7 秘密の訓練
波乱の一日を終えた俺は、寮に戻る。
「俺、リーンと付き合うことになったんだよな…」
未だに現実を見ることができない。あまりに衝撃すぎることだった。
今日一日、いろいろありすぎて疲れたので、シャワーを浴びすぐにベッドにダイブする。
そして、今後のことを考える。
リーンのこと。そして、今日の訓練で分かった加護の影響…。
「あ、加護で思い出した」
ふとアテナ様にもらった一冊の本の存在を思い出し、隠蔽を解除し、手に取る。作者はアテナ様、タイトルは「魔法論」だった。
それにしてもこの隠蔽とか言う魔法、どうやら隠蔽したものを好きな時に手元に呼び出せるらしい。これ荷物入れとかいらないのでは…?
全く原理がわからない魔法だ。
そんなことを考えつつ、本を開いてみると、最初に、魔法と加護についての関係性が書かれていた。
この世界の人間はこの世界の唯一神しか知らないので、かなり衝撃的な内容である。
「こんなのが書かれてる本を、人間に渡してよかったのか…?」
なんて言いながらも読み進めていく。
色々端折って言うと、使える魔法というのは、加護元の神の力と知識に依存するものらしい。
神の力というのは、支配する世界の数に依存するようだ。神という存在は、支配する世界からエネルギーを得るために世界を創りだし、管理するという。アテナ様も例外ではないらしい。
そして、そのエネルギーの量次第で実体や自我を持つようになると。
そうして成長したのが今の最高神という存在のようだ。
当然自我がなければ知識を得ようとすることはないので、神の力=知識となる。
これで、アテナ様が私たちと言っていたこと、この世界がなくなると困ると言っていたことも辻褄が合う。
そして、最高神の加護があると、最初の頃も詠唱さえすれば勝手に魔素を変換し望む効果を発生させることができるようだ。これは加護元の神が意思を持っていることがキーであり、加護元となる神の意志と知識によって勝手に魔素を変換してくれるらしい。これが加護の原理のようだ。
つまり、意思を持たないこの世界の神の加護だと、詠唱によって魔法のルーツを得てそこから自分で魔素を変換する必要があるということだ。
そして、そうして理解度を高めた魔法は簡単に無詠唱で使うことができるようになるということ。
つまり、一度使った魔法は無詠唱で使うことが可能になる。
「これ、とんでもないチート能力じゃないのか???」
そう。どう考えてもチートだ。この世界の普通とは大きくかけ離れている。
「これなら、”敵”と戦うこともできるかもしれないな」
そう考えながら、本を読み進める。
そうして、さらに衝撃的な文言をジークは目にする。
そこには、加護元の神の知識の範囲内ならオリジナルの魔法を使うこともできる。と
「おいおい、まじかよ……」
ここまでくると笑うしかない。
ジークが得ているのは最高神の加護である。これはつまり、ジークに不可能なことはほぼないと言っているようなものなのだ。
いつまでも困惑していても仕方ないので、また本を読み進める。
そこには、アテナ様が使っていたであろうあの幻想世界の文字が。
解説曰く、この魔法は一度使用すると再発動には魔素を消費する必要がないとのこと。
そして、自分だけの世界で、どれだけ強力な魔法を使っても破壊することはできない。そして、なんでも創造できるらしい。
「訓練にはうってつけってことか?これが最初に書いてあるって、一体誰に向けてこの本は書かれたんだ?」
そんなことを考えつつも、使ってみる。
「それじゃあ使ってみるか。…幻想世界」
すると、周りが一瞬にして真っ白な世界に包まれる。
「なるほどな…これはすげえ。学園の訓練場とかも再現できるのか?」
ふと思い、とりあえず想像してみる。
すると、真っ白な空間が一瞬にして見慣れた空間となる。
「まじかよ…」
驚くほど完璧に再現されていた。
「何をしても壊れないんだよな、ちょっと試してみるか…燃えろ!」
適当に思いついた魔法で訓練用の的を燃やしてみる。すると、火はついたものの全く傷はつかない。
「まじか…でもこれ、威力とかわかりずらいな」
そう考えながら魔法を解除する。
「とりあえず、これで場所の問題は解決したな。あとは……剣とかも見てみるか。」
魔法は想像力でとりあえずどうにかできそうなので、パラパラと軽く流し読みしながら剣のページまで飛ばす。
「これは…」
そこに書かれていたのは、アテナ流神剣術というものだった。
そこには、想像したことがないような剣術がずらりと書いてあった。
様々な剣術が書かれていたが、最も目を引いたのは全く隙のない3連技。
魔法によるものなのか、動く絵によってどのようなものなのか理解ができたが、とにかく美しいと思った。
「これ、できるようになりたいな」
純粋に剣士としてこの技を習得したくなった。その名は、瞬撃。
威力は違うものの神剣でなくても使えると書かれている。
神剣で思い出したが、まだアテナの威力を試していない。
「せっかくだし、試してみるか」
どうせ破壊出来ない空間である。せっかくなので、威力を試してみる。
「とりあえず、あの的に」
剣用の的を切ってみる。すると、どうだろうか、切れないはずの的がきれいに真っ二つになり落っこちた。
「この的、切れないんじゃないのか!?」
驚いて幻想世界について解説されていたページに戻ってみる。そこには注釈として、空間を傷つけられる魔法や剣などを除く。と書いてあったのだ。ジークは読んでいなかったらしい。
「つまり、この剣は空間も切れるのか……。空間を切るって、どういうことなんだ?」
なんて疑問を浮かべながらも的が切れた理由に納得するジークであった。
「それにしても、この剣、軽いな。なんか持ってて不思議な感覚がするな…」
ジークは神剣に不思議な感覚を感じていた。やはり神剣というだけあったとてもいい剣なんだと納得する。
そうして、彼は剣と魔法の訓練を始める。
段々と書くのにも慣れてきてきました。頑張ります