Board game of the witch 1
「未来は存在するんだって!!」
葵が食堂から教室に帰って来ると、女子の会話で突拍子もない声が聞こえた。ともすれば、その反対意見も声高らかにして発言する。ちょっと遅目に戻って来たのだが今食べ終えて、皆弁当を片付けて最後の談笑タイムに入った所。
「違うよ!!未来は確定してないの!!」
声を聞いてすぐに誰かは察しが付いた。赤い髪の毛の女の子が生き生きとして反対意見を述べたのだ。葵と話してるのはオカルト研究会の部員、朝間博子という女の子。根暗なイメージがあったが今は彼女も生き生きとして見える。一緒にご飯を食べていた3人の女の子もぽかんとしている。
「じゃあ、綾乃さんに質問だけれど、その手に持ってるパックジュース飲むの?飲まないの?」
綾乃はコーヒー牛乳のパックにストローを差して
「飲むよ、勿論」
といって、今正に飲んだ。
「私が貴方に尋ねた時は、貴方はまだ飲んでいなかった。だけど今飲んだ事で、飲んだ未来からすれば尋ねた過去が“存在していた”という事になるわよね?」
当たり前で面白味もない理屈。ズズズ、とコーヒー牛乳を飲み干して綾乃が答えた。
「それは結果論だよね?未来があるって事は世界は全て決まっていて終わりまで存在する一冊の書物の様になるよ。今私達が生きてる事もそれから未来も決まっていて、決まった事をなぞるだけの世界なんて私は嫌かな」
「星の数程の未来があって、私達はそれを日々確定していくに過ぎない。すでに牛乳を飲まなかった世界も存在していて未来に進んでいるとは思わない?ジョン・タイターは信じてないの?ノストラダムスや数々の予言は?」
「予言に関して言えば、ある程度適当に言っても幾つかは当たるんじゃない?ジョン・タイターは捏造だと思う」
「信じられない!!あの綾乃さんが予言を信じていないなんて!!」
「未来は、確定していなくて現在の因果の結果が、事象になるんだと思ってるんだけど、橘君はどう思う?」
葵は、自分の意見に賛同してくれるに違いないと思っている綾乃に、自分の席に着いて真剣に答えた。
「どうでもいい。それよりもう授業開始5分前だぞ」
一斉に視線が時計に向いて、皆慌てて席に着く。やれやれと思いながら、窓から刺さる太陽の光に熱を感じた。季節は梅雨が終わって7月寸前。夏が目の前に差し掛かっていた。




