The Steal Bride of Evil God 8
あれは今から6年前、まだ中学三年生の最後の夏頃の頃だった。京都大震災の傷跡もまだまばらに残っていた。理不尽に人生を狂わせられた人も数多く街自体が混迷としており、表と裏の世界の境界が曖昧になっている様に思えた。普段は悪事に縁が無い人間でも家族の為生きる為に手を染める者も居て、ある者は戦後の光景だと呟く老人の声さえ聞こえてくる。しかし希望もあった。地震が発生してすぐに京都に公的資金を導入して観光地へと戻す為に政府も惜しみない災害援助金として住む家さえ無くなった人々に申請した者に多額の支援金を配った。これには、海外の教会のトップが心を痛めたとしてお布施を義援金として政府も驚く様な額が舞い込んで来た恩恵もあるという。京都が驚く様な早さで秩序を取り戻した一因はやはり金の流れが収束した事が大きい。
街の路上にて、ガラの悪い学ランの男達複数名が赤髪の学生を囲んでメンチを切っている。
「お前か?ウチのヤスに暴力を振るってくれたヤツはよ。お陰で全治一カ月の重傷じゃねえか。どうしてくれんだ?」
「知るかよ。そっちが喧嘩吹っかけてきて買ってやっただけだろうが。文句あるならや今からでもやるぜ?」
「良いぜぇ⋯⋯お前最近調子に乗ってるらしいからなぁ。ここらで俺が締めとかねえとなぁ!」
男の拳が空を切って逆に顔面にカウンターを入れられ沈む。それから蹴って後ろへ転がした。
「この糞ガキャ!勘弁ならねえ!やっちまえ!」
多勢に無勢になると、赤髪の少年は逆に生き生きとし始めた。後ろから体を掴まれるも強引に振り回して、様子見の男にぶん投げてこれで一対三。二名同時に襲い掛ってきたが、宙返りして相手の肩に手を置き、片方の後ろに回り込んで背中を蹴る。反対側の男も殴る動きを急には止められず、味方の右頬にクリーンヒットしてやられた方は地面に沈んだ。赤髪の男は中指を立てて来い来いと挑発すると相手は冷静を欠いて突撃。連撃の猛攻を回避して、相手の疲れが見えて動きが鈍った瞬間にアッパーを入れて相手は背中から大の字になって倒れた。最後の一人は勝てないと踏んだか逃げ出している。
「テメェ、名前は?」
「坂上銀次ってんだ。再戦なら何時でも相手になってやるぜ?」
当時から喧嘩早く悪童として近所に名のしれた存在になっていた。人狼の中でも強いと言われる炎を操るレッドウルフであり、可能であればこの能力を人生に役立てて生きようと
この頃から考えていた。人狼はその本能の昂りに正直に生きる者も少なくはない。日本在住だと牙王会の粛清対象となるので海外に移住する者も居るくらいで、銀次もいずれは家を出ようとすでに心に決めていた。




