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第二十話 リリアーナの過去

「リリアーナ!! イブキさん!!」


 俺は窓の外から聞こえる大きな声で目を覚ました。

 この声は確か……エリオットさんの声だよな。

 こんな夜遅くにどうしたんだろう?

 俺は窓を開けて、エリオットさんに声を掛けた。


「どうかしましたか?」


「あーイブキさん! 急いで逃げてください!! 村のすぐ近くにオーガが現れました!」

 

 エリオットさんは慌てている様子だ。

 オーガっていえば、ネット小説とかでも出て来る結構強いやつだよな……

 ここはエリオットさんの言う通り早く逃げるとするか。


「分かりました」


「それでリリアーナがどこにいるかご存知ですか? さっきから呼んでいるんですけど、返事がなくて……」


 うん? 

 一階で寝ているのか?


「ちょっと家の中を確認してみます」

 

 俺は急いで家中を隈なく探したが、リリアーナはどこにもいなかった。

 俺は家の外に出て、エリオットさんのところに向かった。


「家にはいないようですね」


「そうですか……妙だな、この時間に出掛けるなんて事はあり得ないし……あっ! まさか!!」

 

 エリオットさんが少し考えた様子の後、何かを思い出したような表情をした。


「どうかしましたか?」


「もしかしたら、リリアーナはオーガの所に向かったかもしれません……」


「なんでそんな危険な事を?」


「実はリリアーナは最近祖母をオーガに殺されているんです。元々リリアーナは幼い頃に両親を無くしていて、祖母とずっと2人で暮らして来たんです。そんな祖母が亡くなったと知った時はもの凄く悲しんで泣いていました。けど、泣き止んだ後は「絶対にオーガを許さない!」と言って、村を出て行こうとしたんです。私たちは必死にリリアーナを説得して、その時は何とか引き止める事が出来ました。けど、さっきオーガが現れたというのを聞いて、居ても立っても居られず、仇を討ちに行ったのかもしれません……」


 なるほど……リリアーナにはそんな事情があったのか。

 元々幼い頃に両親を無くしていたんだな。

 じゃあ、テーブルの傍の椅子が2つだったのはリリアーナと祖母のものだったのか。


「オーガは最近この村に現れるようになったんですか?」


「そうですね、3か月ほど前に初めて村に現れてからは村の近くの森に住み着いてしまったようで……それから、何度か村に現れては村人を殺しています。そのせいで、若いものが全員他の村に避難してしまって、元々100人近くいた村人も今では20人程の年寄りだけになってしまいました」


 確かに出迎えしてもらった時、全員年寄りばかりで子供はおろか、若い人が一人もいなかったな。

 そんな事を考えていると、遠くの方から誰かが声をあげながら走ってきた。


「エリオット!!」


「どうした、ルース?」


 ルースさんはやぐらでエリオットさんと交代交代で見張りをしている方だ。

 どうしたんだろう、凄く慌てた様子だな。

 これはまさか――

 

「大変だ! さっきやぐらで見張りをしていたら、リリアーナがオーガの方に向かって走って行くのを見た!」


 やっぱりそうか。

 エリオットさんが言ってた事が当たってしまったな。

 

「やっぱりか……」

 

 エリオットさんは少し悩んだ様子を見せた後、ルースさんに声を掛けた。


「ルース! 急いで村で動ける男性を集めてくれ! リリアーナを助けにいくぞ!」


 動ける男性って言っても若い人はいないんだろう。

 それじゃあ、オーガの所に辿り着いても無駄死にするだけだ。

 この村にはお世話になったし、リリアーナの事は色々事情を聞いてしまった以上ほっとけないし……

 ここは腹を括るか。

 俺は走って行こうとするルースさんに声を掛けた。


「ルースさん、待ってください!」


「うん? どうされましたか?」


「ルースさんとエリオットさんにお願いがあります。私が今から一人でリリアーナを助けに行きますので、急いで村の方を全員安全な所に避難させてくれませんか?」


「いえいえ、イブキさんは客人なのですからそんな事はさせられません!!」


 エリオットさんが必死に俺を止めようとしてきた。

 本当にこの人たちはいい人だな。

 この人達には絶対に死んでほしくない。


「いえ、大丈夫です! 私は冒険者をしていて、一度オーガを討伐しているので安心してください。それに今回は討伐するのが目的ではなく、リリアーナを連れ帰るのが目的ですので」


 本当は戦った事はおろか見た事すらないんだけどね。 

 まあ、最悪ウェルシュにも手伝ってもらおう。

 その為にも、今は急いで村人には避難してもらわないと困る。


「正直、私達ではオーガに見つかれば一瞬にして殺されてしまうでしょうし、森を走れる程の体力もありません。客人のイブキさんにこんなお願いをするのは本当に虫のいい話だとは重々承知の上なのですが、どうかリリアーナの事を助けてあげてください!」


「もちろんです、必ず無事に連れて帰ります!」


「どうかお願い致します! それでは私たちは村人を安全な所に避難させてきます」


 そう言うと、エリオットさんとルースさんは走り去っていった。

 それじゃ、急いでオーガのところに向かうとするか。

 その前にウェルシュを呼びに行かないとな。

 2階の部屋に戻ると、ウェルシュはまだ爆睡していた。

 外があんなにうるさいのによくそんなぐっすり寝れるな。

 取り敢えず、早く起こそう。

 

「ウェルシュ、起きてくれ!」


「うーん、どうかしたか?」


 ウェルシュはまだ眠そうな表情をしている。


「リリアーナがどうやら魔物に襲われて危険な目に遭っているみたいなんだ。だから、俺たちで助けにいくぞ」


「分かったのだ! リリアーナは美味しい食事を作ってくれたからな!」


 ウェルシュの助けるかどうかの基準は美味しい食事を作れるかどうかなのかよ……

 まあ、ついてきてくれるならどうでもいいか。

 俺たちは村を出てオーガが目撃された方向に走って向かった。

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