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小田からの贈り物

空の流れと、私の闇。

作者: 小田虹里
掲載日:2021/05/05

 この作品を、開いてくださりありがとうございます。

 最後まで、読んでいただけると嬉しいです。


 このご縁がまた、続きますように。

 誰が語った感情だろう。

 『夕日が綺麗だ』など、私の中には一切備え付けられていない言葉であり、感情だ。


 朝。

 東の空からゆっくりと南の空を目がけて昇り始めるのは、太陽。この天の川銀河における第三惑星『地球』をはじめ、太陽を中心として公転する。惑星として見るにはあまりにも小さく、軌道にも変異があるということで、数年前からは冥王星は除外されている。他の惑星も、永遠の命を持っている筈がない。母なる太陽でさえ、寿命があるのだ。

 地球の重力と太陽の重力を比べてみると、太陽は28倍もある。その惑星の大きさといえば、実に109倍だ。月と地球を比べてみれば、月は『衛星』だ。とても小さな存在だが、比較対象を太陽に向ければ、地球もちっぽけなものというところだ。

 大いなる太陽は、決まった様に空に現れ、決まった様に地平線より彼方へ沈む。その営みは、どれだけ過去へ遡っても、守られた約束と言えるのだろうか。しかし、それを裏切る未来は必ず来るだろう。


 ベッドの上。シーツはシワが寄せられクシャクシャだ。とても身体が重くのしかかり、目を開けることすら億劫。目覚まし時計はアナログで、チッチッチ……と、軽く時を刻む音が聞こえる。聞きなれたいつもの音だ。私にとっては、当たり前の音。変わらないものには、安堵しよう。不変ならば、そこに恐怖を覚えることもない。

 目覚まし時計から、けたたましいベルが鳴ることはない。何故ならば、音が鳴る配線を切っているからだ。うまく睡眠を取ることが出来ない私にとって、不用意に起こされる感覚はたまったものではない。

カーテンを開け、光を取り込もうとは思う。ハッキリ言おう。私は心を病んでいる。『鬱』などという言葉で表すと、一文字で事足りてしまうこの病だが、実際にはそのような軽々しく扱えるものでもなく、安直に症状を伝えることは難しい特徴がある。ひとり、ひとりに各々の痛みが伴うものだ。同じ病名であっても、感じ方や受け止め方。心に負うダメージの増減も、その病の重さも異なる。ひとえに『鬱』と記すのは、それが楽だからだろう。

 太陽の光を朝、浴びることで身体や精神的なサイクルが改善されるというのは、よく耳にする話だ。私も医者や、薬剤師をはじめ、友人……と呼べるのかは怪しいが、彼らから陽を浴びるべきだと勧められている。かったるくて、ベッドから下りるまでにも時間がかかる。

 朝が来ると、まずは頭の中で葛藤がはじまる。ずるずると布団を引きずり、掛布団を無造作にベッドの下へ落とした。めくり上げるよりも、床に落とした方が少しは楽に動けるというものだ。次は、足を床につけなくてはいけない。右足を滑らせ、続いて左足を滑らせ。床の上に器用に着地した。しかし、まだ力を込めて立ち上がることが出来ない。どうしてこんなにもしんどくて、身体が怠いのか。身体全身に、鉛をつけられ拘束でもされているのではないかという、嫌な感覚から抜け出せない。安定剤や、睡眠導入剤なども飲んでいるが、どうもすっきりしないのだ。心の病は脳の病とも言えよう。特効薬は、未だない。医者も診察を繰り返し、最良の手を探し出そうとしている。人間が人間を救うことは、難しいことのようだ。

 外へ出て、陽を浴びながらの散歩。それが、一番心身にとって良い薬になるのだろうと、自分自身でも感じるときはある。だが、身体がそれを拒絶する。カーテンを開け、窓越しに浴びる光だけでも、浴びないよりはずっとマシだという説もある。何もかもを投げ出したい気持ちでいっぱいだが、せめて1つくらい。医者の話にも耳を傾けようと試みているのだ。

 以前は、それすらも実行に移せずにいて、一日中電気も点けずに真っ暗な部屋の中。布団の中から出ることはなかった。トイレくらいなものだ。食事に対しての欲も失せ、とにかく横たわっていないと落ち着かない。横たわっていても落ち着かない。まさに最悪な人生を進んでいると、自らを呪ったものだ。左手首には、ギザギザとした白い筋が残っている。所どころ盛り上がっている。傷痕だ。

 なんとか重い身体を引きずりながら、私は南窓にたどり着いた。シャーっとレールを走らせ、カーテンを開ける。紺色の遮光カーテンだ。より一層、それが私と光を隔てていた。

 格子窓。左の方に視線を配ると、既に太陽はもっと南の方へ動いていた。グダグダしていただけだが、もう少しで丁度真南になる。陽を浴びやすい位置に、私はゆっくりと腰を下ろした。床は絨毯。足が冷たくなることもない。


 朝から昼までは、こうしてダラダラとしていても、穏やかな陽気に当てられ、若干だが心も落ち着いているように思える。日光浴が体内時計を取り戻させるというのは、信じてもいいかもしれない。


 問題は、昼下がり……夕方、そして夜だ。


 私のように、精神的に弱い人間にとって、暗闇は多くのことを考えさせる時間となる。陽が西へ傾き、徐々に姿を隠していくと、オレンジ色の光が世界を包む。その光に、明日の天気を占うもの。新しい一日を、待つという心意気。諸々あるようだが、私にはそれらを持つことが叶わない。陽の無い世界がはじまると、直近の嫌な出来事から、遥か遠い記憶……幼少期の失敗や、子どもながらに痛みとして受け取った経験を、永遠と考えるのだ。夕暮れは、暗雲続く思考の始まりを告げる。明日を約束するのではなく、私からすれば『絶望の光』と呼べよう。


 何度、この世界から離れ沈み、闇を誘うのだろう。

 これ以上、私の闇を誘発させないでくれ。


 そう、願ったところで、自然界の営みが変わるものか。

 だからこそ、私の絶望も終わらない。


 何も聞きたくない、何も考えたくない。

 何かをしたい、思考を止めたい。


 抱え込み過ぎている闇を、上手く吐き出す術もない。弱音を吐ける家族も友人も居ない。『親友』だと思っていた人間にすら、私は自分の気持ちや悩み、感情をぶち当てることが出来なかった。それを知ったのは、とても最近。メンタルクリニックにて『鬱』と診断されたそのときに、初めて気づく事となったのだ。

 確かに、人間関係を上手く築くことは、元より苦手な方だった。しかし、そのような中にも『親友』だと……私はそう思っていた人間は、多くは無いが居た。それなのに、いざ病名を告げられると、全てに於いて自信が無くなり、全てから目を背け、全てを信じられなくなってしまった。これは、私が弱かったせいなのか。それとも病の副作用か。


「太陽よ。昇るのであれば、消えないでくれ。昇らないのであれば、私に期待させないでおくれ」


 どれだけ願おうとも、私の祈りを天空は聞き入れない。自然界からすれば、私はとてもちっぽけで、チープな存在なのだろう。だが、位を持つほどの祈祷師が願ったところで、結果は変わるのだろうか。私はそのような堕ちた思考回路までも、習得してしまった。余計な感情、余計な感覚ばかりが、私を取り繕っていく。まさしく、朽ちた鎧。


 私とは、何だ。

 私とは、誰だ。


 太陽は、完全に沈没した。見る影もない。いいや、太陽が確かに地球の周りに存在している証拠ならば、私も誰もが知っている。東より昇り始めた『月』だ。月は、太陽の光を反射して光っている。それは小学校の理科でも習う知識。太陽、地球、月……それらは、切ってはいけない大切な関係性が結ばれている。

 もしかすると、私たち人間。そして、病も同じような法則性を見出せるのではないだろうか。私の中で確かに何かが弾けた。私は口には出さず、黙考する。


(病があるから、感情が大きくなって現れる。私の目から涙が零れ落ちるのは、病によって感覚が研ぎ澄まされているからか? 病は、私に新しい感覚を見せようとしてくれているのか?)


 果たしてそのような都合の良い解釈が、正解なのだろうか。あくまでも、私は病に侵されている。病が事態を好転させるなど、お花畑な考え方をして、後で痛い眼を見る者が居るとすれば……それは、私だ。

他に被害者が出ることを、私は好まない。痛むのが私だけであるなら、それでいい。偽善ではなく、この考えは真実だ。

 失敗したところで、害を被るのが私だけ……とするならば、多少の楽観的志向も許されるだろう。それくらい許容範囲がなければ、いよいよ私が壊れてしまう。


 いいじゃないか。

 人とは違う、生き方……感性。


 全てはやがて、淘汰される。

 私の負の感情もエネルギーも、いずれは淘汰されるのだ。


 そのときが来るまで、私はこの重苦しい身体と心を装備とし、時の流れに従おう。苦しく、辛い決断が、この先何度もやって来る。痛い思いも、今以上に向き合うことだろう。だが私は、すべての問いかけに、応えるつもりは既にない。私のキャパシティーは、とても少ないと自覚したからだ。この身の丈にあった生き方を、私はひっそりと続けよう。それ以外を望めば、より一層に自分の首を絞めてしまうだけとなる。

 ほんの少しでいい。逃げる余地とそこへ飛び込む勇気。誰かや何かが示した優しさとやわらかさを、噛みしめて。他者から見ると、手を抜いているかのように取られる程のいい加減さで、私は生きたい。

 背負い込み過ぎて、真っ黒に汚染されていた私の心がほんのりと、晴れる。真っ黒から、灰色くらいまでには、変化が見られたのではないかと、自分自身でも納得がいく。


 人間という、とても小さな身体の中で起きたビックバンを、星が気づく筈もない。

 だからこそ、私はちょっとばかりの優越感に浸り、口元に笑みを浮かべるのであった。


 はじめまして。もしくは、お久しぶりです。

 小田虹里です。


 最近、執筆スタイルとジャンル、雰囲気を変えていこうと思って、試行錯誤しております。この数日で、とりあえずは書くことをしようと思い、二作。詩をなろうにアップしてみました。読んでくださった方、評価してくださった方。ありがとうございました。

 なろうに登録したての頃は、よく詩や短編もアップしていたのですが、近年は一切それが出来ていなかったので、手詰まり……というところも、感じていました。この現状を打破したい。そこで、ジャンル変えという手を打とうかと思っております。


 今回は、ジャンルを純文学として、イメージしながら綴ってみました。雰囲気はダークなのですが、完全に絶望せず。読んで、もやっとしたものが残らないように、意識はしてみたつもりです。短くてもいいので、感想とか。メッセージにて、思うことを教えていただけると、今後の勉強になりますので、手広く待っていたいです。もちろん、そういったものは強要するものではないと思っているので、読んでいただけるだけで、すごく嬉しいです。


 どんなジャンルにシフトチェンジしていきたいのか。

 それは、この数日の作品から読み取っていただけると嬉しいのですが、一言でいうと『暗い』ですね。

 もっと、踏み込んだ闇について書きたい気持ちはあるのですが、いきなりそこまでハンドルをきると、結構ダメージ多いかなと思いまして。


 以前、小田の毒吐きエッセイをアップしていましたが(現在削除済)、それに近い……そして、それよりももう少し闇要素を増やしたものを、と。

 シフトチェンジの理由は、色々あるのですが。一番は、ハイファンタジーを1ヶ月前辺りに読んだのですが、小田はファンタジーじゃないな……と(笑)

 その気づきを、後押しするようなこともあり、一旦ファンタジーのことは忘れ、現実的分野を突き詰めていこうと思っております。応援していただけると嬉しいです。

 ですが、COMRADEシリーズは、小田にとっての処女作なので、このまま宙ぶらりんにしておきたくもないのです。これはこれで、書き進めていきますので、たまにでも構いません。読んでいただけたら嬉しいです。


 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

 また、別の作品でもお会いできましたら幸いです。


 2021.5.5


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― 新着の感想 ―
[良い点] 必要最低限の描写で心境や情景を読ませようとしている。 もしくは読ませまいとしている点が特に良いと思いました。 [気になる点] 個人的にはギリギリの描写の中に季節や気候を匂わす表現があったら…
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