The Steal Bride of Evil God 18
翌日、同じメンバーの構成で仕事を開始。店長は後程来るらしい。他のバイトの子は用事で数日来れなくて完全に人出不足。短期バイトが喜ばれた理由も頷ける。開店して数分で行列が出来て店内が埋まる。注文はしないで全員手持ちのハンバーガーを食べ始めて綾乃達は困惑した。
「ご注文は?持ち込みは困るんですけど」
「何言うてんねん。俺等昨日ここで合計250個注文して食べきれへんかった分ここで食べとるだけやがな」
「え?確かに、うちのバーガーですね」
塩崎さんが毅然と訴えるも、反論されてしまう。先日の売り上げに貢献してくれたので強く言う事も出来ずに食べる間だけという事で了承したものの、席から離れず注文に来たお客さんを威嚇して追い払う。安易に力に頼った洵の完全な失策だった。バーガーパーティーとでも言うように騒ぎまくり、椅子や机を倒しまくり、ゴミは散乱しまくり、追加注文もせず昼になっても普段来るお客さんが注文も出来ずに帰っていく。塩崎さんも先日の売り上げがあるからとこめかみの血管から血を噴出させて耐えている。
「皆ごめん。私が考え無しに綾乃に頼った結果だわ」
疲れも見えた中で厄介客を回避したかった結果更に酷くなった。午後に店長が戻って来て状況に唖然とする。
「これは一体、どうなっているんだい?」
「店長!」
塩崎さんが状況を伝えると店長も把握してお客さんに
お願いする様に帰って貰える様に説得しようと近づくと、向こうが店長に気づいて声をかける。
「店長はん戻りましたか!話がしたくて待っとったンですわ!」
とニコニコ顔で昨日バーガーを購入した輩の男が借用書を掲げて近づく。
「あんた、返済滞ってるみたいでんなァ。ワンニャンファイナンスとクロダ金融2箇所から合計350万。その債権うちに売りはって、債権がウチに回ってきたんですわ。利子付いて耳揃えて500万今日中に返してもらえまっか?」
向こうの弱みを握って、買い叩いたのは言うまでもなく。
「なんだって!?そんなばかな!!500万だなんて!暴利にも程がある!」
書類を確認すると、借りる際に署名した物と債権が移譲された書類に目を通す。
「でけへんのやったら借りる時に担保に入れとるこの店舗と土地は返済に充てまっけど、問題あらへんな」
店長は青ざめている。
「数日⋯⋯3日待って貰えませんか!!借金返済の当てはあるんです!!」
「待てるんは今日の閉店までじゃい。それ以降は待てへんなぁ」
男達がニヤニヤして、全員笑う。洵と花音は冷静に見ているが綾乃、摩子、心菜、は見ていて心がキリキリ痛む。綾乃は何とかしたいが摩子が手を握る。反対側は花音が握って行動出来ない。バーガーも大概だが紙幣の偽造は友人として看過出来ない。全員であわあわしている間に、店長はこの世の終わりの様な表情で店の厨房に入って来て足を崩した。
「他の銀行からの借り入れも断られたし、一体どうすれば⋯⋯3日あれば全額返済出来るって言うのに!!」
一体どんな方法があるのか謎ではあるが、3日後には返済可能らしい。
「今だけ凌げるので良ければ知恵がない訳じゃないですけど」
花音がそう言うと、店長が顔を上げる。
「何か伝手があるのかい?」
「一旦お寺に行ってから、再度どこかで融資をしてもらえば良いかと。後は洵さんに根回しして貰えれば⋯⋯」
全員の頭に疑問符が浮かぶ。唯一理解しているのは洵のみ
「とりあえず、根回しはしとくんで三キロ先の寺院で出家して来てくれます?時間が惜しいのでタクシー呼びますね」
「出家って君何いって⋯⋯え?」
洵がニッコリ、笑みを浮かべて
「大丈夫です。白い衣装着て10分お経唱えるだけで良いですから。急いで得度積んで来てくださいね」
そう言って半ば強引に店長を裏口から逃してタクシーに押し込んだのだった。昨日は気づかなかったが流石にこの状況はおかしい。
「何か裏がありそうね。貴重な時間を潰してくれた御礼はしないとね」
洵がそう呟いた後、どこかに電話をかけ始めたのだった。




