表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

1、プロローグ

(;^_^A 初めましての人、久方ぶりの人、閲覧ありがとうございます。ひっそりこっそりお恥ずかしいですが、ご興味のある人は読んでいただけたら嬉しいです。

今回序話が長くなったのと、ゆきあたりばったりな部分が多いので、次話の投稿は次回に予定…は未定…


 ◆ 序章~異世界への扉



 普段と変わらない日常のはずだった。


 しかし、そんな日常は、いつだって些細なきっかけで崩れ去るものだ。


 リコ ── 本名、神代業子。今年25歳になったばかり。特に親しい友人たちからそう呼ばれている彼女は、伊達眼鏡の奥で疲れた目をこすりながら、オフィスビルを後にした。


 ブラック企業での連日の徹夜明けは、リコの顔に深い影を落としていた。


 目の周りのボクシングジムでつけられた蒼痣は、とりあえず伊達眼鏡で何とか隠してみた。仕事をしなくていい日曜日だけのストレス発散のボクシングジム。本気でプロを目指す相手に、徹夜明けでふらふらしている態度が、舐めた態度をしているように見られたのか、たまたま手が空いた隙に本気でかって来られたのだ。さっさとやられて退散するためと、体調がおかしかったので、直撃はしなかったが、いい感じに軽く顔に入れられ仕舞った。


 それでも、ただでさえ日頃から休憩も定時帰社も返上で押し付けられた仕事の量と、愛想笑いすらも忘れた強張った筋肉のせいで仏頂面をしていれば、ブサメンと陰口を叩かれたのは仕方ないことだ。


「ああ、また明日もあの地獄か……」


 いつも利用しているコンビニの自動ドアが開き、冷えた空気が店内に流れ込んだ。


 夕方の買い物帰りだろうか、近くの女子高の制服を着た可愛らしい娘がレジ袋を抱えて出ようとしている。


 入口付近には、銀髪が夕日に照らされて輝く美青年が立っている。観光客なのか、それとも誰かとの待ち合わせ中なのか。


 リコはただ、疲れた体を引きずりながら、今日も終わったな、とぼんやり考えていた。


 その瞬間 ──


 ── 光。


 眩いほどの光がリコを含む三人を包み込んだかのように見えた。


 何だか空間に変な亀裂が入り、そこから光が漏れてきたかと思えば、空間が歪んだ。ガラスの割れるような音もなく、ただ視界が突然波打ち、金色の亀裂が空中に走ったかと思うと ──






 *****






 ── 気が付くと、リコたち三人は見知らぬ場所に立っていた。


 ……えええっ?


 そこは見知らぬ玉座の間の様だった。石造りの大広間。高い天井には色鮮やかなステンドグラス。床には複雑な紋様が刻まれた魔法陣がまだ微かに光を残している。


 そして眼前には、リコたちを取り囲むように立つ、日本ではコスプレイヤーかイギリスの王族みたいな宝石を散りばめた豪華な衣装をまとった金髪碧眼の美青年や、少なくとも彼女が所属する世界では毛染め以外では見たことない、紫や青や橙やピンク色の派手な髪色の男性たちが厳かに並んでいる。もちろん彼らの服装も、神官風なものから、中世期の甲冑を着た騎士風などだった。


 何これ……? どこの映画撮影……? 私はどこにいるの?


『おお、遂に召喚が成功した!』


 威圧的な声が響く。


 しかもこれ、日本語に聞こえるけど、口と音の言葉が合っていない? もしかして、夢じゃなく、本当に異世界に……


 リコが顔を上げると、宝石を散りばめたド派手な衣装をまとった肥満体の金髪青眼の五十代半ばの男が、高みから三人を見下ろしていた。その一段下がった近くに、青い髪と緑の瞳を持つ痩身の暗い色のローブ姿の二十代半ばの男が立っている。


 一番偉そうで宝石を身体中に着けたド派手な衣装の金髪青目の男 ── どう見ても王様か何かだ ── が、これまたでっぷり太って尊大な態度でローブを着た司祭っぽい紫髪紫眼の五十歳前後の男にうなずいた。王様は尊大な態度で杖を床にトンと突き立て、リコたちを見下ろすように言った。


『我はムーン王国の国王、サトリヌス・ムーンである』


 王様が宣言した。


『そしてこちらは我が息子、フライア王子。お前たちの中に、我が国を救う聖女がいるはずだ』


 王子は、魔法陣の中央近く、正面に立っていて最初に見た金髪碧眼の二十歳くらいの美青年だったが、その目には業子たちを見る品定めのような冷たさがあった。


 肥満体の司祭が前に出て、無表情に告げた。


『【ステータスオープン】と唱えてみよ。それでお前たちの能力値などが我々にも開示される』


 女子高生の目が輝いた。


「聖女?……私が……」


『然り。世界樹ユグドラジルの力が弱まり、魔族の脅威が増している。聖女の力で世界樹を蘇らせねばならない』


 国王サトリヌスが司祭に命令すると、司祭は頷いた。


『お前たちの中に、真の聖女がいるはずだ』


 反射的にリコは


「ス……」


 と口を開けかけた瞬間、リコ以外の周囲が凍り付いたかのように動かなくなり、世界が止まった。


 えっ? もしかして時間停止!


 いや、正確に説明すると、周囲の全てが凍り付いたように動かなくなっている。国王の口元から垂れるよだれさえ、空中で静止している。


 《落ち着いて。君の思ってる通り、自分の能力で一時的に時間を止めてるだけ》


 えええっ?


 頭の中に直接響く誰かの声。


 リコが驚いて目を動かすと、銀髪の美青年 —— いや、よく見ればその顔立ちは中性的で、もしかすると? —— その人が微かにうなずいていた。


 助言はその銀髪の美青年からのようだった。優しいが、どこか切迫している。


(テレパシー? ってやつか!)


 《そうだ。長時間は無理だから、決めるならさっさと決めて。【オープン】はまだ唱えないで。少し能力値を隠蔽してからのほうがいい。彼らは信用できない》


 頭の中に直接響く声。


 本当にテレパシーなんだ。まさにファンタジーじゃん! 異世界の王道だよね、これ。


  リコは目を丸くしたが、声の主に悪意を感じなかった。むしろ、この状況で唯一の味方かもしれない。


 《あ~……まあ、確かに今出会ったばかりの相手を信じられないかもしれないよね。私の名前は銀野司。ツカサって呼んでくれていいよ。確かに初対面で信頼するのは難しいだろうけど、迂闊に彼らをこそ信用しない方がいいかも》


 リコは頭をフル回転させた。


 見知らぬ美青年 ── ツカサの言葉を信じるべきか。しかし、この強引な召喚、この人を見下したような王族たちの態度 —— 全てが不自然で危険な匂いがした。そうか、じっくり作戦練る間もないのか……決めた!


(わかった。信じる)


 ツカサの言う通りだ。わざわざテレパシー使ってまでアドバイスくれた彼に悪意があったとしても、言ってることは正しい気がする。それで彼女は彼の提案通りにすることにした。


 それにツカサが騙しているとしても、リコ自身も、強引に召喚した奴らには多少の怒りと理不尽さと違和感を感じていたから。確かに、そんな連中を信用する理由はどこにもない。


 心の中でそう決意すると、リコはわざわざテレパシーを送ってくれたツカサに微かにうなずき、まず心の中で【ステータス】と唱えてみた。


 頭の中に画面が浮かび上がる。そこにはこう記されていた。



 +++++++++++++++

 名称:ノリコ・カミシロ:神代業子、25歳

 LV25

 職業:言霊を聴ける代理人

 HP:体力   256

 MP:魔力     ∞

 攻撃力     126

 守備力:防御力 128

 素早さ:回避力  67

 命中力     118

 賢さ       60

 運の良さ     98(※運のみ100がMAX)

 スキル     生活魔法LVMAX、全言語理解、神眼、無限収納庫、地+水+火+風+光+闇+無属性魔法全般、隠蔽、無詠唱など、万病完全回復、欠損に至るまでの全ての怪我完全治癒、完全解呪、浄化、結界魔法

 特殊スキル:返却

 特典:異世界転移トリップによる元異世界地球側の管理人による加護

 異世界転移トリップによる異世界側の管理人創成女神による加護

 +++++++++++++++



 ゲームはやったことはあるけど、テトリスなどの落ちゲーとか、シューティングや、戦略シミュレーションをたまにやった程度なので、能力値は強いのか弱いのかさっぱり判らない。


 ただ、聖女という文字はどこにも見当たらない。代わりに【言霊を聴ける代理人】とかいう不可解な肩書。そして【異世界転移トリップによる管理人たちの加護】 —— これが何を意味するのか、リコには皆目わからなかった。


 そこでツカサが静かに呟いた。


 《……危険だ》


 リコはツカサを見た。


(どういうこと?)


 《さっき、こっそりあそこに立ってる青髪と緑目の召喚魔術師 ── ああ、彼の名前はテュルズと言うらしい。その人の能力値を鑑定したんだ。彼には【名前拘束呪術】というスキルがある。本名を聞き出し、それによって人を操れる術だよ》


 背筋が凍る。そこでリコは偽名を名乗ることに決めた —— 向こうの世界で虐めっ子に似た名前を文字り、黒野久仁子でいいかな? 本名の業子のりこを隠すことにしたのだ。今はそれが命綱になるだろうから。


 無属性魔法の項目に【隠蔽】の文字があるのを見つけ、リコはそれを使うことにした。名前を【黒野久仁子】に改変し、さらにツカサのアドバイスで、能力値を低く表示させる設定を施す。彼が教えてくれた通り、魔術で名前を拘束する呪術はあるらしい。本名を隠すことは必須だった。


 時間の流れが元に戻りかけた。リコは急いで能力値を調整すると同時に、時間が再び動き出し、リコは声を張り上げた。


「【ステータスオープン】!」


 次に女子高生も続けて唱えた。


 リコ達のステータスが広間の空中に大きく浮かび上がり、開示された。


 リコのステータスは巧妙に偽装できたはず。レベルは1、職業は【村人】。能力値は平凡そのもののはずだ。



 +++++++++++++++

 名称:クニコ・クロノ:黒野 久仁子、25歳

 LV1

 職業:村人

 HP:体力   8

 MP:魔力   9

 攻撃力     6

 守備力:防御力 7

 素早さ:回避力 4

 命中力     5

 賢さ      3

 運の良さ   10

 スキル    生活魔法LV1、言語理解

 +++++++++++++++



 対して、女子高生のキョウカと名乗る少女のステータスは輝かしいものだった。レベル18、職業は【聖女】。全ての数値が高く、スキル欄には【治癒魔法】【光魔法全般】と並んでいる。



 +++++++++++++++

 名称:キョウカ・サクラガワ:桜川鏡華、18歳

 LV18

 職業:聖女

 HP:体力   182

 MP:魔力    74

 攻撃力      64

 守備力:防御力  92

 素早さ:回避力  34

 命中力      34

 賢さ       36

 運の良さ     50

 スキル    生活魔法LV1、言語翻訳、鑑定、水+光魔法全般、治癒魔法、防御魔法

 特殊スキル 魅了初級

 特典:召喚による恩恵

 +++++++++++++++



 国王の目は女子高生 —— キョウカと名乗る桜川鏡華 —— の画面に釘付けになった。


『おお! 間違いない、この者こそ聖女だ! LV18、職業聖女、光と水の魔法。完璧だ!』


 国王が歓喜の声を上げた。隣に立つ金髪碧眼の青年 ── おそらく王子だろう ── も満足そうに頷いている。


『父上、これで我が国の優位は確定です。周辺諸国への要求も通るでしょう』


 召喚士テュルズが冷たくリコを見た。


『こちらは……村人か。他は明らかに巻き込まれただけのようだな』


 フライア王子の表情はすぐに冷たくなった。


『我々が召喚した聖女は一人だったはずだがな』


 国王が言った。


『そうか、巻き込まれただけの、本物の聖女以外はいらん、不要だ!』


 でぶった紫髪の司祭も杖を振り、リコと銀髪の美青年に向かって冷たい視線を向けた。


『聖女以外はいらぬ! 失せろ!!』


 その瞬間、リコは全てを理解した。三人まとめて巻き込まれた召喚。だが、聖女と認められたのはキョウカだけ。自分とツカサは【不要品】扱いなのだと。


 キョウカが得意げな笑みを浮かべている。


 そりゃそうだろう —— 可愛くて若い女子高生と、目の周りに痣がある疲れ切ったOLと、美青年。望まれるのは一択だ。


『では追放するか?』


 王子が冷淡に言った。


『さっさとここから消え失せろ。さもなくば ──』


 逃げるしかない。


 《逃げよう》


 ツカサの声も、きっぱりとしていた。


 リコはツカサと目を合わせ、微かにうなずいた。彼も状況を理解しているようだ。


「では、お邪魔しました~」


 リコはできるだけ平静を装って言い、ツカサとともにゆっくりと後退した。兵士たちは彼女たちを軽蔑した目で見ているが、止めようとはしない。彼らにとって彼女たちは【不要な巻き込み】でしかないのだ。


 《よし、今のうちに抜け出ようか》


(どうやって? 扉の前には、まだ衛兵がいるんじゃないの?)


 《私の能力だと……気配遮断と認識阻害に……隠密も使えそうだな。短時間だけなら、衛兵の目を欺けそうだよ》


 リコは躊躇った。この未知の世界で、どこへ逃げれば?






 *****


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ