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For Whom the Bell Tolls 12

 宇宙が誕生して創世神は散り散りに、それぞれ異なる世界と銀河を作った。幾つともなく星々を作り、やがて地球を作ると様々な生物を作った。恐竜が地面を闊歩し、翼竜が空を支配し、水竜が海を制する。木々は生い茂り、動物達が世界を循環させていく。素晴らしい世界が誕生した。


創世神は興奮して、紛れもない最高傑作だと自負した。


なのに、満たされない自分が居る。


首を傾げる。


 世界の動物達はこんなに素晴らしい世界に居るのに、その事に気付きもしない。恐らく理解も出来ないのだろう。理解出来るのは自分と同じかそれに近い存在のみ。何と勿体ない事か。創世神は考えた末に、地球の重力を操作して、恐竜達を絶滅させた。氷河期突入によるものだと後世に騒がれたりもしたがとんでもない。なにせ2023年現在の重力では恐竜は自重が重すぎて歩く事も立つ事も出来ないのだから。それから、神は幾つかの自分の劣化コピーを作って世界に放った。それらは力を持ち過ぎて産まれた故に、大地創生の神々となった。そしてそれらの神話の時代を経て創生の神はより劣化させた殆ど力の持たぬ人間を作り世に放つ。何の力も持たないと思われたが彼等は微弱に力を持っていた。夢と希望 絶望と恐怖 欲望と信仰心が世界に蔓延し、意識の集合体による化け物、妖怪、そして神々を産んだ。力は小さくとも人間は神の模倣とはまさにこの事である。世に放たれた意識の集合体は非常に強く世界を歪めかねない程になった。世界の秩序を保つ為に世界を幾つか用意し、力あるものは天上へ連れて世界の輪廻の輪の仕事を与え、魂の管理を。従わぬ者達は邪神として滅ぼしたり封印し、そして人間の世に世界を滅ぼしかねない強力な存在が世に出ないように夢の世界を作り、意識の集合体を世に出回らせないように管理した。神々はこの頃には異世界より世界を管理し、邪神等にも人間を育てたり、力を授けたりして極力人間達で対処出来るように立ち回る。


世界は秩序を保ち稼働するようになり


創生の神は出来あがった世界に満足した。


この世界は素晴らしいだろう?


それを共感してくれるものが大勢居る


その何と幸福な事か。


劣化コピーを沢山作った事で身体に皸が入り力が維持出来なくなり暫く、この世界の魂の一つとなるがどうということもない。魂となる瞬間、彼、或いは彼女は何とも言えない高揚とした表情でこの世界の一部となった。やがてその存在は大賢者、或いは大魔導師、デミウルゴスと呼ばれてその力を大いに奮った。最初の降臨で磔にされて槍で貫かれた際に絶命したが、魂は地上に残った。神々の制約を重んじ、3日程悩んだ末に、魂の姿で12人の弟子に40日間をかけて回り、天上へと戻ったそうな。12人の弟子は復活されたと大々的に触れ回り、復活祭として盛大に祝う日として語り継いで現在のクリスマスへと続いている。


 上野綾乃は創生の神である可能性もなくはない。ウルズは自分が下界に降ろされる理由をそう分析する。過去を統べる力を持つ時の女神は自分の神命が大袈裟でなく世界の命運を持つものだと悟っていた。巨大な池とせせらぐ川が流れる地にある、美しい荘厳な神殿の前で、姉妹であるヴェルダンディとスクルドに別れを告げるとその様子を一人の青年が林檎を齧りながら面白そうに眺めていた。


「あれが、上野綾乃って奴に接触するウルズか。地上に紛れこむ良い機会だな」


神々の上役達が一喜一憂している面白い子供に会えるかもしれない。


(子供を洗脳して力を奪ってやれば、連中を皆殺しに出来るかもしれないな)


何よりーーー娯楽の薄いこの世界に湧いたネタに食い付かない理由もない。その身に流れる血が騒ぐのを男は確かに感じていた。





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