも、これで蒼一様がお怪我なさったら」「だ、ダメだ……。す、すまんな蒼一、た、たんこぶとかなんだ痛いところとかないか?」

 俺がケガしたら、の時点で彼女はまた俺にヒシっとくっつく。

 大きな白金の瞳が心配で満ちていた。

「俺は、大丈夫ですよ」「で、でも」「ほら、立てますし」そう言いながら立った瞬間。

 俺はまた玄関に倒れてしまった。

「そ、蒼一」「蒼一様!」

 二人の声を聴きながら俺の意識は遠のいた。

 

 

初の恋愛長編です。

ゆっくりのんびり日常和風ファンタジーですよろしくお願いします!

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