合格!免許取り立てほやほや
暖かい風に・・・いや、こんなことを思っている暇はないな。今日俺はついに車の免許を取った。今まではバイクしか乗れなかったがこれで車に乗ることができる・・・とはいえ受験生の身。遊ぶ暇などない。高校3年生の春休みに取ったこの免許は当分使うことはないだろう。
少しがっかりしながら免許センターから家へ帰るべくヘルメットをし、バイクにまたがる。250ccという何とも魅力的なバイク。何が魅力的だっていうと改造してもそうそう車検で引っかからない。というか車検がない。2年乗り回しているが壊れたことなど・・・数えきれない・・・が、まあ便利だ。
俺はキッキングスタートでエンジンを点けてギアを3に合わせて発進した。正直1とか2とかに合わせてからあとあと帰るのがめんどくさかった。このバイクのエンジンは18000回転まで回る使用・・・まあ、20000回転まで回したことあるけど。普段は10000回転すら使わないので緊急時である。
免許センターを出て公道を制限時速ギリギリで駆け抜ける。このバイクにはターボが積んであるのでタコメーターの上りが美しくない。ちょっとでも回しすぎると急加速しだす・・・正直キツイ。
気持ちよくリアを少し滑らしながら走っているとバイクについてるモニターが「迎えに来てby天野」と表示した・・・うわぁ。面倒だな。二人乗りはできるけどウエイトバランスが変わるのはなぁ・・・。
天野というのは俺にとっての同居人に当たる人かな。人の扱いひどいからちょっとイラッとするけどまあそこはレディーファーストということにしておこう。
俺はバイクのナンバー変更ボタンを押して、アクセルを思いっきり回した。衛星から警察の居場所はすべて把握している。まあ、見つかったって1日おきにバイクの形変えてるからわかりはしないんだけど。
時速140km。やはり早いと風が気持ちいい。エンジンは高い音を出している。ただまだギア3なんだが・・・ギア4にするのが少し怖いなこりゃ。
そうこうしていると90度のコーナー。衛星からの映像から察するに特に人はいない。ノンブレーキ突っ込みで行けるだろう。
ぎりぎりまで体を倒し、リアを微妙に滑らしてコーナーを曲がる。立ち上がり時に少しタイヤから煙が出た。少し焦りすぎたらしい。遠心力がかかった状態でアクセルを踏もうとするとこうなってしまう。
ギアを4にし、アクセル全開で電車の横の道路を通る。時速は200㎞を超えていた。まあ、まだまだこいつの限界ではないが・・・耐久性敵には限界らしい。まあ、250ccエンジンでここまで出せば限界も来るだろう。
そろそろ天野のところへ到着だ。ブレーキを前回転しない程度に握り、止まった。ブレーキから煙が出てる・・・こりゃ一大事だ。赤く光って・・・まるで燃えているかのようだ。
俺がブレーキパッとのことで戸惑っていると「早かったね・・・待った?」と言いながら天野が近寄ってきた。
「あーーー・・・まあ、今来たところさ。取りあえずじゃあ帰ろう。」
天野に予備のヘルメットを渡して二人でバイクに乗って家に向かった。ここで俺は早く帰るかゆっくり帰るかで悩んでいた。
「天野、早く帰りたい?」
「それは・・・まあ、帰って休みたいし・・・あ!でも制限時速は守ってね。」
ああ・・・いわれてしまった。
仕方ないので制限時速を守ることにした。制限時速は60㎞。俺はカーブの時も一切スピードを落とすことなく曲がり切った。やはり立ち上がりで少し煙を出してしまう。こりゃ癖かな。
俺が退屈しながら運転してるとモニターに「近所のファミレスで話がある。by伊藤」と表示された。ああ・・・ファミレスか。まあ、天野しだいだな。
「天野、夕飯ファミレスでもいいか?」
「いいよ・・・ちょうど家事面倒だと思ってたところだし。伊藤君?」
「お察しがよろしいことで。」
俺はハンドルを右に切って思いっきりアクセルを回した。そして、高速Uターンを成功させファミレスに向かった。遠心力で天野が吹っ飛びそうになっていたがそこは頑張って耐えてもらった。
「一言くらいいいなさい!」
「いやだっていいよって言ったじゃん。」
「ファミレスの話題であってターンの話題じゃない!」
やはやご立腹な様子で・・・参った。
ファミレスに着くと伊藤のハイエースが止まっていた。やはりでけぇな。
「天野、先伊藤と合流しといて。俺はバイク止めてから行く。」
天野はうなずいてファミレスに入っていった。あれ?バイクの駐車代はどっちが出すんだろう・・・まあ、伊藤でいいか。そんなことを思いながら駐車した。
ファミレスに入ると伊藤が手招きをしている。天野はもうジュース飲んでる。注文すら終わらせちゃった感じか!?
「哀昏よ、取りあえず注文しな。話は飯を待ってる時だ。」
注文か・・・こういうファミレスの飯って悩むんだよなぁ。迷ったときはカレーだ。
カレーを注文し、天野と伊藤も注文を終わらせた。待っていてくれたのか。やはや優しい所もあるんだな。
「さて哀昏よ。ここからが本題だ。まずは免許取得おめでとう。」
「え!?哀昏君受かったの!?」
天野よ・・・失礼というものを・・・いや、まあどうでもいいか。
「そこでだ。君にプレゼントがある。」
伊藤は俺に車のカギを渡した。
「俺のお古だが使ってはくれないか?FRで高回転で高馬力な・・・軽自動車だ。それもワゴンでめっちゃでかいやつ。」
困った。まあ、馬力があるなら許せるかな。
「ちなみに時速400㎞は出るぞ。」
困る。
「ちなみに4WDに切り替えることだってできる。タイヤは合法スポーツタイヤだ。サスペンションだってレーシングさ。立ち上がり時の食いつきだって保証する。」
いやーーー・・・それでも・・・。
「今ならハイオク満タンのガソリンタンクオマケしちゃう。」
「乗った。」
キーを受け取り、急いでカレーを平らげ、天野にバイクのキーを渡して「試運転してくる。」と言ってファミレスを出て車に飛び乗った。
エンジンを点ける瞬間・・・すごく緊張する。キーを刺して・・・回して・・・。
ブォーンブルルルルル・・・
おお!点いた!感動だ。
クラッチを踏んでギアを1に合わせて・・・ん!?タコメーターが・・・15000まである。携帯でメールを確認してみるとやはり伊藤から来ていた。
「その車は安全に13000まで回せるがそれ以上はやめろ。俺が使い古した奴だからな。取りあえず美優には話をつけておいたからサーキットに行け。以上。」
俺はクラッチを優しく離して発進した。はやり軽だから細い。まあ、今まで見てきたのがハイエースだからというのもあるだろうが。ある程度前に来た瞬間「ガツン!」何かが引っかかった。
車から降りて確認してみると・・・駐車場の料金・・・ああ、伊藤よ・・・駐車代は俺持ちなのか・・・。
俺はしぶしぶ金を払ってサーキットに向かった。