表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/60

帰りましょう

 ダリアはギュスターブに冷たい視線を送る。

「ギュスターブ公爵、今回は運よく最悪の事態を防ぐ事ができましたが、ご自身の過ちは認識しておりますわね?」

 ギュスターブは冷や汗をダラダラ流して、視線をそらす。

「悪意ではなかった。エクストリーム王国は強くなる必要がある。そのために禁忌の魔術を人に使う必要があったのだ」

「その結果、罪のない人々が凶暴化しました。あなただって殺される所でしたわ」

 ダリアの口調は重々しい。

 ギュスターブは震えた。


「わ、悪いのはエクストリーム王国だ。儂を禁忌の魔術に駆り立てた原因は、エクストリーム王国の弱体化だ」


「王国に対してそんな事をおっしゃるのですか!? フランソワ王太子が聞いたらカンカンになりますよ」


 唐突に、エントランスに甲高い声が響いた。茶髪を三つ編みにまとめた華奢な人間が、両目を吊り上げていた。

 セラだ。

 ズカズカとエントランスに足を踏み入れる。

「グレイから話を聞かせてもらいました。禁忌の魔術を人に用いるように仕向けて、責任をすべてグレイに押し付けようとしましたね」

「し、知らぬ。そんな事は……!」

 ギュスターブが白を切ろうとすると、屋敷の入り口からグレイが呟く。


「嘘を吐くのなら、またロベールを操るよ」


「ひ、ひいいいい」


 ギュスターブは情けない悲鳴をあげて首を横に振った。

「正直に話すから命だけは!」

 ダリアは露骨に溜め息を吐いた。

「フランソワ王太子にもお話してくださるかしら?」

「もちろんだ、すべてを話すぞ!」

 ギュスターブは壊れた操り人形にように、コクコクと頷いた。

 セラは安堵の表情を浮かべる。

「これで王国に対する忠義を守れます。あ、そうそう至高の令嬢(ハイエスト・レディー)、ちょっといいかな?」

「何かしら?」

 ダリアが首を傾げると、セラはいたずらっぽく微笑んだ。

「あの事を黙っておく代わりに、私を殺さなかった事も黙ってもらえるかな?」

 あの事。

 死に戻りの事で間違いないだろう。死に戻りは、自らの命と世界の存在を引き換えに時を戻す魔術だ。禁忌の中の禁忌とされている。

 セラは死に戻りを行った魔女として、ダリアの命を狙っていた。それを訂正するのだろう。

 ダリアは両目を見開いた。

「本当によろしいのですの?」

「私が負けたなんて噂が広がったら、王都が混乱するから。フランソワ王太子にうまく処理してもらうと思うんだ。私もズルくなったね。でも、味方を増やす駆け引きも大事なのかな、なんて」

 セラは自らの茶髪をかいていた。

 カルマは豪快に笑った。

「いいと思うぜ、みんながいいならな!」

「ギュスターブ公爵は不敬罪で連行するよ。グラン様もそれでいいよね?」

 セラが声を掛けると、グランは頭を押さえながら起き上がった。

「そうだね……追い詰められた時のギュスターブ公爵の覚悟が足りないと分かったから、禁忌の魔術で王国を強くする計画は中止しよう」

「ま、待てグラン。おまえだって長い間賛同していただろう!?」

「あなたが命を懸ける覚悟があると思ったからですよ。いざ命の危険にさらされた時に、言う事をあっさり変えた人間を信用できません」

 グランは立ち上がって、ギュスターブに軽蔑の視線を送っていた。

 カルマは深々と頷いた。

「本当だぜ。アムールはなんでこんな男を助けたんだか」

「……グラン様が忠義を尽くす相手だったからですよ」

 アムールは、ソケットに白い宝石のついた槍を杖代わりにして、よろよろと立ち上がった。

「僕はグラン様に恩義を感じています」

「うかつに騙されてすまなかった。今後は気を付けるよ」

 グランが溜め息を吐いた。

「聖騎士団に取り返しのつかない事をやらせてしまった」

「本当にそのとおりです。ダリア様たちと出会わなかったら、きっと最悪の事態になっていました」

 アムールの肩が震える。

「僕たちはこれから償いに一生を捧げるべきです」

 グランは頷きながら聞いていた。

 ダリアは微笑む。

「ここの事は任せてよろしいのですわね。確認しますけど、グレイはもう禁忌の魔術を使わないのでしょうね?」

「禁忌の魔術を使って散々な目に遭ったからね。二度とやらないよ」

 グレイは忌々し気に応えた。

「できればダリアを屈服させたかったけど、またの機会にするよ」

「それはダメだよ、私が君を倒さなくちゃいけなくなるから」

 セラが口を挟んだ。

「罪のない人をむやみに襲うのは、聖騎士団飛行部隊の隊長として見過ごせないよ」

「分かったよ、手を出さないよ」

 グレイはしぶしぶと頷いた。

 ジャンは両目をパチクリさせた。


「禁忌の使い手も、頭が上がらない相手がいるんだね。ダリアの安全が保証されるのなら良かったよ」


「そうですわね。これでスローライフを満喫できますわ」


 ダリアはクスクス笑った。

「帰りましょう。私たちの住処であるトッカータ村に」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ