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たまには魔王も旅をする  作者: きげん
3章 魔王と守護者の切なき愛情
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アダインで生きる者

 「おらぁ! いつまで持つんだぁろぉなぁ?」


 ターナは自分に防御壁を張るのではなく、ゴルド達盗賊を閉じ込めようにドーム状に防御壁を張って村人達に被害が及ぶのを防いでいた。

 勿論、範囲を広げればその分防御壁の精度も落ちるし、魔力や集中力の消費も激しくなる。

 それでも、村を守る為にはこの方法がベストではあった。


 「絶対に解いたりしませんっ!」


 盗賊達が防御壁を叩き壊さんと目一杯の力を込めて殴り続けるのを、必死に抑え込む。

 これ程の攻撃を受け続けたのは初めてであり、既に表情は歪み額からは汗が流れている。


 「もう辛そうだぜぇ? さっさと諦めちまえよ!」


 ゴルドの攻撃は他の盗賊の攻撃とは比較にならない程の威力で、ゴルドがオノを振る度にターナな苦しそうに唸る。


 「あれが盗賊……見るからに醜悪ね」


 レイチェルがターナの元へ到着する。

 ようやく盗賊と相対して、その醜さに嫌悪感を抱きつつターナへと視線をやる。


 「大丈夫? 手を貸しましょうか?」


 バレックには必要ないと言われていたが、ターナの辛そうな表情をみていると、とても大丈夫と思えるような状態には見えない。

 最悪の事態になる前に手を貸してあげて、終わりにしてあげた方が良いと判断する。


 「……大丈夫です。ここは……私が守らなければならないんです。あの人を……ブラッドを守るって決めたんです……だから、絶対に譲れないんです!」


 誰か他の人間の手を借りて村が守られるようなら、それはもう守護者(ガーディアン)としての誇りを取り戻す事は二度とないだろう。

 そして、ブラッドは二度と前を見て歩いてくれる事が無くなる。

 それをターナは求めていない。ターナは今、守護者(ガーディアン)の全てを守る為に戦っているのだ。


 「だはは! 何が守るだぁ? 復讐も出来ない腰抜けの一族がどうやって守るっていうんだよ? もうくたばりそうな顔してやがるくせによぉ!」


 ゴルドの言う通り、刻一刻とターナは疲弊している。

 もう息も乱れて、足も震え始めている。

 レイチェルから見ても、もう数分くらいしか持たないだろうと考えている。


 「そ、それでも、守るんです! ブラッドは必ず立ち上がってくれます! あなたなんかにこの村を好き勝手させません! 私はあなたなんかに殺されたりしません! 私はブラッドの為に私を守り抜きます!!! それが……それが私の誇り(あい)ですっ!!!!」


 「ターナさん……」


 最初会った時には感じなかった強さだった。

 それは魔力的な事ではない、心の強さである。

 ジェイルが殺された時のブラッドを見ているからこそ、ターナ自身が死ぬ訳にはいかないのである。

 それがブラッドを守る事へと繋がっている。ブラッドを救いたい。ブラッドは一人で守護者(ガーディアン)として戦っていたのだ。

 だから、ターナは自分が傍に居ると……自分はブラッドの横で支えていると、守られるだけじゃない事を証明したいと思っている。


 レイチェルはそのターナの気持ちを感じた。

 愛する者を求め、今愛する者の為に生きようとするレイチェル自身、その気持ちが強く伝わってきた。

 バレックが言っていた事はこの事だったんだろうと、ようやく気付いた。


 「確かに、これなら私は要らない」


 レイチェルはバレックが来るまで待つつもりだったが、ターナの想いの強さを知り、もう待つ事を止めた。

 ルイス達の元へと行く決心がついた。

 それがバレックの最初の頼みであった事だ。

 レイチェル自身もバレックやターナを信じる事にした。


 レイチェルは魔力を練り、レイチェルの周りに風が発生する。

 フワッとレイチェルは地面から足が離れて浮上していく。

 そのまま高く上がり、カコン湖まで猛スピードで飛んでいく。


 「どうやって飛びやがったんだ?! ちっ、早くしねぇと気付かれちまうじゃねぇか!? おらぁ!! さっさとコイツを解きやがれ!!」


 レイチェルがものすごいスピードでカコン湖へ飛んで行く姿を見て、焦りを感じ始めた。

 ゴルドの攻撃の速度が上がり、一撃の威力もそれに比例して増していく。

 それでも破る事の出来ない防御壁。


 「どうなってんだぁ!? 今にも倒れそうな顔してるくせに、なんで破れねぇんだよ!!」


 「はぁ、はぁ、はぁ……どんな事があっても、これを解く訳にはいかないんです!」


 「うっせぇー!!! だらぁぁぁぁ!!!!」


 ゴルドの渾身の一撃で、防御壁にひびが入ってしまう。

 もうターナの限界が近かった。

 いつ解けても可笑しくない状況でも、それでもターナは諦めなかった。


 「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 「これで終わりだぁぁ!」


 ひびの入った場所にゴルドがオノを振り下ろす瞬間、防御壁のひびが消えて修復される。


 「なにっ?!」


 ゴルドは驚きと苛立ちで表情を歪め、ターナ自身もまた驚いて周りを見ていた。

 周りには、村人達がターナの防御壁へと力を加えてくれていたのだ。


 「すまん……ターナ。お前とブラッドばかりに辛い想いをさせてるのに、俺達はいつも自分達の事ばっかりでよぉ……」


 「俺達だって、守護者(ガーディアン)なんだ! ブラッドやターナみたいに上手くは出来ないが、力貸すくらいなら出来るさ!」


 「みんな……ありがとう」


 限界だった。

 ターナ自身ももう一度村人達の力を受けて立て直し、防御壁へと集中する。


 「腰抜けどもが偉そうにしやがってぇ! 全員ぶっ殺してやるからなぁ!!!」


 ゴルドは吠えながら、両方のオノを乱れ打つ。

 村人達の力を借りたとはいえ、今まで修行すらしてこなかった守護者(ガーディアン)の力……そんなに持つはずはない。

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