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予告編

最近はいつまでが夏で、いつからが秋なのかわからない。


だからだろうか。


夕暮れのアスファルトはまだ熱を帯びて、ほのかに暖かかった。


私は大通りの路側帯にうつ伏せに寝転んでいた。


そして、左脇腹からは赤い液体がジワジワと服に染み出しているのが容易に想像できた。


左脇腹が徐々に湿っていく。


路側帯のアスファルト上にうつ伏せで倒れ、脇腹から出血している女子高生を見たら、きっとこう思うだろう。


事故にあって倒れていると──



「風花ちゃん!!」



その声に絶望的な気分になる。


なんで、ここにいるの!?


──なぜ、こんな事になっているのか?


その答えを知るためには、私の超能力「予告編」と妙に勘の鋭い友達、そして素敵な占い師の話をしなければならない。


話は数時間前にさかのぼる──


…………



ジリリリリリリリッ


目覚ましの音でガバッと起き上がった。


まだ、暑さの残る9月17日の日曜日。部屋の中は湿度が高くやや不快に感じる程度には暑かった。


パジャマと肌着が汗でびっしょりと濡れている事に気がつく。


だが、汗をかいているのは暑いからじゃない。


その理由は明白だった。私の心臓がドクドクと激しく脈打っていたからだ。



「予告編だ……今回はいつもと違う」



心臓に悪い内容だったためか、ひとり言が口からこぼれ出てしまった。


「予告編」とは、私が持つ特殊な能力の名前。


その命名者は、もちろん、私だ。


「予告編」は、その日に私の身に起こる不幸な未来を予告する能力。


あえて"予知"ではなく"予告"と名付けた理由は、それが回避不可能だからだ。


テレビや映画の予告編は物語がすでに確定しているから一つの結末しか示さない。


逆に"予知"は、未確定の未来を示すと私は考えている。だから回避や運命の変更も可能だ。


私の信じる占いの真髄は、運命を変えるために存在する。もっとも、これは私の勝手な持論だけど。


最近、予告編を見る頻度が増している。


小学生の頃は年に一度、中学生の時は半年に一度、高校生になってからは月に一度……と、年を経るごとに頻度が上がっている。


でも、大きなトラブルを示唆する予告編は少なかった。


例えば、校舎の4階の窓から見下ろす夢。


体育の授業中に飛んできたサッカーボールが自分の頭に当たる、あるいは石につまずき転んでいる自分の姿など、小さな出来事が多かった。


それでも、少し覚悟をしておけば、特に問題はなかった。


……だが、今回の予告編は本当に映画のワンシーンのような生々しい内容で、冷や汗が出た。


一度、頭と身体にシャワーを浴びてスッキリしよう。難しいことは友達に相談すればいい。


シャワーを浴びながら予告編の細部を思い出す。


予告編は普通の夢と違ってとても鮮明。


色や温度、味、感触、……建物や標識、看板、五感で感じる全てが再現される。


そして、少し離れたところから客観的に自分を見ているのが特長だ。


シャワーから上がると、朝食ができていたのでリビングでご飯を食べることにした。


整理した内容を箇条書きでスマホに打ち込んだ。


「風花、ご飯食べながらスマホを弄らない!」


「ちょっとくらい、いいじゃん……」


今日の朝食はトーストにスクランブルエッグ、ベーコンにサラダとコンソメスープ。


幸いほとんどの料理が片手で食べられるので、"ながら食べ"がしやすいのだ。


ふと、左斜め前を見て気がついたが父の食器がない。


「母さん、父さんはご飯を食べないの?」


「今日、仕事でトラブルがあって出勤になっちゃったのよ」


「大変だね」


「父さん、そそっかしいから忘れ物とかしてないといいんだけど……」


「ふーん……」


さほど、父の仕事に関心がないので適当に話を流す。我ながら薄情だと思うが、今はそれどころではないのだ。


よし、大体スマホに打ち終わった。


これを友達にSNSで送信すると、すぐに返信が来た。


ーーーーーー


『まずそうな内容だね。今日はどこかに出かける予定はある?』


『今のところはないよ。無駄だろうけど、予定を全部キャンセルして籠城しようと思う』


『そうだね。一応、試しておいたほうがいいだろうね。でも、保険もかけておこうか。もう少し状況を詳しく聞かせてくれるかな?』


ーーーーーー


「いいよ」と返事をする前に、電話がかかってきた。





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