The Steal Bride of Evil God 13
その日から、 王 浩然とその娘の神美の所に入浸り、共に修練を積み、霊障を抱える中国人や本国の妖怪退治に参加した。中華街に入って裏社会の顔馴染みも増え、中学時代最後の夏を充実したものにした。食卓を囲み、同じ飯を食べ、ハオランから給金も貰って懐も温かい。
「銀次、何か奢るね。私日本の寿司行きたい」
「シェンメイ、止めなさい。火の通ってない物は危険なんだよ」
「食べさせて貰った事あるけど、美味しいね。パパの嘘つき」
「仕方ねえ、連れていってもいいぜ 師匠」
「済まないね、最近中華街での貰い物が増えて来たからね」
「蚊取り線香付けてくる」
師匠と呼べとハオランに言われて以来彼をそう呼んでいる。廃工場の中で明かりを付けて、基本的に彼等はここを拠点としていた。水は近くの公園でタンクに入れて保管。風呂は基本的に水風呂、今の季節なら支障はない。洗濯は小型の洗濯機を購入している。調理はガスコンロで鍋物が多く、汁物が多い。本場の味が味わえるものの辛い物が多い。金に困っている様子もないが、シェンメイの安全を考慮した結果の家無し生活。楽しそうに暮らしているので銀次も彼等の生活水準に思う所もない。
「今日は、プリティシャミー見るね」
「勘弁してくれよ。野球中継みたいんだが」
「銀次は家に帰って見るといいね!」
「そういえば、そろそろ夏休みも終わりだろう。まだ学生なんだろう?家に戻らなくていいのかい」
急に、家族の顔が思い浮かぶ。次の瞬間に頭の中から消える。
「良いんだよ。遅かれ早かれ家には出る予定だった。それが数年早まっただけさ」
そう聞かせて、リモコンをシェンメイに譲る。シェンメイは笑みを浮かべてチャンネルを変えた。思わず昔弟の晃とテレビで喧嘩した事を思い出す。一晩して、早朝走り込みをして汗を流す。それが終わると公園のベンチに座り込んで自販機で水を買って飲み干すと、隣に座る中華服を着る男が現れた。
「探したよ、坂上銀次クンと言ったかな?我らの依頼を邪魔してくれたヤツがどんな男か来てみればこんな子供とは驚いた。幼子を取り逃がしたと聞いた我らが主が大変お怒りでね」
思わず、椅子から跳んで距離を置く。
「あん時の依頼主か」
男が携帯を放り投げて銀次はそれを受け取る。微かに携帯から声がする。恐る恐る耳に当てる。
「⋯⋯⋯誰だ」
「銀次兄ぃ?」
思わず、声に戸惑う。その一言だけで電話が切られる。代わりに目隠しされて簀巻きにされ、椅子に座らされた弟の姿が写真で送られてくる。男は銀次の絶望した表情を見て満足した笑みを浮かべる。
「私は王禅という。我々も鬼ではないよ、王 浩然を殺せば弟を解放すると約束しよう」
冷や汗と弟が死ぬかもしれない恐怖で寒気が走る。送られた弟の写真を眺めながら、銀次は親子の居る拠点へと向かった。




