痴漢にスカッとアッパーカット
朝のラッシュアワーの電車は、いつものように人で溢れていた。
新人警察官の佐藤美咲、24歳。
制服ではなく私服で通勤中だった。
長い黒髪をポニーテールにまとめ、ジーンズにジャケットというラフな格好だが、腰にはしっかり警察手帳と手錠が入っている。
吊革につかまりながら、周囲を見回すのが癖になっていた。
警察官になってまだ半年。
困っている人を見過ごせない、優しい正義感の持ち主だ。
ふと、隣の車両から小さな悲鳴が聞こえた。
「や…やめて…」
若い女の子の声だ。
美咲は胸に強い正義感が湧き上がり、すぐに人垣をかき分けて移動した
そこには、制服姿の女子高生が、壁に押し付けられるようにして立っていた。
背後から手を伸ばす若い男。
20代半ばくらい、自分と同じくらいの年齢だ。
男の顔には、明らかに快楽に歪んだ表情が浮かんでいる。
女子高生の顔は真っ青で、唇を噛みしめて耐えている。
涙がこぼれそうだった。
(許せない…!)
「やめなさい!」
美咲は大声で叫び、男の腕を掴んだ。
男はびっくりした顔で振り返り、次の瞬間、電車が駅に着くと同時にドアが開いた。
男は女子高生を突き飛ばし、ホームに飛び降りて猛ダッシュで逃げ始めた。
「待ちなさい!」
美咲もすぐにホームに飛び降り、追跡を開始した。
私服でも訓練された足は速い。
ジーンズの裾を翻しながら、人混みを縫って走る。
男は駅を出て、路地裏に逃げ込んだ。
細い路地を曲がり、行き止まりの壁にぶつかったところでようやく追いつかれた。
「終わりよ。観念しなさい」
美咲が息を整えながら言うと、男は突然振り返り、ポケットからナイフを取り出した。
「うるせぇ!近づくなよ!」
刃物が朝日に光る。
美咲は一瞬身構えたが、怯まなかった。
(警察官として…いや、女として…絶対に許さない)
男が襲いかかってくる。ナイフを振り下ろす。
「痛っ!」
左腕をかすめられ、ジャケットが裂けた。
血が滲む。
でも、美咲は歯を食いしばった。
「頑張って…!」
後ろから聞こえた声。
なんと、さっきの女子高生が息を切らして追ってきてくれていた。
「危ないから下がって!」
「でも…!私も…絶対に許さない!」
その言葉が、美咲に力を与えた。
男が再びナイフを振り上げる。
今だ。
美咲は一歩踏み込み、ナイフを持った手をパンチで弾き飛ばした。
金属音が響き、ナイフが地面に落ちる。
「しまった…!」
男が焦った顔になる。
美咲は一気に距離を詰めた。
訓練通りの動きで、ボディにパンチ、続いて顔面へ。
「女子舐めんな!」
「ぐっ…!」
男がよろめく。
形勢逆転。
美咲のパンチが次々と炸裂する。
「ぎょぇぇぇ!」
「これが…痴漢した人の痛みよ!」
最後に、渾身のアッパーカット。
「あたしの本気を喰らいなさい!!」
「てぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」
美咲の拳が男の顎を完璧に捉え、身体が大きく浮き上がった。
地面に勢いよく叩きつけられると、男は苦しそうに体を丸めて呻き声を上げた。
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁ…!」
美咲はすぐに馬乗りになり、すかさず腕をねじり上げた。
がっちり取り押さえる。
男は口から泡を吹き、気を失った。
「逮捕よ!」
美咲は手錠を取り出し、カチャリと音を立ててかけた。
「男に生まれたことを後悔しなさい。二度と女に手を出すんじゃないわ」
男のプライドも、身体も、ボロボロだった。
意識を取り戻しかけた男は、ただ苦しげにうめくだけ。
その時、女子高生が駆け寄ってきた。
「あ、ありがとうございます…!本当に…助かりました…」
涙を浮かべながら頭を下げる。
美咲は優しく微笑んだ。
「私も強くなりたいんです。悪い男を…やっつけられるくらいに」
女子高生が恥ずかしそうに言った。
美咲はにっこり笑って、肩を叩いた。
「なれるよ!女は度胸よ。いざとなれば、男より強いんだから」
二人は顔を見合わせて、くすくすと笑った。
地面で手錠をかけられた男は、その会話を聞きながら、悔しそうに下を向いた。
朝の陽射しが、二人の笑顔を優しく照らしていた。




