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第六話 神の使徒

 翌朝――

 部屋の窓から差し込む光で俺は目覚めた。

 うーん、気持ちがいい朝だな。

 やっぱりベッドで寝ると体の疲れがちゃんと取れる。

 さて、食堂に向かうとするか。

 昨日受付の人から聞いたのだが、この宿舎では朝食を無料で食べられるらしい。

 FランクとEランクの冒険者は稼ぎになる依頼を受けられず、まともに食事を取ることさえ難しいから、冒険者ギルドの宿舎では朝食を無料で提供するようにしているらしい。流石に昼食と夜食までは提供できないらしいが。

 それでも俺からしたら本当にありがたい。

 俺は食堂に行き、バイキング形式の朝食を食べお腹を満たした。

 

 その後、俺は部屋に戻り今日の予定を考えていた。

 そうだな、まずは教会に行かないといけないよな。

 職に就くためにも神託の儀を受けて、加護を授かり俺が何の職に向いているのか知らないといけないし。

 とはいえ教会の場所が分からないから、冒険者ギルドに行ってトレイシーさんに教会の場所を聞いてみよう。

 それが終わったら、街の服屋に行って昨日冒険者ギルドから貰ったお金で服を買おう。

 今の俺の服装は転移されたときの病衣姿のままで目立ってしょうがないしな。

 昨日冒険者ギルドでジロジロ見られていたのは、多分俺の服装のせいだろうし。

 そうと決まれば、まずは冒険者ギルドに向かおう。


 俺は宿舎を後にして、冒険者ギルドに行き受付に向かった。

 すると、俺に気づいたトレイシーさんが声を掛けてきてくれた。


「イブキ様、おはようございます。本日は如何されましたか?」


「トレイシーさん、おはようございます。今日はトレイシーさんに少しお聞きしたい事がありまして」


「私に聞きたいことですか?」


「はい、この街にある教会の場所を教えて頂けませんか?」


 トレイシーさんは困惑しながらも丁寧に教会の場所を教えてくれた。

 どうやら教会は冒険者ギルドからそんなに離れていない場所にあるみたいだ。


「それで何故、教会に行かれるのですか?」

 

 トレイシーさんはいい人だし、正直に言ってみるか。


「私は田舎の村出身でして、今まで自給自足の生活をしてきたので、実は神託の儀をまだ受けていないんです。私はもう20歳なので神託の儀の年齢を過ぎてしまっているのですが、教会に行き神託の儀を受けれるかどうか聞いてみると良いとエリシアさんに言われまして。それで一度教会に行ってみようかと思っているんです」


 トレイシーさんはエリシアさんに話した時同様、物凄く驚いた顔をしていた。

 そりゃ普通は15歳で受けるものなんだもんな。

 トレイシーさんは相当驚いたのか、その場で少し固まり慌てて俺に話しかけてきた。


「私は今年で21になるのですが、神託の儀を受けられていない人なんて始めて出会いました。田舎の村出身の方でも15歳の誕生日には街に来て、神託の儀を受けるのが一般的ですので」


 その後、トレイシーさんに色々聞かれたが上手く誤魔化しておいた。

 正直に「異世界から転移してきました」って言えれば楽なんだけど、誰も信じてくれないだろうし、不信感を募らせるだけだしな。


「そういえば、イブキ様にお伝えしておかないといけない事がありました」


「えっ? 何ですか?」


「昨日、イブキさんからエリシアさん宛に伝言を預かっておりましたが、ギルドマスターとの話を終えられたエリシアさんは早々に帰られてしまい、伝言をお伝えする事が出来ませんでした。ギルドマスターの話によれば、本日の夕方頃にはこの街を旅立たれるという事でしたので、もしかしたら夕方頃に城門に居ればエリシアさんにお会いできるかもしれません。せっかく伝言を預かっていたのに、本当に申し訳ありません」


 トレイシーさんは深々と頭を下げて謝罪をしてきた。


「いえいえ、元々エリシアさんには直接会ってお礼を伝えたかったので気にしないでください。それじゃ、私は教会の方に向かおうかと思います。トレイシーさん、色々教えてくれてありがとうございました」


「こちらこそ、またお待ちしております」


 俺は冒険者ギルドを後にして、教会に向かった。

 トレイシーさんのおかげで道に迷わずに教会に着くことができた。

 中に入ると受付の人が声を掛けてきた。


「本日は如何されましたか?」


「洗礼の儀を受けに来たのですが」


「では身分証の提示をお願い致します」

 

 身分証で年齢の事は確認されるだろうし、これは先に事情を伝えておいた方がよさそうだな。

 俺は受付の人に事情を説明した。


「すいません、神託の儀に関して確認したいことがあるのですが」


「何ですか?」


「私は今年で20歳になるのですが、15歳を過ぎた人でも神託の儀を受ける事は出来ますか?」


 受付の人は例の如く驚いた顔をしている。

 毎度毎度この反応をされすぎて、何か申し訳なくなってきた。


「すいません、私では判断できませんので神父様をお呼びしてきます。少々お待ちください」


 そう言うと、受付の人は別の部屋に消えて行った。

 程なくして受付の人が神父様らしき人と一緒に戻ってきた。


「お待たせしました。あなたが今回神託の儀を受けに来られた方ですね」

 

 神父様が俺に確認してきた。

 

「はい、そうです」


「既に15歳を過ぎられているという事で神託の儀を受けられるかどうかという話ですが、過去にそういう例が無いので可能性は低いですが、取り敢えず神託の儀を行ってみましょう」


「ありがとうございます!」


 良かった……この神父様が話の融通が聞くタイプで。

 俺は安堵の笑みをこぼした。

 その後、神父様に案内され祭壇の部屋についた。

 祭壇の部屋には少し大きい像があり、それを囲むように十二体の像が佇んでいた。

 像は窓から差し込んだ日の光によって、幻想的に光り輝いている。



「神託の儀を行うと、こちらの大きい像を取り囲んでいる十二体の神の像のどれかが光ります。それによってあなたが何神の加護を授かったか分かりますので、お見逃ししないようにお願いします」


 神父様から神託の儀についての説明を受ける。


「それでは神託の儀を始めますので、こちらへどうぞ」

 

 俺は大きい像の前で、前脚の膝を床につけるように座り、胸の前で手を組み、頭を低く下げた。


「この世界の神よ 願わくばこの者に少しばかりの加護を与え給え」


 神父がそう言った瞬間、俺の前の大きい像が強く光った。

 神父の方を見るとあり得ないぐらい驚いている。

 これは加護を授かれなかったパターンだな。

 だって十二体の神の像は光らず、俺の前のこの大きい像が光ったもんな。

 誰でも加護は一つは授かるってエリシアさん言ってたし、加護を授かれなかった人なんて今まで居なかったんだろう。

 まあ、俺はこの世界の住人じゃないし、少し残念だけど仕方ないな。

 

「神父様、私は加護を授かれなかったみたいですね。せっかく神託の儀をして頂いたのにすいま――」

 

 俺が謝罪の言葉を言おうとした時、神父様はその言葉を遮って声を発した。


「おー神の使徒よ、私はなんと幸せ者なのでしょうか」

 

 うん? 

 今神父様、俺の方を見て神の使徒って言わなかったか?

 

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