第十九話 ハルネメン村
「イブキさんはとてもお強いんですね! さっきのゴブリンを一瞬にして倒した時は本当に驚きました!」
リリアーナが目を輝かせながら、俺に言ってきた。
俺もなんであんなに戦えたのか分かってないんだけどね。
「確かに、イブキの剣術は見事なものだったのだ! まあ、私よりは弱いがな!」
ウェルシュから見ても俺の戦いはそう見えたのか。
てか、また自分と比べてるし……
これは早めに最高神様に会いに行って、なんでこんなに戦えるのか確認しないといけないな。
「ありがとうな。それで、リリアーナの住んでいる村はどんな村なんだ?」
「私の住んでいる村はハルネメン村と言って、20人ぐらいが住んでいる小さな所です。規模は小さいですけど、皆仲が良く楽しく暮らしています! きっとイブキさんとウェルシュさんの事も歓迎してくれますよ!」
「それは楽しみだな」
リリアーナに案内され、30分程歩き続けるとようやく村に着いた。
辺りを見渡すとすっかり日が落ちて、周りが暗くなっている。
それにしても、最近自転車ばっかり乗っていたから、歩くと結構時間がかかるな。
そんな事を思っていると、リリアーナが声を掛けてきた。
「見えてきました! あれが私の住んでいるハルネメン村です!」
ハルネメン村は木製の策で囲まれており、入り口には見張り用のやぐらが建っているみたいだ。
入り口に近づくと、思ったよりも柵が高くて、外からは村の中が見えないようになっている。
そして、入り口には頑丈そうな門が設置されている。
「おーリリアーナ! 随分遅かったな!」
声を掛けてきたのはやぐらにいた中年の男性だった。
リリアーナのお父さんかな?
「エリオットさん! ごめんなさい、ちょっとゴブリンに襲われそうになっちゃって」
どうやらお父さんじゃないみたいだな。
「だ、大丈夫なのか?! け、怪我は?!」
エリオットさんの慌てた様子を見るに、リリアーナの事をもの凄く心配しているようだ。
まるでリリアーナが自分の子供のように。
「大丈夫、怪我もしてない!」
「そうか、それは良かった……それで、そちらの方は?」
「イブキさんよ! 私がゴブリンに襲われそうになった所を助けてくれたの! だから、お礼がしたくて村に連れてきたの!」
「そうだったのか。イブキさん、今日はリリアーナが危険な目に遭っている所を助けてくださり、本当にありがとうございました! ここは何もない所ですけど、どうぞゆっくりしていってください!」
本当にリリアーナの事を大事に思ってるんだな。
「すいません、ありがとうございます」
エリオットさんから少し待っててくれと言われ、村の外で待っていると、村の頑丈そうな門が開いた。
「ようこそ、ハルネメン村へ!」
すると、そこには恐らく村人全員が立っていて、俺を出迎えてくれた。
リリアーナが言っていた通り、この村は全員良い人だな。
いきなりやって来た俺でもこんな盛大に歓迎してくれるんだから。
「こんな盛大に出迎えて下さり、ありがとうございます!」
こんな沢山の人に出迎えてもらった事がなかったから、なんか嬉しいな。
その後、村人全員から「リリアーナを助けてくれてありがとう!」という言葉を掛けてもらった。
そして、リリアーナにも「おかえり」って村人全員が言っていた。
リリアーナは村人全員から愛されて、可愛がられているんだな。
少し羨ましい気分だよ。
村人に歓迎された後は、リリアーナの家に向かうことになった。
「ここが私の住んでいる家です!」
リリアーナの家は木で出来ている2階建ての大きい家だった。
ここは他の家とも少し離れているし、丁度今は人もいなさそうだから大きな声を出してもいいな。
「ウェルシュ! 降りてきていいぞ」
すると、すぐにウェルシュが上空から降りてきた。
「やっとか、ずっと飛んでて疲れたのだ。早く食事にするのだ!」
ウェルシュには村の人に見られないよう、上空で飛んでおいてくれるようにお願いしていた。
もし、見られてしまうと驚いて騒ぎになってしまうからな。
リリアーナによると、ドラゴンを見る機会なんて早々ないという話だったし。
それに人族はドラゴンに対して、あまりいい印象を持っていないそうだし。
「どうぞ、家の中にお入りください!」
リリアーナに案内され家の中に入ると、中は5人ぐらいは余裕で暮らせるほど広かった。
外から見ても大きかったけど、中に入るともっと広く感じるな。
だけど、不思議な事に家の中からは何も音が聞こえない。
丁度、家族は外出しているのかな。
いきなり家にお邪魔している訳だし、ちゃんと挨拶をしておかないと失礼だから、リリアーナに聞いておこう。
「家の中に誰もいないみたいだが、リリアーナの家族は外出中なのか?」
「あっ、は、はい。家族は親戚の家に泊まりに行ってるんです。私は用事があったので、お留守番をしてます」
うーん、なんか怪しいな。
「ちなみにリリアーナは何人家族なんだ?」
「私は父と母と祖母との4人で暮らしています」
やっぱり怪しいな。
さっきの戸惑っている感じもそうだし、何より家の中を見ていて4人家族が暮らしているって感じがしないんだよな。
食器も少ないし、テーブルの傍にある椅子が2人分しかない。
正直、誰が見ても違和感を覚えるレベルだ。
それなのにリリアーナはなんで家族の事を正直に言わないんだろうな。
まあ、俺は明日にはこの村を出ていく予定だから特に気にしなくてもいいか。
「それじゃあ、夕食を用意しますので、こちらの部屋でゆっくりしていてください!」
俺はリリアーナに案内され、2階の部屋に入り、ベッドでゆっくりくつろいだ。
少し時間が経った後、リリアーナが部屋にやってきた。
どうやら食事ができたみたいだ。
1階に降りると、テーブルの上にリリアーナの作ってくれた夕食が並べられていた。
おーこれは美味しそうだな!
実際、リリアーナの作ってくれた料理はどれも美味しかった。
ウェルシュもバクバク食べていて、気づいたらテーブルの上の料理が直ぐに全部なくなった。
「リリアーナ、ご馳走してくれてありがとう。本当に美味しかったよ」
「そうですか! お口に合ったみたいで良かったです!」
リリアーナにお礼を伝えた後は、2階の部屋に戻りゆっくり休んだ。
ちなみにウェルシュは部屋に戻って速攻爆睡していた。
まったく、マイペースなやつだな。
今日は初めて魔法を使ったり、馬車のおじさんやリリアーナと出会ったりと色々あったな。
こういう出会いをできるのも旅の醍醐味だよな。
俺はそんな事を思いながら、ベッドの上で眠りについた。




