第九話 神父様との約束
目を開けると、俺は教会の祭壇の部屋に戻ってきていた。
俺に気づいた神父様が慌てた様子で声を掛けてきた。
「使徒様! 大丈夫ですか?!」
どうやら神父様の話によると、俺が最高神様の像に祈りを捧げた途端、最高神様の像が光り出し、俺は気を失って倒れてしまったらしい。
それで、神父様はあんなに慌てていたのか。
「はい、大丈夫ですので、神父様も落ち着いてください」
「本当に大丈夫ですか?! お怪我などは?!」
その後、俺は懸命に神父様を宥めた。
その甲斐あって、何とか神父様は落ち着いてくれた。
「神託の儀も無事終わった事ですし、私はこれにて失礼させていただきます」
これ以上ここにいると、何か面倒ごとに巻き込まれそうだしな。
俺は早く最高神様に与えて貰った自転車でこの世界を旅したいんだ。
「使徒様、お待ちください!」
足早々と教会を後にしようとした俺を神父様が引き留めようとしてきた。
まずい、この後の展開は何となく予想できるぞ……
「使徒様には一度、この国の国王とお会いしていただきたいのですが」
あーやっぱりか……
使徒と言われた時から絶対お偉いさんと会う気がしてたんだよ……
それにしても、いきなりこの国の国王様かよ。
神の使徒が現れたってそんなにやばい事なのか?
まあ、ここは丁重にお断りさせていただこう。
「一国の国王に私のような者がお会いするなど恐れ多いです」
「あなた様は神の使徒なのですから、恐れ多いなど滅相もございません。神の使徒が現れたというのはこの国にとって一大事なのですから、すぐに国王に報告しなければなりません」
そうは言われてもな……
俺は別に神の使徒になりたい訳ではないし。
そもそも神の使徒って何をする人なんだ?
俺はただこの世界を自由に生きて、自転車で旅を出来ればそれでいいんだけどな。
どうしたものかな?
現時点で俺が最高神様の加護を授かっていると知っているのは、この神父様だけだ。
――そうだ、いい事を思いついた!
俺は神父様にある相談を持ちかけた。
「神父様にお願いがあるのですが――」
「何でしょうか?」
「私はずっと田舎の村で自給自足の生活をしており、村の事以外は何も知らずに生きてきました。ですが、先日この街にやってきて、もっとこの国の事をよく知りたいと思いました。なので少しの間、この国を旅して周らせて頂けないでしょうか? その後であれば国王様にお会い致しますので」
本当は国王に会いたくないけど、これで当分の間は自由に行動できる。
「という事は、その旅が終わられるまであなた様が神の使徒だという事を、私には黙っておいてほしいという事でしょうか?」
「そうして頂けると嬉しいのですが」
俺がそう言うと神父様は凄く困った顔をしていた。
「そうは言われてましても……」
それはそうだよな。
だって、初代国王以来の神の使徒が現れたというのに国に報告せず黙っておくと言う事は、下手したら重罪にもなりそうだしな。
とはいえ、俺の今後の為に今は取り敢えずお願いし続けるしかないな。
「どうかお願い致します!」
俺が何度も頭を下げてお願いすると、神父様は慌てて俺に声を掛けてきた。
「使徒様、頭を上げてください! ――かしこまりました、使徒様の言う通り旅の間は国に報告せず黙っておきます」
「ありがとうございます!」
やっぱり神父様は話せば分かる人だと思っていたよ。
今は思いつかないけど、神父様には何かしらの形でお礼しないといけないな。
「そもそも私のような一介の神父が使徒様のお願いを断る事など出来ません。ですが、旅が終わられた暁には必ず国王様にお会いして頂けるようお願い致します」
「もちろんです。あと、私に対しては普通に接して頂けると助かります。変に勘繰られてしまう可能性もありますので」
「分かりました。それと私からもお願いなのですが、使徒様の方でも最高神様の加護を授かっている事が周りに知られないようにお願い致します。特にステータス画面は加護の記載がされており、ごく稀に他人のステータス画面を見る事が出来る方がいらっしゃいますのでお気を付けください」
この世界にはステータス画面があるのか。
一応俺のイメージしているステータス画面かどうか確認しておくか。
「すいません、ステータス画面とは何でしょうか?」
「ステータス画面とは、自分の現在の能力値や所持スキルなどを確認する事が出来るもので、本人しか見ることが出来ません。基本的に神託の儀を終え、加護を授かった者ならば誰でも所持しているスキルになります」
ということは俺も使えるって事だよな。
後で確認してみよう。
「分かりました、ステータス画面については気を付けるように致します。それでは、私はこの後用事がありますので、そろそろ失礼させていただきます」
「すみません、最後にお名前を伺ってもよろしいでしょうか? 使徒様とは人前では呼べませんので」
そうだった、自己紹介がまだだったな。
「私はイブキと申します」
「イブキ様ですね、私はカミンライナ教会で神父をしております、ラミナスと申します」
「ラミナスさんですね。それではラミナスさん、色々ありがとうございました」
「イブキ様の旅が充実したものになる事を祈っております」
俺は神父様にお礼を伝え、教会を後にした。




