第三話 銀髪美女のエリシアさん
「大丈夫ですか?」
そう声をかけてくれた女性は正に絶世の美女という言葉が相応しい人物だった。
白い肌、桜色の唇、鮮やかな赤い瞳、腰まで届く透き通るような銀の髪。
甲冑を身に纏い、剣を携えているその姿はとても神秘的な雰囲気を醸し出している。
「あっ、はい! 助けて頂きありがとうございます!」
あまりの美しさに見惚れて、つい情けない声を出してしまう。
「お怪我が無いみたいで何よりです。それで何故、この様な場所にお一人でいらっしゃったのですか?」
「それは……えっと」
正直に、さっき地球から異世界転移してきました。
なんて言えないので、それっぽく誤魔化しておくか。
「事情により詳しくは話せないのですが、職に就くために街を目指して旅をしておりました。ですが、途中で道に迷ってしまいまして」
「そうでしたか。それにしてもワイバーンと出くわすとは災難でしたね」
なるほど、このドラゴンはワイバーンだったのか。
入院していた時によくネット小説を読んでいたから、ワイバーンは知っている。
てか、ワイバーンって結構強い魔物だったよな。
それを倒せるって、この人は一体?
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はエリシアと申します。あなたのお名前は?」
「私は想田絆妃と申します」
「ソウダイブキ? 珍しい名前ですね。もしかして、イカル王国の出身の方ですか?」
「いいえ、違いますが」
イカル王国?
全くどこか分からないけど、今はそういう事にしておこう。
「そうでしたか。私の知り合いにもイブキさんのような名前の方がいらっしゃいまして、その方もイカル王国の出身と言っていましたので、もしやと思ったのですが」
同じような名前って事は俺の元の世界の人って事だよな。
という事はその人も最高神様に転移して貰ったってことか?
うーん、色々気になるけど、今はこの件は後回しだな。
「それで、エリシアさんは何故こちらにいらっしゃったんですか?」
「私はバルジーク王国で冒険者をしておりまして、この辺りでワイバーンが出現したので討伐して欲しいと冒険者ギルドから直接依頼を頼まれまして、それでこの地に来ておりました」
エリシアさんは冒険者なんだな。
この世界ではこんな美人な人が冒険者をしているのか。
俺のいた世界だったら役者とかモデルとかで超人気者になっていただろうな。
「そうだったんですね。もしエリシアさんが来てくれてなかったら、私は確実に死んでました。改めて、窮地のところを助けて頂き、本当にありがとうございました」
「いえいえ、お気になさらず。それで、イブキさんは街を目指されているという事でしたが、カミンライナに行かれるんですか?」
カミンライナ?
そこがここから一番近い街なのかな?
まあ、取り敢えずそういう事にしておこう。
「そうです」
「それでしたら、カミンライナまでご一緒しませんか?」
「えっ、いいんですか?」
「はい。私もカミンライナにある冒険者ギルドにワイバーン討伐の報告をしないといけませんので。それに、ここで出会えたのも何かの縁だと思いますし」
「ではお言葉に甘えさせて頂きます」
「では、直ぐに出発致しましょう。ここからカミンライナまでは徒歩で1日はかかりますので、今日の夜は野宿をする事になるかと思います」
「野宿ですか?」
俺は少し困った顔をする。
だって、こんな美女と二人で夜を過ごすなんて……緊張で寝れる気がしないよ。
それに俺は食料も何もないし、空腹で明日まで身体の方が持つ気がしない。
「安心してください。夜は私が見張りをしておきますので、魔物に襲われる心配はありません」
エリシアさん、そういう事じゃないんです……
引き続き俺が困った顔をしていると、エリシアさんが何かを察した様な表情をした。
「あっ、食事の心配をされているんですね。そちらも安心してください、食事は私が用意致しますので」
俺にとってはありがたい話だけど、エリシアさん大きい荷物なんて持ってないよな。
強いて言うなら腰にぶら下げている小さいバッグぐらいだよな。
ということは……
俺はワイバーンの方に目を向けつつ、恐る恐るエリシアさんに聞いてみた。
「まさかこのワイバーンを食べるんですか?!」
「いえいえ、そうではありません。実はこれマジックバッグなんです。これに食料も飲み物も沢山入っておりますので、イブキさんの食事もご用意できます」
エリシアさんは腰にぶら下げていた小さいバッグを手に持ちながらそう言ってきた。
この世界にはマジックバッグもあるのか。
流石ファンタジーの世界だな。
「そうだったんですね。では、何から何までお願いする形になってすいませんが、よろしくお願いします」
「分かりました。ではカミンライナに向けて出発いたしましょうか」
そうして俺はエリシアさんと共にカミンライナを目指して歩き始めた。




