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New Face Monster 10

 

 朝起きて、パソコンに電源を入れる。 時刻はすでに12時を回っているが、私にとっては朝に当てはまる。ネットワーフィンを行い、動画サイトで無料で見れるアニメや映画、ドラマを漁って視聴開始。簡単に時間は3時間が過ぎて、お腹が減っている事に気づいて下に降りてクーラーの中を見て、ラッピングされた自分用の昼食にありつく。今日はオムライスだった。それくらい自分でも作れるが、折角作って貰った物を無碍にするのも悪い。全てを平らげてからまたパソコンの前に座って後はネットゲームの世界にのめり込む。親が帰宅する頃には夜も更けていて晩御飯にありつく。仕事を探してはいるもののだらだらと続けてしまって、結局今日も一日時間を自室のパソコンの前で過ごす。友達もいつの間にか一人、二人消え今やネットの住人と化してネットゲームの中でギルドを立ち上げてその中で人の和を作って満足していた。


「いつになったら、あんた外に出るの?親だっていつまでも居る訳じゃないんだからね」


「分かってるって。近いうち、仕事見つけるから」


「どうせネットに嵌るんだったら結婚相談所とか出会い系にしなさいよ。女は仕事よりも結婚と子育ての方が重要なんだから」


ある日の晩御飯の席での親の一言が胸に刺さった。このままでは駄目だと分かってはいたが、引き籠る為の理由をあれこれ作り始めて結局外には出ない自分の心の弱さを嘆く。分かってはいるのだが、切っ掛けが無いだけなのだと自分に言い聞かせる。いつか自分は外に出られるんだけど、ただ今はこの環境に甘んじていたいだけなのだと。働いていた時期もある。その時も周囲と自分は何か違うと感じていた。アニメに嵌って、BLに嵌ってそれに抜け出せなくなった。一般の人間と半分オタクの自分が存在して、内の中で皮を被って息を潜めている。言いだしたいとも思ったが、結局怖くて言えなかった。会社で知り合いから、恋人になった人に彼の知らない半分を告げるとアッサリと拒絶されて、そして会社にも居られなくなってしまった。親は失恋のショックから立ち直っていないだけと思い込んでいるがそれだけではない。人に自分を見られるのが怖くなったのだ。半分は一般の人間で、もう半分はオタクの自分が潜む物の怪の様に自分を思えてしまって、そんな風に思っていたら外に出る勇気を完全に失った。


いつもの寝間着姿で、パソコンの前に座って今日も仲間とオンラインゲームに興じていると、最近ログイン下降気味のメンバーが現れる。


「めっさ久しぶりワロス」


「wwwwwwwwwwwwwww」


「相変わらず草生えるな」


「今暇?」


「うん。どっか行こうZE」


私は重剣士で主にターゲト集めの役割を担う。洞窟の中を進んで、扉を開く鍵や、中ボスを倒して最後のボスの所に到達すると回復役の魔法使いが全力で3人をサポートし始める。攻撃力の高さで押して20分が経過する頃には魔法使い二人と竜騎士が敵を倒してクエストをクリアすると、報酬を貰って拠点へと戻る。談笑に花が咲いて、その中で竜騎士が面白い話を振ってきた。


「二次元に行ってみないかオールww」


「ここが僕らの楽園だよ?」


「ちwwがwwうw。何か最近話題になってんのよ。なんだっけ、RAINBOW WORLDってサイト。一辺見に行ってみなよ。炎上してっから」


「わお。チャーハン作れそう」


「ちょっと見にいこ。休憩したいし」


魔法使いがそう言ったので、私も投下されたネタを見に行く事にした。


ネットサーフィンをしていると、巨大掲示板のオカルトスレッドに変なスレッドが立っているのを見つけた。【RAINBOW WORLD】についての詳細が書かれてある。二次元に行く人がそこに描かれて、最後は死んでしまうという内容で、そしてまた新しい漫画が始まってまた人が死ぬという繰り返しになっている。くだらない内容だと思ったが二次元に入れるなら、悪くないなと感じてしまう。


「もし、二次元に行けるもんなら喜んでいくのになぁ」


そんなくだらない願いを聞き届けられたのか

急に画面が光り、余りの眩しさに目を瞑る。

そしていつの間にか異空間へと転移していた。空を見上げると、青空が見える。深い森の中で木に触れて、それが本物かどうか確かめる。慌てて、自分の頬を捻って痛くないか確認したが痛かった。呆然としていると、空から妖精がひらひら羽を羽ばたかせて私にこう告げた。


「ようこそおいで下さいました。伝説の勇者達。私は貴方たちを導く為にここに来ました。妖精のアルファと申します」


「勇者!?⋯⋯私が?」


「そうです。貴方は勇者。この世界に選ばれし救世主となるべく召喚されし者」


その言葉に驚きながらも、少しだけ期待した。ここは漫画でよくある異世界で世界を救うべく勇者として私は選ばれ、人生が上手くいかなかったのは今この瞬間の為にあったのだと愚かにもそんな風に私はこの出来事を前向きに捉えてしまったのだ。

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