The Steal Bride of Evil God 23
「この館の歴史は古くてね。数百年前に建てられた古い洋館を改築、増築して今も残ってるんですが、いよいよガタが来て取り壊しを行う事にしたんですが、工事をしようと取り掛かった建設業者の方達は皆口を揃えて言うのです。館の呪いが怖くて続けられない。あの人形をどうにかしてくれとね」
「人形⋯付喪神ですね。持ち主の思いや、人形自身の神性で変化する事があります」
長い年月を経て妖怪化する動物や物の総称である。三人は館の主人の後に続いて館を見回る。古いが荘厳なインテリアや絵画、像等が置かれており取り壊すのは勿体ない様に感じる。掃除も完璧に行き届いており
埃一つ無い様に感じる。
「古い建物ですが掃除されてて綺麗に見えますね」
「うん?そういえば全然してないのに埃一つ感じた事がないな」
部屋の扉を開けると部屋の中心に可愛い洋服の等身大の人形が椅子に座っていた。顔は仮面を被って見えない様になっている。主人が仮面を外すと中には古い人形の顔を露わにした。
「マーロー人形じゃん。等身大なんて初めて見たかも」
智也が率直に述べる。
「うむ、米国で古くから量産販売されている。今でも世界に人気なのだが、実は元の顔はこれでは無かったんだ」
そう言って、部屋に飾ってある老人と綺麗な女性が白黒写真で飾られてある。時代背景は江戸終盤から明治初期といった所。美しい貴婦人が老人と共に映し出されておりマーロー人形ではない。
「へえ、御婦人を模した人形なんすね」
晃が質問すると主人が否定した。
「いや、それはこの人形らしいんだよ。まるで人間のようだけど、私の血縁の中には変わった人が居たみたいでね。人形と結婚した変人だったらしいのさ。何処へいくにも人形と一緒で彼は生涯人形を一途に愛したらしいね」
三人が唖然としていると、主人はさあと手を掲げる。
「早速この人形を見てくれないかな。その間に私はお茶とお菓子を持ってこよう。さっきの坊主は出す間もなく逃げてしまってね。お茶請けは余っているから直ぐに持ってくるよ」
主人が部屋から出ていった後、三人は人形を眺める。
「で、付喪神だっけ?祓えんの?」
「んー正直、何も感じないぞ。引き取って何処かに遺棄すれば問題ない気が。それより手洗い廊下にあったよな」
「おう、俺も行こうかな。智也はどうする?」
「僕はもう少し部屋と人形を見ておくよ。珍しい物が多いしね」
二人が出ていった後、智也は部屋と人形を見回している。古い時計に凝ったアンティーク。大きな姿見用の鏡に昔の書物もある。昔の中世の騎士の甲冑や剣、木製の鈍器や昔の骨董品の美術品鑑賞に智也の好奇心も満たされる。
「随分服も綺麗だなー。クローゼットまであって着替えもさせてたんだな。こっちの棚は⋯⋯下着?」
姿見の鏡に人形が映る。
智也は人形から確かな怒りを感じた。
何せふるふる少し震えているのである。
下着を持ったまま後ろを振り向くと人形が鈍器を持って立っている。
「ちょっッーーーーーー」
振り下ろされた鈍器に殴られて智也は鈍い音と共に床に倒れた。




