The Steal Bride of Evil God 6
英国における陰陽省の役割を担う妖魔滅殺を行う組織“アヴァロン”。古くはアーサー王の頃より設立された流れを組む。魔術師も多く在籍しており、卓越した魔術と剣士を数多く輩出している。国内の教会と折り合いが悪く陰陽省と似通った経緯を持つ。一時教会とも衝突はあったが教会が全面戦争を避けたとされる。国家が魔術師を保護する面においても日本と酷似しており、魔法省とも関わりがあるとされる。エリザと陰陽省の役人、アヴァロンの人間と英国の役人、そして中国の幽玄舎より聖道士が一人と役人の合計6名が中華のテーブルにて向かい会食を行っていた。場所は中国北京のホテルの最上階の中華レストラン。
「皆様お待たせしました。本日は、良い話になる事を期待しています」
「聖道士の方は本物でしょうか。以前死焔に一杯食わされましてね。どうにも信用が置けません。何か証明になるものは有りませんか」
エリザが余計な事をと、眉を少し吊り上げる。
「では、帰らせて頂いても?こちらも暇では無い。我が国で長年頭を悩まされた死焔の情報があると聞いてこうしてわざわざ来たというのに馬鹿馬鹿しい」
聖道士と役人が席を立つと、アヴァロンの人間。金髪の白人が発言する。
「お待ち下さい。死焔に関する情報を持ち込んだのは我々アヴァロンです。日本の役人は知人のエリザ氏に便乗してついて来たに過ぎません。問題があれば退席させます」
日本の役人が謝罪して、聖道士が着席し、話合いが始まる。
「まず、英国の実業家のチャールズ・リッチモンド氏の周辺で死体が多発した事を受け英国警察による捜査が始まりました。ところが、真相に近づくに連れて捜査員が殺され調査が行き詰り、我々アヴァロンによる調査に代わりました。初めは彼の側近複数名。更に愛人が数人。殺害方法は様々でしたが彼等は隠蔽を行わず、近隣の監視カメラ等で簡単に確認が取れる程雑に殺人を行っていた。更に驚いた事に、チャールズ氏は警察に密告という形で情報を提供、家族を人質に動かされており、操られて動いている事を告白。最後に死焔は彼の持つ世界最大級の豪華客船を使って何かをするつもりだと伝えて来ました」
「そこまで分かって、英国、ひいてはアヴァロンは動かないのですか」
「彼の企業は英国でも有数の大企業です。彼に何かあれば英国の損失だと感じているからこそ慎重にならざるを得ないのです。長年縁の深い幽玄舎なら彼等の目的が何か見当はつきますか?」
「彼等は崇拝する邪神の為に動いています。その恩恵として邪神の能力を使用する事が出来、厄介な事に彼等は邪神が喜ぶ事を嬉々として実行する。それが身を滅ぼす事に繋がるとしてさえもね」
「推し活みたいなものですか」
日本の役人の言葉に全員呆れる。
「死焔なら客を全員邪神の生贄にする可能性も無いとは言えない」
「なら今から豪華客船のチケット等の動きを止める等の行為をしてみては」
「SNS戦略でモデルや有名人に一斉に広告塔を頼み、かの悪名高いファイアフェスを彷彿とさせる戦略でチケットはほぼ完売。すでに出航するのみの状態となって止める術がない状態です。また介入した時点で死焔がチャールズ氏をどうするか考えると⋯⋯」
「いやいや、一体何千人が巻き込まれるんですか!テロが起こって観客全員が海の藻屑になるかもしれないのに何を悠長な!策はあるのですか!」
「策と呼べるものではないが、手は打たせて貰ったよ。巻き込んで気の毒ではあるんだけどね」
人狼の友人の兄と接触する為に死焔の牛耳る
豪華客船の殺人トーナメントに出たいという。花音からの打診には吃驚したが渡りに船とはこの事を言うのだと実感した。彼女を巻き込めるなら、船賃なんて安いものだとエリザは、赤い髪の女の子の顔を頭に浮かべて、胸の内で謝罪した。




