第十六話 自転車がレベルアップ
「それでウェルシュは飛んでついてくるつもりなのか?」
「いや、私はここに座らせてもらうのだ!」
そう言うと、ウェルシュは自転車のハンドルの真ん中部分に座り始めた。
いや、そこは座る場所じゃないんだけど……
「イブキ、さあ自転車を乗り進めるのだ!」
まったく、調子が狂うな……
てか、勝手に仕切るんじゃないよ。
「……はい、はい」
これは今後、色々振り回されて大変になりそうだな……
そんな事を思いながら、自転車を漕ぎ始めた。
「おーこれはいいのだ! 風が気持ちいいのだ!」
ウェルシュが嬉しそうに呟いた。
確かに自転車で感じる風って凄く気持ちいよな。
にしても、ウェルシュがハンドルに座っているおかげで操縦がしずらいな。
あと、前方が確認しずらい……
これ前の世界だったら、絶対警察のお世話になってるよ。
そんな事を思いつつ、俺はひたすら自転車を漕ぎ進めた。
そして気付けば、日が落ちて辺りが暗くなっていたので、安全そうな場所で野営をする事にした。
「ウェルシュ、今日はここで野営をするぞ」
「はあ、疲れたのだ……」
ウェルシュは自転車のハンドルに座っていただけで何もしてないだろう。
俺は少しむかついたから、ウェルシュにあるお願いをした。
「ウェルシュ、薪を近くの森から拾ってきてくれないか?」
「えーー」
「無理なら大丈夫、俺が行ってくるから」
「私に無理な事なんてないのだ!」
そう言うと、ウェルシュは勢い良く飛んで森の中に入っていった。
ウェルシュは本当に単純で分かりやすいな。
だけど、そこが可愛いんだよね。
ウェルシュを見ていると、たまに病院にお見舞いに来てくれていた親戚の子供を思い出すな。
お見舞いに来る時に良くゲーム機を持って来ていて、病室でゲームをしてたんだけど、俺が「ここでゲームをやっちゃだめだよ。今すぐゲームを辞めたらこのお菓子をあげるぞ」って言うとすぐにゲームを止めて「お菓子ちょうだい!」って言ってきてたな。
そんな事を思い出していると、ウェルシュが森から薪を持って帰ってきた。
ウェルシュにお礼を伝えて薪を受け取り、その薪に魔道具で火をつけようとした。
すると、ウェルシュが魔道具を見て気になったのか声を掛けてきた。
「それはなんなのだ?」
「これは火をつける魔道具だぞ」
俺がそう言うと、ウェルシュは首を傾げ始めた。
「何でそんなものを使うのだ? こうすればよいではないか」
すると、ウェルシュは口から炎を出し始め、あっという間に薪に火をつけた。
「おーこれが魔法か! ウェルシュは魔法が使えるんだな」
この世界で初めて魔法を見たな。
それにしても、やっぱり魔法はカッコイイし、ロマンがあるよな。
「私は四神竜なのだぞ、魔法が使えて当たり前なのだ!」
ウェルシュは少し怒った様子で俺にそう言ってきた。
いずれ魔法については色々調べようと思っていたんだけど、ウェルシュは四神竜だし、魔法についても相当詳しそうだから、この際色々聞いてみるか。
「俺は魔法についての知識が皆無に等しいんだ。だから、魔法について色々俺に教えてくれないか? 四神竜のウェルシュなら魔法についてしらないことなんてないだろう!」
「仕方ないのだ! 私がイブキに魔法について教えてやるのだ!」
やっぱり単純で分かりやすいな。
その後、ウェルシュは饒舌にこの世界の魔法について語り始めた。
纏めるとこんな感じかな。
・この世界の基本魔法は4属性であり、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法。
これに加えて特殊魔法の光魔法と闇魔法がある。
・魔法にはレベルがあり、レベルが高いと高度な魔法が使えるようになる。
・基本的に生まれた時に自分の魔法適正は決まる。
だが、稀に後天的に使える魔法属性が増える人もいる。
・魔法を発動させるためには詠唱をする必要がある。
ただ魔法の熟練者になると、無詠唱で魔法を使えるようになる。
魔法の基本はこんな感じだった。
なるほどな、そういえば俺の魔法適正は何なんだろうな?
もう一回ステータスを確認してみるか。
『ステータスオープン』
【 名前 】 ソウダ・イブキ
【 性別 】 男性
【 年齢 】 20
【 種族 】 人族
【 職業 】 異世界からの転移者
【 レベル 】 1
【 体力 】 350
【 魔力 】 25000
【 加護 】 最高神の加護
【 魔法 】 火魔法Lv1
【 スキル 】『自転車』『ステータス』
うん? 『魔法』の欄に火魔法Lv1って書かれてあるぞ!
初めてステータスを見た時は書かれてなかったよな?
どうやって追加されたんだろう。
てか、これで俺は火魔法が使えるようになったのか?
まあ、明日色々確認してみるか。
その後もステータスを見ていると……
スキルの『自転車』の所に1という数字が表示されているな。
これ自転車の名前を決めた時にも書かれてたやつだよな。
取り敢えず、自転車のステータスを見てみるか。
【 名前 】 ソシウス
【 概要 】 想田絆妃が最高神より与えてもらった自転車
【 レベル 】 2
【走行距離】 20km
【 機能 】 機能追加あり
おーレベルが上がってる!
それに『機能』の欄に機能追加ありって書いてあるな。
これ最高神様が言っていたやつだよな!
取り敢えず『機能』の欄を押してみる。
すると、新しいウィンドウが出てきてこう書かれている。
レベルが上がりましたので、下記どちらかの追加したい機能を選択してください。
1.偽装Lv1 自転車を他のものに偽装する事ができる
2.変身Lv1 マウンテンバイクに変化する事が出来る
これは迷うな……
自転車に乗っている時にすれ違う人の事を考えると偽装も欲しい機能だし、この世界は道が舗装されてなくて、走りずらいからマウンテンバイクに変化出来る変身も欲しい機能だな。
うーん……
けど現状を考えると、偽装の方が必要だな。
毎回人とすれ違う時に自転車をしまうのがすごくめんどくさいからな。
俺は偽装Lv1の方を選択した。
すると、『機能』の欄に偽装Lv1が追加された。
【 名前 】 ソシウス
【 概要 】 想田絆妃が最高神より与えてもらった自転車
【 レベル 】 2
【走行距離】 10km
【 機能 】 偽装Lv1
明日偽装がちゃんと機能するのかどうか確認してみよう。
その後、ウェルシュがお腹が減ったと言ったので夕食をとった。
夕食を食べて少しすると、ウェルシュはお腹を上に向けて爆睡していた。
はあ、まったく……
俺はそんなウェルシュを微笑みがら見て、眠りについた。




