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たまには魔王も旅をする  作者: きげん
3章 魔王と守護者の切なき愛情
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互いの気持ち

 翌日、ルイス達は村長に暫くの間、ここに滞在するかも知れない事を伝える。

 詳しい事情を話せば、守護者(ガーディアン)の一族の問題でもあると思うので、伏せておく。


 盗賊を探すと言っても、まともな手掛かりはないし、周りの村や街はそんなに近くには無い訳だ。

 シナイ山の近くで目撃しているので、その辺をアジトにしている可能性もある。


 シナイ山は、ここアダインからでも見えており、狩猟にも行くくらいなので、そんなに遠くはない。

 今日はその周辺を探索する事にしよう。


 早速出発しようとした時にターナと出会う。


 「おはようございます。皆様もう出発されるのですか?」


 「え? あぁ、いや、まだ暫く居ようかな、と思ってます」


 「そうでしたか。何もない村ですが、ゆっくりしていってくださいね」


 ターナにも変な心配をさせないように黙っておく。

 別にターナもそこを勘繰る様子もない。


 「あの……私……あの後ブラッドと話したんです」


 「ど、どうでした?!」


 イリアが勢いよく皆を掻き分けて、ターナの近くまで行く。

 昨日、首を突っ込んでしまっただけにターナの事が心配だったのだろう。


 「逃げられちゃいました。まだまだ駄目ですね。私は」


 そう言うターナの表情は明るかった。

 諦めていない。

 覚悟が決まってしまったのだろう。

 一度守ると決めた以上、そう簡単には折れないのが守護者(ガーディアン)としての意思の強さだ。

 ターナならきっとブラッドを立ち直らせる事が出来る。

 ルイス達は安心して盗賊を捜索する事が出来る。


 「うむ、仕方のない奴じゃな! 今度、会ったら顔を殴ってやるが()い」


 「さ、さすがにそれはちょっと……」


 自分の意思を主張出来るようになったターナもそれはハードルが高かった。

 それくらいしないとブラッドは目が覚めないだろうか。


 「まぁ、お主のやり方を貫けば()い。ワシらは野暮用で出掛けてくるぞ!」


 「はい、いってらっしゃい」


 ターナは笑顔で見送ってくれた。



 ーールイス達はシナイ山を周辺を捜索するのだが、それに当たって全員で探すには広すぎて効率が悪いので、ルイスとイリア、バレックとレイチェルに分かれて捜索する事にした。


 「盗賊の拠点って、やっぱり洞窟なのかな?」


 ルイスイリアは、シナイ山の上の方を捜索していた。

 険しい岩場や、川等もありその辺りに洞窟や小屋等無いか確認している。


 「居なければ居ないで、アダインの村人達が襲われる可能性が低いって事だから、それで良いんじゃないか?」


 「えー……」


 イリアは良くないと言わんばかりの表情をする。

 どうしても闘いたいらしい。

 ルイスもロズネスで魔力の鍛練を積んだので、その気持ちは分からなくはないが、わざわざ敵と遭遇して争いを起こす必要はない。


 「なぁ、ちゃんと聞いた事なかったけど、魔王の事をどう思う?」


 「どうって言われても困るわね。別に悪い奴には思わないけど、何かまだ隠してる事もあるから判断しきれないけど、封印する必要は無い気もする」


 「……うん。そうだよな。なんでアイツあんなに人の為に動こうとするんだろうな。レイチェルの時もそうだけど、ニース君を助けた時も、マリーさんにだってわざわざ会いに行っただろ? あの魔王を封印しなきゃならないのかな?」


 間近で魔王と一緒に旅をしてる内に魔王の考えに触れる度に、魔王の封印に抵抗を覚えてきていた。


 「良いんじゃない? アタシは何があっても、ルイスの味方だから! アタシが居れば余裕でしょ?」


 イリアはにぃっとルイスの方を見て笑う。


 「だな。俺もイリアとならどんな苦境も越えられそうだ」


 ルイスはそれほど意識して言った訳ではなかったのだが、イリアはその言葉に頬を少し赤らめる。


 「それじゃあ、魔王と一緒に世界征服でもしちゃう?」


 照れ隠しのつもりだろうが、規模の大きすぎる冗談を平気な顔をして言う。

 ルイスもそれには苦笑いになる。


 「イリアならやりかねないな」


 「ちょっと! 失礼しちゃうわ!」


 「それだけイリアを頼りにしてるって事だよ。……俺はアイツの味方でいようと思う。アイツは誰かの為に動いてくれるけど、アイツの為に誰かが動いてやっても良いと思う」


 「うん! ルイスのそういう所、好きだよ」


 今度はルイスが顔を赤く染める。

 盗賊捜索をしながら、二人は昔の懐かしい気持ちを思い出した。


 ーーその頃、バレック、レイチェルペアは……。


 「それらしい所は無いわね。」


 二人はシナイ山の(ふもと)の方を探していた。


 「そう簡単には見つからんじゃろう。ゆっくりと探せば()い」


 バレックは、それほど真剣に探す様子はなく散歩でもしているようだった。


 「それで良いの? ちゃんと見付けてあげないと」


 割とレイチェルは情に流されやすいようで、昨日もターナの話に大泣きしており、盗賊退治に率先的であった。


 「なに、お主とこうして二人きりで話す機会もなかった事じゃし、()いではないか」


 そこでレイチェルは今の状況に気付いたらしく、一気に顔が真っ赤になりバレックから少し距離を取った。


 「ぬ? どうしたのじゃ?」


 「べ、別に何もないわ。気にしないで!」


 「ふむ……? まぁ()い。お主に聞きたかったのじゃが、先祖にお主のような力を持った者はおったのか?」


 バレックの質問に首を傾げる。


 「居ないと思うわ。少なくとも私の産まれた村には、そんな歴史はなかったもの」


 「そうか。では気のせいやも知れんな」


 「何が気のせいなの?」


 「いや、なに。ワシ自身も会った事がある訳ではないので、確かではないのじゃが、お主には何か懐かしさを感じてな」


 「そ、それって……あの、う、運命って……」


 バレックの言葉を受けて指先同士をツンツンしながら、モゴモゴと小声で何かを言っている。


 「なんじゃ?」


 「いえ! 何でもないわ!」


 レイチェルは慌てて顔を背けて、盗賊を探す素振りをするが内心はそれどころでは無くなっていた。


 「あの……バレックはなんで私を……その、助けてくれたの?」


 「前にも言ったが、ワシはお主に惚れたからのぉ! それに偽りはない」


 ちゃんと分かって言っているのか、いつものテンションとトーンでそういう台詞を吐くので、どれほど真剣なのかが分からない。


 「でも、私なんかそんな……大した事ないし、こんなだし……」


 「そう卑屈になるものではないぞ? お主の心は誰より澄んでおる」


 「そうかな……」


 レイチェルはさっきとは違って、嬉しそうに照れる。

 ずっと地獄の中で叫んでいた。

 誰かが助けてくれるのを待っていた。

 その声に気付いてくれて、手を差し伸べてくれたバレックが好きだと言ってくれる。

 今、どれほど幸せなのだろうか。


 「ワシは何があっても、お主を裏切らんから安心せぇ。じゃから、お主はお主の生きたいように生きよ。もう我慢も遠慮もするでない」


 「……うん! そうする」


 レイチェルは自分の生きたいように……それはバレックと一緒に生きたい、それだけで良い。

 バレックへと寄り添うように近付いて、バレックの背中を見つめる。

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