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たまには魔王も旅をする  作者: きげん
3章 魔王と守護者の切なき愛情
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二年前の真実

 ルイス、イリアと一旦分かれて、レイチェルと共に負傷した男を運んで、アダインの村人に頼んで手当てをして貰う。

 村の一室で治療をして貰うが傷はかなり深く、男は今は気を失って眠っている。


 「では、後は任せたぞ」


 「はい。何とか一命は取り留めましたので、大丈夫です」


 さすがはノーウェンご用達の薬である。

 傷はすぐには治らないが、男の痛みは抑えられて穏やかな表情になっている。


 「レイチェル。()くぞ」


 「えぇ、早く行かないと終わってしまうわーー」


 「た、た、大変だ! と、盗賊が村を襲ってきたんだ!! 助けてくれ!」


 二人が立ち上がった瞬間、扉が勢い良く開いて村人が慌てて入ってきた。

 二人は顔を見合わせて、状況を把握出来ないでいる。


 「どういう事じゃ? 何故盗賊がここに来るんじゃ?」


 「そ、それが……」



 ーー一時間程前


 バルトラはシナイ山へと狩猟へと行っていた。

 隠れて獲物が来るのを待っていたバルトラは、聞き覚えのある声が聞こえて戦慄した。

 それは、二年前に聞いた盗賊の笑い声だった。


 「だはは! これで奴等は終わりだぜ!」


 「さすがはお頭だぜ! 勇者を使ってあの緑風(ジン)の遣いを始末しようなんて、普通は思い付かねぇや」


 「はんっ! てめぇらと一緒にすんじゃねぇ。このゴルド様をコケにしやがった緑風(ジン)の遣いだけは、何があっても許さねぇ。二年前はアダインで有名だった守護者(ガーディアン)を弟を殺して、奴等へ駆り立てようとしたが、とんだ腰抜け野郎だったからな。弟殺されてビビって引きこもりやがって……だが、今回は大丈夫だ! 何てったって勇者様だからな。奴等のアジトまで教えてやったんだ。すぐに成敗してくれるだろうぜ!」


 二年前、ジェイルを殺したのは、緑風(ジン)の遣いではなく、ゴルドと言う盗賊の仕業だった。

 バルトラは驚愕した。

 あの時、ジェイルだけを殺した理由はブラッドを緑風(ジン)の遣いにぶつける為で、そのジェイルを呼び出す撒き餌として自分が使われたのだ。

 ずっと待っていたんだ。

 ブラッドが不在になり、ジェイルが留守を守る時を……そして、自分達が狩りへと向かうのを……。


 「これは……大変だ」


 ゴルドの話だと、勇者達が何かの策で緑風(ジン)の遣いのアジトへと向かってしまっているはずだ。

 何とか止めなければならない。


 バルトラは後悔していた。

 ジェイルが殺されて、助けられた自分が生きている事が申し訳なかった。

 ブラッドに合わせる顔がなかった。

 それが自分達が(てい)よく使われただけだというのだから、余計にやりきれない気持ちになってしまった。

 もうあの時のような惨劇にさせない為に気付かれないようにアダインへと走った。


 ーーそして五分前。


 バルトラは、息も絶え絶えに村へと到着した。


 「どうしたんだぁ? そんなに慌ててよぉ」


 「た、た、た、大変なんだ……はぁ、はぁ」


 「大丈夫か? まぁ、落ち着けよ」


 「落ち着いてる場合じゃないんだ! 勇者様は?」


 「いや、見てないけど、もう宿に居ないみたいだから、どっか行ったんじゃねぇか?」


 「間に合わなかったかぁ……」


 バルトラはゴルドの計画を聞いたが、緑風(ジン)の遣いのアジトの場所が分からない。

 このままでは、勇者達が罪もない緑風(ジン)の遣いを倒してしまう事になる。


 「バルトラさん。どうされましたか?」


 そこへバルトラの様子がおかしい事に気付いたターナがやってきた。


 「それが……ターナ。落ち着いて聞いてくれ。二年前のジェイルが殺された一件なんだが、あれは罠だったんだ!」


 「!? それはどういう事なんです?!」


 「ゴルドって盗賊が昔に緑風(ジン)の遣いと何かあって恨んでるみたいで、ブラッドを駆り立てる為にジェイルを殺しやがったんだ!」


 「そんな……そんな事の為にジェイルが……」


 怒りと悲しみの籠った涙がターナの目から零れ落ちる。


 「それで今、勇者様を使って緑風(ジン)の遣いを倒そうとしてるんだ!」


 「なんですって?」


 「何とか勇者様に伝えたいんだが、もうここに居ないみたいでよぉ」


 「バレックさんとレイチェルさんが村に残ってます! お二人へ伝えましょう!」


 「良かったぁ! すぐ行こう!」


 「おっと、そいつぁ困るなぁ!」


 あの声が聞こえてきた。

 でかく酒焼けをしたようなガラガラの低い声が。

 振り向くと二十人程の盗賊達が村まで来ていた。


 「バルトラさん! ここは私が抑えます! 早くバレックさんの所へ!」


 「させるかよ!」


 ゴルドはバルトラ目掛けてダガーを投擲する。

 しかし、透明な壁が出現してダガーは弾かれて地面へと落ちる。


 「絶対にさせません!」 


 「へぇー、これが守護者(ガーディアン)の力ってヤツか?」


 ターナが防御壁を張っていた。

 昔ブラッドに教わり、一緒に修行をして磨かれた防御壁を。



 ーー「という訳なんです!」

 バルトラがバレック達へと全てを説明した。


 「レイチェルよ。お主、飛べると言っておったのぉ」


 「えぇ、多少はね」


 「空から言って、ルイス達へこの事を伝えよ」


 「だけどバレックは……?」


 「案ずるな。こっちは任せておけ」


 「無理。心配は心配だもの」


 「……仕方ないのぉ。では、ワシはブラッドを引っ張ってくるから、お主はターナの所へ()け! ブラッドを連れてくれば、お主は勇者の元へ行くのじゃ」


 「それなら、私が盗賊を……」


 「駄目じゃ」


 初めてバレックから強く否定されてビクッと驚き不安そうな顔になる。

 バレックはレイチェルへと近付いて頭を撫でる。


 「お主が戦えば簡単に終わるじゃろう。じゃが、それでは、守護者(ガーディアン)の誇りは永遠に戻らん。大丈夫じゃ信じよ。お主は見ておるだけで()い。どうしてもと言う時は力を貸してやれ。分かったな?」


 「……分かった。その……ごめんなさい」


 「なに、お主の優しさは分かっておる。今回はターナに譲ってやれ」


 「ターナに?」


 「さぁ、時間が無い。()くぞ」


 バレックの言葉の意味が理解出来ないまま、言われるままにレイチェルはターナの所へと向かった。

 そして、バレックはブラッドを引っ張ってくる為に向かう。

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