Avengers Requiem 5
翌日、新聞に大きく取り上げられる一大事件となった。ニュースでも大きく取り上げられ、近くの学校は高校を含めて全て休校となった。自宅待機とは嬉しいが、目が覚めたら病院の天井が見え昨日からずっと眠っていたらしい。傍には誰も居ないが、それはそれで構わない。
「ああ糞、頭痛いな。椅子で結構打ったせいかな」
「そうね、折角王子様役だったのに、庄司君ボッコボコにされてたもんね」
吃驚して、視線をドアに向けると叔母と浦美が現れた。
「病院ばっかり。どれだけ迷惑掛けたら気が済むの!!」
「済みません、以後気を付けます。浦美ちゃんはどうして?」
「今日学校に行ったら自宅待機って連絡私聞いてなくって。それで暇になったから病院に来たの。変な事件のせいで小さくなってたけど貴方の事も匿名でニュースになってたわよ?」
「本当に!?」
「本当よ。全く、誰もこんな事望んでないのにマスコミに振り回されたらどうするの!!」
叔母が激昂していたので、とりあえず謝っておく。
「すみません。僕が弱かったせいです」
「ううん、あの時庄司君カッコ良かったよ。力足らずだったけどね」
「最後の一言が僕の心に深く突き刺さるよ」
そう笑うと、浦美も笑顔で庄司に返した。
しかし次の言葉で、浦美の顔から笑みが消える。
「でもあの4人組、僕をこんな目に合わせた罰が当たったよね」
「―――――――――?」
暫くの沈黙が流れる。
「どうしたの?」
「ちょっと、用事が出来ちゃった。また見舞いに来るわ」
浦美はそう言うと、病室を後にしたのだった。
チャイムが鳴り響いて、お昼休みに摩子と洵、他2人のいつものメンバーで昼食を取っていた。お下げの女の子、川下恵が、洵に興奮しながら携帯を見せる。昨日ダンスクラブで行われた殺人事件に皆話題は一色に染まっている。
「これが噂の事件の犯人なんだって!!どうみても地球外生命体でしょ!!」
「確かに、昔の映画でこういうのあるけど。何、信じてんの?」
洵がお子様ね、と一笑するが、恵はニヤリと笑みを浮かべた。
「これね、一昨日のダンスクラブの殺人事件あったでしょ?それに巻き込まれた人が携帯で撮った奴なんだって。ほら、映像の日付けと場所が一致してるっしょ。今話題はこれで持ちきりよん?」
摩子も覗くと、確かに今朝ニュースでやっていたダンスクラブである。玄関前に人が群れ騒然としている。暫く時間が経つと地下の階段から、エイリアンみたいな化け物が血塗れで現れて撮影者は全力で逃げた。というかその場にいた全員が蜘蛛の子を散らす様に逃げ映像はそこから途切れている。
「うわぁ。コスプレにしては迫力あるね」
「モルターとスカルーじゃないけど、恵さん、貴方疲れてるのよ」
「これ、絶対本物だって!!洵さんも摩子さんも何で信じないかなー」
「他の人も投稿していて、大体皆同じ映像なんだよね。こりゃ国家が黙っちゃいませんな」
「どうして?」
眼鏡をかけた長髪の女の子、下沢由梨が面白そうに言った。
「だって、宇宙人に関する情報なんてアメリカだって国家機密なんだよ?未だに宇宙人が働かされてるとかいう地域だって公開されてないのに。こんな情報国がいつまでも情報規制で残らないんじゃないかな」
「極論だけど、寧ろこんな情報未だに公開してる時点で宇宙人じゃないんじゃない?」
摩子がそういうと、恵と由梨が言葉に詰まった。綾乃だったら絶対に会いに行くとかほざくだろう。心配するのも馬鹿らしい程に仮に宇宙人に攫われても彼女は難なく帰還してきそうだが。問題はそれに摩子や洵をを巻き込む可能性が極めて高い事である。この間の一件も洵に話をしたら、まだマシな方だと答えてくれた。洵に釘でも刺して貰えば良かったと痛感するのは放課後になってからだった。




