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新倉君が好きな私は、彼を罠にはめる

作者: ルナ

これは、楓視点です。新倉君視点もぜひ

 新倉君はかっこいい。最近ずっと思っていることだ。


 私は桜美林楓。自分で言うのもなんだけど、私はかなりの美少女だ。そして、かなり頭もいい。まあ、そのせいで小学生の頃は虐められてたけどね。あの頃は辛かったなー。学校では虐められて、家ではお母さんにそれを悟られないようにずっと笑ってたんだっけ?ありもしない学校の話とかして。


 その頃なんだよね。新倉君に会ったのは。別にいじめを解決してくれただとか、居場所をくれたとか、そんなヒーローみたいなことをしてくれたわけじゃないんだけど。ただ、私がドジを踏んで膝を擦りむいたときに、目の前に彼がいて、ハンカチを貸してくれただけなんだけど。彼はそんなこと覚えちゃいないだろうけど、周りが敵だらけだと思っていたあの頃の私に、味方がいることを教えてくれた大事な出来事だった。


 後日、ハンカチを返そうとしたけど学校中探しても見つからなかったんだよね。それから、これまでずっとそのハンカチはしまってある。


 そして、とうとう彼を見つけることができた。それは奇跡だ。ただただ、運がよく、彼と同じ高校を入学しただけの奇跡。ここでやっと彼が同学年だということも知った。ほんとにただの幸運だ。あの時ほどこの高校を選んでよかったと思う日は来ないだろう。


 そして、長年の感謝と一緒にハンカチを返そうと思った。あのハンカチが無かったら、あそこで彼と出会ってなければきっと、私は自殺くらいしていてもおかしくない。


 私は、社交的な方だ。誰でも気軽に話しかけられるし、誰とでも仲良くなれる。でも、いざ返そうと思っても体が上手く動かない、声が上手く出ない、頭が真っ白のなる。なんで?せっかく会えたのに、なんで話しかけられないの?ありがとうって言いたいのに。そう思えば思うほど私の体は動かない。


 これを私は知っている。私自身経験したわけじゃないが、友達が口々に言うのだ。「○○君に話かけられないよぉー」って。今までの私の行動はほとんどそれと合致する。つまり、私は新倉君に恋をしたのだ。私の初恋はいつの間にか新倉君に奪われてしまっていた。


 それを自覚した瞬間、体が熱くなるのを感じる。ベッドにダイブして転げまわりたい衝動に駆られる。でも、だめだ。ここは学校で、新倉君が教室にいる。みっともない姿は見せられない。もう、私は恋する乙女になっていた。


 しかし、これじゃあ、新倉君にハンカチを返すことも、感謝を伝えることもできない。どうしよう。そう迷っていた自宅で、私に天啓が舞い降りる。そうだ!新倉君から話しかけてもらおうと。話の主導権をわざと相手に譲るのだ。そうすることで、多少ぎこちないことをしても不自然に思われないだろう。


 そう思った瞬間行動は早かった。どうすれば新倉君に話しかけてもらえる?私はPDCAのPをひたすらに考える。学校でも家でもずっとそのことについて考えている。そして、テストが近々あることを知らされる。そうだ!これを利用しよう。


 もともと、話しかけてもらう方法は考えてあった。あとは、テストというピースをはめるだけ。でも、それが難しい。誰かに協力してもらわないと。・・・彼でいっか。頭いいと思うし。私へのアピールがうざいと思っていたところだし。


 早速彼に話しかけ、新倉君と罰ゲーム付きの勝負をしてもらうことにした。彼は、私を疑いもせずに、二つ返事で「いいぜ!」と了承した。そしてそのあとに、それが成功したら――。


 何か言っていた気もするが、私は新倉君と話せるかもしれないことに頭を支配されていたので聞こえない。聞きたくもない。勝負内容は平均にどれだけ近づけられるか。勉強会を開いていた私は、クラス皆のおおよその点数は予想できる。あとは、彼(駒)と私の点数を操作するだけ。この工程は簡単だった。


 駒から「勝てた!」知らせをもらった私は、すぐさま次の行動に移った。次は、仲間を増やすことだ。私と新倉君の二人だけだったら、彼が逃げちゃうかもしれないし、私も逃げちゃうかもしれない。だから、その逃げ道を塞ぐために、友達に頼った。


「ちょっとお願いがありまして・・・」

「え?なになに?新倉関連?」

「絶対そうじゃーん」

「楓が頼って来るの、新倉関連しかないし」

「じゃあ、じゃあ、やっと告白する気になったの・・・」

「それ以外ありえなくね?」

「べ、別に告白するわけじゃ・・・」

「じゃあ、何?」

「告白されるのを手伝ってほしいって言うか・・・」

「は?」

「だから!私が逃げないように見張っていてほしいの!」

「そうか・・・」

「おけおけ」


 なんかいらない恥をかいて気がするけど・・・まあ、いい。これでやっと準部が終わった!あとは、新倉君の誘いを待つだけ。ライン追加のメッセージ貰ったし。すぐに返信してもいいのかな・・・いいや!早く新倉君と話したい!

 その気持ちだけで私は半ば脊髄反射のように新倉君とラインした。私がすぐにラインを返すからか、やり取りが一分おきに変わっている。楽しい・・・!


 このラインのおかげで新倉君に呼び出させることに成功した。あとは、本番一発勝負だけ!朝待ち合わせだから早く寝て、可愛い顔で話したい。


 翌日の朝。呼び出し場所に来てみれば、もう、新倉君と五人の友達は来ていた。私は、新倉君の前へ赴き、彼が悲し始めるのを待つ。


「来てくれたんだね」


 ああ、やっぱり新倉君はかっこいい。私の恋愛フィルターに懸かってるかもしれないが・・・絶対かかっているが、新倉君の近くにいると心臓が破裂しそうで、頭が上手く回らない。


「うん!で、話って?」


 かろうじて返事を返せた。今の私は、外ずらは平静を保っているが内心は新倉君のことしか考えていないやばい奴だ。返事も脊髄反射みたいになにも考えずに発している。


「うん。実は・・・桜美林さんのことがす――」

「ちょっと待ってッ!」

「き――。え?」


 苗字を呼ばれて、その後に繰り出されるだろう、言葉を想像して、つい止めてしまった。あ、好きって言ってくれた。この嘘告白を選んだのはこれが理由だ。恋する乙女な私は、好きな人に「好き」って言ってもらいたいのだ。パニックになって考えが脱線しまくりだ。


 止めてしまった以上、私から離せなければいけない。なにを話そう・・・まずは、あの時ハンカチをくれてありがとう?いや、多分新倉君はそのことを覚えてない。じゃあ、じゃあ、何を話そう。・・・新倉君の視線がいたい。早く、早く何か・・・話さないと。


「ちょっと待って。私から先に言わせて」

「う、うん。いいけど・・・」


 私から出たのは先延ばしする言葉だ。この一瞬の時間で何を話すか決めないと。・・・ああ、何にしよう・・・。あ、新倉君の困り顔。可愛い。じゃない!ええっと。深呼吸して・・・。


「すぅーー。新倉君。好きです!私と付き合って!」


 あ、失敗した。感謝が先だった。いや、まず昔の説明か・・・。過ぎたことはしょうがない。この言葉をどうやって修正するか・・・。そう思った瞬間、少しだけ草むら――私の友達がいるところから音がした。・・・そういうことか!残り少ない脳のキャパで友人の思惑を理解した私。ハッピーエンド確定ですわ!ありがとー!


「それで、私の告白の返事を・・・」

「あ、ああ。そうだね。・・・いいよ。俺からも付き合ってください」

「やった!」


 してやられた顔の新倉君。やっぱり新倉君はどの顔をしていてもかっこいいし、可愛いしで最強かよ!私は感極まって新倉君に抱きついてしまった。あ、新倉君の匂い・・・。


 そのまま、クラスへ行った。その間ずっと新倉君に抱きついて。私の駒が何か言っていた気がするがもう用済みだ。・・・何か忘れているような・・・ハッ!ハンカチ返さなきゃ!・・・まあ、まだ時間はたっぷりある。これからは一緒にいる時間が増えるから、いつかタイミングのいい時に返そう。今は、新倉君を堪能したい。

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