第二十二話 ハルネメン村に帰還
「イブキ凄いのだ! オーガを一刺しで倒すなんて!」
ウェルシュが声を上げながら俺に駆け寄ってきた。
俺本当にオーガを一人で倒しちゃったみたいだな……
あっ、そうだ!
リリアーナは大丈夫かな?
俺は急いでリリアーナのもとに駆け寄った。
「リリアーナ大丈夫か?」
「な、なんでイブキさんがこ、ここに……?」
リリアーナは怪我の影響か意識が朦朧としている。
「何でって、もちろんリリアーナを助けに来たに決まっているだろう」
「ま、また私は助けていただいたみたいですね……」
リリアーナはそう言うとその場に倒れてしまった。
「おい! リリアーナ!!」
まさか死んでしまったのか?!
俺がリリアーナの傍であたふたしているとウェルシュが声を掛けてきた。
「イブキ、落ち着くのだ。リリアーナはただ気絶しているだけなのだ」
はぁ……良かった……。
もしこのままリリアーナが目を覚まさなかったら、エリオットさんに合わせる顔がなかった。
多分、オーガがやられたのを見て、緊張の糸が切れて安心したんだろうな。
けど、怪我はしているみたいだから、急いで村に連れて帰ろう。
俺はリリアーナを背負い、森の中を全力で走って村に戻った。
――――
「すいません、誰かいますか?!」
村からは何の返事もない。
ハルネメン村の門は閉ざされたままだ。
多分、安全な所に避難しているんだろうな。
リリアーナの傷の手当をしないといけないし、これは今から他の村を見つけるしかないな。
ウェルシュに協力してもらって、上空から近くの村を見つけてもらおう。
そんな事を考えていると、やぐらから聞き覚えのある声が聞こえた。
「イブキさんか?」
村の明かりは全て消えているようで、俺の姿が良く見えていないようだ。
恐らくオーガに見つからないようにする為の対策なんだろう。
というか、何でエリオットさんは村に残っているんだろう?
「はい、そうです」
そう答えると、門が開き始めた。
そこにはエリオットさんの姿だけではなく、何と村人全員がいた。
えっ、何で皆避難してないんだ?
気になるけど、今はリリアーナの手当が先だな。
「イブキさん! それにリリアーナも……本当にリリアーナを連れて帰ってきてくれたのですね……」
エリオットさんが涙を流しながら、そう呟いた。
「連れて帰ると約束しましたからね。それより、リリアーナが怪我をしているので手当をしてもらってもいいですか? 今は気絶してますが、命に別条はありませんので安心してください」
「分かりました。ルース、リリアーナが怪我をしているみたいだから、手当をしてやってくれ! 怪我をしているみたいだが、命に別条はないそうだ!」
その後、リリアーナはルースさんによって手当をする家に運ばれていった。
これでリリアーナはもう大丈夫だな。
俺は気になっていた事をエリオットさんに聞いた。
「それで、なんで皆さん避難されていないんですか?」
「実は……」
そう言うと、エリオットさんは俺が村を出て行った後に何があったのか説明してくれた。
俺がリリアーナを助けに村を出て行った後、エリオットさんとルースさんは村人に避難するように声を掛けて回ったそうだ。
だけど、俺がリリアーナを一人で助けに行ったと言う事を知ると「イブキさんが一人で助けに行かれたのに私達だけ避難するなんて事は出来ない!」と村人全員が避難する事を拒否したそうだ。
最初はエリオットさんとルースさんも避難するように説得したそうだが、村人全員の意志が固く途中で「これは無理だ」と判断して、村人全員で俺とリリアーナの帰りを待っていたそうだ。
本当にこの村の人達はいい人ばかりだな。
俺はエリオットさんの話を聞いて、胸が熱くなった。
「なるほど、そんな事があったんですね」
「それでオーガはどうなりましたか?」
そうか、リリアーナの事に集中しすぎて、オーガを倒したこと言ってなかったな。
「安全してください、オーガは倒しました。これでハルネメン村はオーガの恐怖に脅える必要はありません」
それを聞いたエリオットさんは涙を流しながら俺の手を握り、頭を下げて感謝を伝えてきた。
その後、しばらくエリオットさんは俺の手を離さず、感謝し続けてきた。
「それでは明日はオーガ討伐を祝して、宴を開きましょう! 勿論、イブキさんも参加してくださいね!」
宴か、正直明日の朝にはハルネメン村を出ていこうと思っていたけど……
まあ、特に予定がある訳ではないし、ゆっくりしていくか。
「分かりました。では、お言葉に甘えさせていただきます」
そう言うと、エリオットさんはオーガ討伐の事と宴の事を皆に話にいくと言って、どこかに行ってしまった。
エリオットさん本当に嬉しそうだな。
その後、俺はリリアーナの家に戻り身体の疲れを癒した。
◇ ◇ ◇
翌朝――
俺はウェルシュに叩き起こされた。
「いつまで寝てるのだ! お腹が減ったのだ!」
どうやら部屋の窓から外を見た感じ、お昼過ぎっぽいな。
あっ!
昨日、エリオットさんからお昼に広場で宴をやるって言われていたんだった!
急いで広場に向かわないといけないけど……ウェルシュの食事をどうするか。
ウェルシュは俺の出すパンを美味しくないからもう食べたくないっていうんだよな。
宴には多分美味しい料理が用意されているんだろうけど、かといって宴にウェルシュを連れていくわけにはいかないしな。
けど、今回ウェルシュの協力がなかったらリリアーナは助けられなかったしな……
うーん……
取り敢えず、エリオットさんにウェルシュの事を話して、宴に参加させてもらえないか聞いてみるか。
「ウェルシュ、実はこの後広場で宴をやるんだけど参加したいか?」
「宴とは何をするのだ?」
「料理を食べたり酒を飲んだりしながら、色んな話をして楽しむものだぞ」
「料理があるのか?!」
やっぱりそこに食いつくんだな。
本当にウェルシュは食の事になったら目がないんだから……
結局ウェルシュは宴に行く気満々になったので、一緒に広場に向かった。
広場に向かうと既に村人全員が集まっていた。
まずい……これは待たせっちゃってるみたいだな。
「遅れてすいません!」
「イブキさん! いえいえ、お気になさらず。集まったのは少し前ですので」
俺に気付き声を掛けてきたのはリリアーナだった。
手や腕に手当の跡があるけど、すっかり元気になったみたいだな。
「良かった、元気になったみたいだな」
「これも全てイブキさんのお陰です! 今宴の準備で少し忙しいので、また宴が始まったら改めてお礼を言わせてください!」
そう言うと、リリアーナは広場の近くにある家の方に向かって走って行った。
まだ体調が万全じゃないだろうに、よく働いて本当に偉いな。
そうだ、エリオットさんにウェルシュの事を話さないとな。
その後、エリオットさんを見つけて、ウェルシュの事を話すとあっさり宴の参加を了承してくれた。
どうやら俺の仲間なら大丈夫という話だった。
別に仲間ではないんだけどな……ただ勝手について来ているだけだし。
まあいいか。
これでウェルシュも参加できるしな。
宴の準備が終わり、各々飲み物を手に持ちエリオットさんの挨拶が始まった。
「それでは皆。この数か月、オーガのせいで村人が死んだり、村から人が出ていったりして本当に辛かったと思う。だけど、もうそんな辛い思いはしなくていいんだ。昨日イブキさんがオーガを倒してくださったから。本当にイブキさんありがとうございました!」
エリオットさんが俺の方を見ると、村人全員も俺の方を見て頭を下げて感謝し始めた。
なんか照れくさいな。
「今日は豪華な料理と沢山の酒を用意したから、思う存分楽しんでくれ! それでは、村に安泰が戻った事を祝して乾杯!!」
「乾杯!!」




