第十五話 小さなドラゴンとの出会い
「痛えっ!」
な、何なんだ?
見た目的に小さかったけど、多分ドラゴンだっだよな?
「おい、そこのお前! その乗り物はなんなのだ?」
うん? 今声が聞こえたよな?
周りを見渡してみるが、人は誰もいない。
…………ということは?
「おい、お前話を聞いているのか!」
声のする方に目を向けると、空中で翼をパタパタさせて飛んでいるさっきの小さなドラゴンがいた。
「うわっッ!」
やっぱりこの小さなドラゴンがしゃべっていたのか!
てか、ドラゴンってしゃべるのか?!
それにしても、随分と偉そうなドラゴンだな……
「どうしたんだ?」
俺は小さい子に話しかけるぐらいの優しい声で小さなドラゴンに聞いた。
すると、怒った様子で小さなドラゴンが食い気味に答えてきた。
「だから、その乗り物はなんなのだ?!」
小さなドラゴンはどこか一点を見つめている。
そこに目を向けると……
「あー自転車の事かい?」
多分初めてみたから、物珍しさで興味が湧いたのかな。
見た目もまだ子供のドラゴンっぽそうだし。
「これは自転車というのか! 私は2000年以上この世界で生きてきたが、こんなものは初めて見たぞ!」
小さなドラゴンは自転車の周りをクルクル飛び回りながらそう言った。
うん? 今、2000年って言ったか?
じゃあ、この小さなドラゴン……子供じゃなかったの?!
俺は驚きすぎて、その場で尻餅をついた。
「おい、大丈夫か? 何をそんなに驚いているんだ?」
いやいや、この小さなドラゴンが2000年も生きてるって絶対噓だろう。
だって、この小さなドラゴン全然強そうに見えないんだもん。
少なくともこの世界に転移して、初日に出会ったワイバーンの方が強そうだし。
「君は子供のドラゴンだよね? 本当に2000年も生きているの?」
「私は子供のドラゴンなんかじゃないぞ! 今はお前と話すために小さな姿になっているだけなのだ!」
小さなドラゴンは怒った様子で俺に説明してきた。
そうは言われても、見た目は子供のドラゴンだもんな。
それに今怒っている姿を見ても、子供そのものじゃないか。
俺が信じてなさそうな表情をしていると、小さなドラゴンはもっと怒り出した。
「分かったぞ! 信じてくれないのならば……この姿だったらどうだ!」
すると、小さなドラゴンはどんどん大きくなり出して、あっという間に顔を見上げる大きさになった。
神聖なオーラを纏っており、只者ではない感じがプンプン伝わってくる。
本当に子供のドラゴンじゃなかったんだ……
俺は口を開けてポカーンとしていたが、すぐにある事に気づき冷静さを取り戻した。
今このドラゴンを誰かに見られたら、確実に騒ぎになる。
そうなると、近くにいた俺は色々聞かれることになって、旅どころの話じゃなくなってしまう。
これは急いで元の姿に戻ってもらわないと、まずいぞ!
「君が子供のドラゴンじゃないって分かった! だから……頼むからさっきの小さい姿に戻ってくれ!」
すると、大きかったドラゴンがみるみる小さくなっていき、さっきのサイズまで戻った。
……良かった。大きくなっていた時間も長くないし、多分誰にも見られてないだろう。
俺はホッとして、フーと安心のため息をついた。
「ハハハ、ようやく私が子供のドラゴンじゃないと分かったか!」
小さいドラゴンは相変わらず偉そうにしている。
「分かったってば……それで君は一体何者なんだい? 2000年も生きてて、自由自在に大きさを変えれるドラゴンなんてそうそういないだろう?」
「私の正体か。そんなに知りたければ教えてやるのだ! 私はこの大陸の四神竜のうちの一角――赤竜のウェルシュなのだ!」
「……四神竜?」
「お前、四神竜を知らないのか?! 私達四神竜はこのエバテラン大陸を守護する4匹のドラゴンなのだぞ! ちなみに私はこのバルジーク王国で守り神としても崇められておるのだ! 凄いだろう!」
えーーーー!
大陸を守護するドラゴンで、この国の守り神って……めっちゃ凄いじゃん!
まずい、俺結構馴れ馴れしい態度とってたよな……
これは、何か言われる前に今までの事を謝罪しておいた方が良さそうだな。
「それは失礼致しました!! そんな偉いお方に私なんかが生意気な口を聞いてしまって……」
「よいのだ! 私は興味を持った人間には心を許すようにしているからな! だから、さっきまでの話し方でよいぞ!」
とはいわれても、四神竜なんて言われた後だとそうはいかないよ……
けど、このドラゴンは本気で怒らせたらまずいと何となく直感で分かる。
さっきの巨大になった姿も見てるし…
仕方ない、ここは言うとおりにしよう。
「分かったよ。それじゃ、改めて自己紹介をしておこう。俺はこのバルジーク王国で旅をして回っているイブキだ、よろしく!」
「私は、赤竜のウェルシュなのだ! よろしく頼むぞ、イブキ」
「それでウェルシュは何でそんなに自転車に興味を持っていたんだ?」
「何故って、自分の知らないものを見たら誰でも興味を持って、それが何なのか気になるものだろう!」
「……そ、そうだな」
最初から思っていたけど、ウェルシュは本当に子供っぽいよな。
本当に四神竜なのか怪しんでしまうけど、さっきの巨大化した姿を見たから納得してしまうよな。
「それでイブキは何でバルジーク王国を旅して回っているのだ? 何か目的でもあるのか?」
「いや、特に目的はないよ。ただ、この自転車に乗ってこの国を旅して周りたいだけだ」
「そうなのか……よし、決めたのだ! 私はイブキの旅についていくのだ!」
「えっ、な、何で?」
「私は2000年も生きているから、毎日暇で仕方ないのだ! だけど、イブキの旅についていけば、退屈せずに済むと私の直感が言っているのだ!」
「理由になってなくない?」
「細かい事は気にしなくてよいのだ! さあ、旅に出発なのだ!!」
こうして半ば強引に俺の旅にウェルシュが付いてくる事になった。
これから俺の旅はどうなっていくんだろう……




