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The Cross Bondー世界のアクセス権を持って生まれた女の子が織りなす物語  作者: 夜桜一献
The Steal Bride of Evil Godー邪神の花嫁を強奪せよ
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The Steal Bride of Evil God 12


 男が現れると、瞬く間に残りの刺客を曲刀を振り回して倒していく。銃弾は弾いていなし、体術を駆使して立ち回る。銀次は圧倒的な力を目の当たりにする。

曲刀に付着した血を振り払い、男が父親の顔に戻る。


「来なさい、神美シェンメイ。今のうちに逃げよう」


銀次の肩を貸して歩き出す。1時間程してやっと落ち着ける場所に来たのは、廃工場の小さな建物の中だった。誰も使われておらず、もう何年度も放置されているのが見て取れる。ここを拠点にしているのか、中にはソファーや机、鞄にテレビに冷蔵庫なんかも置いてある。


「元々置いてあったんだ」


男はそう言って冷蔵庫から、ビールを取り出す。恐らく地元の半グレの集まる場所でもあった所、廃れてそのままになったという所か。銀次は察して周囲を見渡す。


「傷を見せなさい。手当てをしよう」


「必要はねえよ。これぐらいなら直ぐに回復する。ただこれをやると腹が減るからな。食いもんねえか」


銀次は意識を集中して力を込める。人狼であるが故に人よりも回復能力に優れている。被弾した足の太ももの傷が塞がり、何事も無かったように立ち上がる。


「君はこの国の半妖か。どうして組織を裏切って私に連絡を?」


「初仕事が人攫いでしかも子供だったからなー・・・モチベーションが上がらなかっただけだ。あんたの子供は何か曰くがありそうだな」


冷蔵庫からパンを放り投げられ、それを受け取る。立ち入るのも危ないとは思ったが、関わった以上は気になったので聞いてみる事にした。子供は血の繋がらない他人の子供だが、赤子の頃に中国の地で狂信者に生贄として連れ去られ、それを救出して以来自分の子供として育てているという。本当の両親は連れ去る際にその狂信者に殺害されたらしい。その後も執拗に狙われ、幽玄舎の勧めもあって本国を離れて日本に潜伏。

日本で幽玄舎の顔が利く中華街で働き、定期的に経過報告をしているらしい。


「その狂信者の目的は何なんだろうな」


袋を開けてパンを齧る。


「分からないが、碌な事じゃないだろうね」


銀次の携帯に、依頼の取り下げの通達が入る。刻限が過ぎた事、公園で派手に殺し合いを行った結果、日本警察が動いて背後にある陰陽省が嗅ぎつけた可能性もある。なんにせよ金に目が眩んだ愚かな組織の末端から子供が狙われる心配は無くなった。それを伝えると男は安堵した表情を見せた。テレビを点けると先ほどの公園が取り沙汰されている。人が数名死んでいて新たな半グレやヤクザ同士の抗争があった可能性を報じている。


「あんた、一体ナニモンだい?」


「君は、またこんな事に首を突っ込む気か?」


「まあね、そうやって生きていく予定なもんで」


「なら聖道士の仕事を手伝う気はないかね」


「あー⋯だから曲刀持ってんのか。確かあっちの国の陰陽省みてーな組織だよな。この国には陰陽省があるって知らない訳じゃねえよな?」


「この東国の地で生きる我々中国人が、幽玄あらたかな事に関してこの国の人間に任せるなんて事はしないんだよ。仕事でたまに本国にも戻るしね。暫くは僕の従士扱いになるけど、どうかな。裏の仕事に代わりはないけど君の食指は動くんじゃないかね」


チラ、と子供を見る。


「子供のお守りも兼ねてんな?」


「勿論さ」


男はニコ、と笑って銀次に手を差し伸べる。裏の社会で生きていく他に聖道士の仕事に触れる機会を得た。これも何かの縁だと思い、銀次は彼の手を取って握手で応えた。





 中国 上海浦東国際空港


国際線のチェックを通り、目の鋭い男がロビーの中へと入る。電話を取り出し、日本の犯罪者組織へ連絡を入れる。


「すみません、王禅様の依頼は失敗しました。継続して引き受ける事も出来ますが、成功率は低いかもしれません。相手は元聖道士の中でも屈指の使い手と聞いています」


 「君達はお使いも出来ないのかな?日本の組織に依頼した私が愚かだったという事なんだろうね。まぁ、そこまで期待はしていなかったが、やり方が生温いんじゃないかね?」


電話を耳に当てたまま王禅は空いた椅子に腰掛けて、札を取り出し電話の相手へ呪殺の呪いを仕掛ける。相手の背後には化け物が纏わりついて死へ誘う。相手の声が悲鳴に変わり、声高に奇声を上げた。


「良い鳴き声だ」


王禅はそう呟きながら、電源をオフにして携帯をポケットに仕舞い込んだ。








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