The Steal Bride of Evil God 5
「どうしよう、連絡はつかないし。いや、いっそ智也と心菜だけ参加すりゃ良いんじゃねえか?俺は無理だけど応援はするぜ」
「えー⋯⋯私三人一緒に出たい」
「僕もそうかな。折角だし思い出に残るなら皆一緒じゃなきゃ意味がないって」
「けど、現実兄貴と接触するなんて無理あるだろ。せめて連絡くればいいけどよ」
牙王決定戦の出場確約条件は銀次が牙王会の傘下に入る事以外に無い。三人が意気消沈して綾乃、葵と摩子も流石に妙案は思い浮かばない。
「数日間外泊になりますが、それでも良ければ会えるかもしれません」
花音がそう提案する。
「えぇ!?どうやって?」
綾乃の疑問に簡潔に答える
「主人に相談しましたらノリノリで返答が返って来まして。大会の出場を条件に、主人を楽しませてくれたら船賃は無料で良いそうです」
「数日間クルージングを楽しめるって事?良いじゃん」
心菜は楽観的に呟く。
「キャンプにでも行こうかって思案はあったし、まさしく渡りに船だけど、大会の出場って事は生死を賭けたバトルロワイヤルみたいなのに出るって事でしょう?私は命を賭けたくは無いわね。夏の冒険にしては危険過ぎだわ」
「まーそうだよな。俺も危険な目には遭いたくない。けど、三人がどうしたいかによる」
伊達に研鑽を積んでいない葵だからこそ言える言葉に摩子も呆気に取られる。
「殺し合いになんて、私は参加しないわよ。相当なメリットでもなきゃ」
「優勝賞金ですが、10億円となっています」
『・・・・・・』
摩子の目が一瞬眩む。
「それと、言葉足らずですみませんが皆さんは出場しなくても問題ありません。私が出れば良いみたいでして、エインフェリアの性能テストも兼ねてるそうです」
「エインフェリアって、あの時の?」
綾乃をホストクラブから救出した時に見せた花音の最終兵器。目に見えぬ機械で造られた微粒子が結合や分裂、変化、等の化学反応を見せて人狼を圧倒してみせた謎の技術の結晶体。時間制限が有り、使用後は暫く動けなくなる諸刃の剣。
懸念事項が消え去り、摩子の目が輝く。
「決まりね、行きましょう。私達は滞在中に晃君のお兄さんを探しつつ、船旅を全力で満喫するのよ!!」
「本当に!?やったぁ!!」
綾乃が喜び、三人も苦笑する。
「何にしろ、牙王会決定戦に出場するには行くしかないよ。銀次さんに会いに行こう」
「うんうん、晃が銀次さん見つけて説得すれば良いだけだし。私達は船で遊んでおくから晃が頑張ってね!」
「お前らな⋯⋯でも考えたら、拒否られるのもあり得るか。花音さん、その大会俺も出場出来るかな?最悪兄貴と殴り合いにならなきゃ場が収まらないかもしれねぇ。船で会えなきゃ大会選手として会いに行くことは出来るだろ。色々聞きたい事もあるしな」
銀次の行動に晃も納得のいく説明を聞きたいが、ひょっとすると受け入れられないかもしれない。人狼の闇に堕ちた可能性も無いとは言えない。
「分かりました。出場の件、主人に伝えておきます」
「ありがとよ。恩に着るぜ」
晃がお礼を伝えると、この日夏休みの豪華客船クルージング旅行が決定した。




